デスティニィ号にようこそ◇デスティニィ号にようこそ
「レイヴさん、掃除終わったよー」
「あれ? 今週はラティじゃなくてキーシの当番だろ?」
「だって…、ヨワミをにぎられちゃったから」
「あらま。それはそれは」
「――…だぁぁぁッ! あっち行けッ。しッしいぃィィッ!」
甲板に響いたジークの突拍子のない悲鳴。
見るとその足元でまーくんが、どうしたらそんなスピードが出るのですか、とばかりの速さでグルグルと転がっている。ジークはまだまだまーくんに慣れていないらしい。
見かねてまーくんを抱き上げるレイヴ。
「頭撫でてあげなよー。ほら、持っててやるから」
「ど…っ、どこが頭だよッ?」
それもそうである。
「…あ、意外と中は硬いんだな。まん丸の岩に分厚い苔が生えたようなモンか?」
「それは解剖しないとわからないねー」
「なんつーか…、高級絨毯って感じの触り心地だな。しっかりしてるけど、ふかふかしてる」
「あはは。まーくんってばゆらゆらして。ジークに撫で撫でされてご機嫌だねー」
「ん…? この口、どーなってんだ? 中が真っ暗じゃねーか」
「ミステリアスだよねー」
「てかコレ、マリモだろ? 真水に入れたりすんの? 今は乾いてるけど」
「ダメだよジーク。それはダメ。まーくん、溺れるから」
「………マジで?」
「だから、試しちゃダメだよ。キオウが激昂するから」
「――…あいつら、なーに勝手なことを…」
カイの傍であぐらに頬杖をつき、憮然と呟く。
舵に右手を軽く掛けたカイが少し笑う。
「賑やかでいいじゃないか」
「よくねーよ…! 俺のまーくんがッ」
飼い主としては、やはりそこが問題なのか。
「まーくんも遊び相手が増えて嬉しいんだろう」
「遊んでるんじゃねぇだろ。遊ばれてるだけだろ、アレ…」
「似たようなものだろうが」
苦笑するカイの声は聞こえているのかいないのか。
瞬時にチビキオウに変化したキオウ。何やら意味不明な言葉を喚き散らし、猛スピードで階段を駆け下りていく。
その行き先には、まーくんの口に指を突っ込んでいるジークと、ジークの挑戦をにやにやと生暖かく見守るレイヴがいる。
今日も実に平和な、デスティニィ号であった。