故郷を迎える◇処刑場にて
――…兄上が生きておられた…。
アグナルはそれだけで救われたと思った。
大丈夫だ。この国は必ず持ち直す。
私が死んでも、大丈夫…。
…まわりの騒ぎに、アグナルは目を開けた。
そして、後ろを振り返り――…、驚いた。
――自分の死刑執行人が、胸に矢を生やして倒れていたのだから。
「腕はなまっちゃいねーな。さっすが俺」
広場の中心に設けられた処刑台を一望できる建物。その屋根から矢を放ったジークが満足げに笑う。
「ジーク、できるだけ殺さないようにね」
レイヴは軽く釘をさすが、妙にテンションが高いジークは「はははっ」と笑い飛ばす。
「『できるだけ』だな。よしよし」
「あのー…“真空のジーク”さん、マジで頼みますよー?」
「まっ、安心しな。魔女とやら以外は死なせねぇ、って約束してやる」
「そう言ってるけどさぁ…。あの死刑官の人、死んでない?」
「んあ? 大丈夫大丈夫ー。急所は外したからな。矢尻の痺れ薬がちょいと効き過ぎちまっただけだろ」
「本当にぃ~? まぁそれならいいけ――…あ、ホントだ。動いた動いた。てか、速攻で逃げ出しちゃったよ。職務放棄だ」
レイヴがのほほんと見下ろす間に、ざわめきが一層増していく。
悪魔と契約した王の処刑を見ようと押し寄せた民衆達。それらがこちらに気づき、口々に何かを叫びながら指を差してきた。
ありゃ…、とレイヴは眉を跳ね上げる。
「気づかれちゃった。どーする?」
「さぁ、どーしよう」
「いくら相手がシロウトさんでも、俺はこんな人数を相手にして生き残れる自信ないよ。はやく決めて」
「少しはお前もそのトマトの脳みそを働かしやが――…。
お、あれか? キオウが言ってた、お色気ババア魔女とやらは」
「みたいだね」
アグナルの隣に立つ妖艶な女魔術師。黒の法衣、長い金髪。魔法の貴金属が妖しく煌めいている。
女は民衆を何やら煽り立てている。周囲の凄まじいざわめきに消されて聞こえなかったが、どうやらジーク達を「悪魔を助けようとしている鬼達だ!」とでも民衆に吹き込んでいるようだ。
誰が鬼だ、と青筋を立てるジーク。
「よし、まずはあの魔女をキオウの叔父サマからひき剥がすぜ」
「よしキターッ。サポートは任せてよんっ」




