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仕方なく部室に戻って、ソファに座る。

帰ってもいいとは思ったけど、鍵を預かったままだし、開けっ放しのまま帰るわけにも行かない。

ため息をついて、天井の写真を見上げた。


日の光にキラキラと輝く星が、本当に綺麗。

それを見ているだけでも、穏やかな気持ちになってくる。


そうだよね。

私の彼氏なわけじゃない。

なのに、心配かけて……


私が一方的な好意を持っていただけで。

草間くんにとっては、世話焼きなクラスメイトでしかないんだから。



――頼りないのは分かってるけど



思い出した草間くんの声に、頭を振る。

そのまま目を瞑った。

頼りなくなんかない。

あんな事、好きな人に言わせて私ってば本当に何様。


心配してくれるだけ、それだけでも特別で嬉しいってそう思わなきゃ……




「あれ、寝てる?」

しばらくして戻ってきた草間くんの声に、私は目を開けた。

「……起きてるよ」

寄りかかっていた背もたれから上体を戻して、草間くんを見る。

彼は鞄を二つ持っていて、一つを傍の机に置いた。


「具合悪いから早退するって、言ってきた。勝手に悪い」

「え? ううん、ありがとう。ていうか、草間くんも?」

鞄、二つあるし。

草間くんは自分の鞄を持ったまま、私の隣、さっき座っていた左端に腰を降ろした。


「送るからって」

「え、それはごめん。でも、もう私大丈夫だよ? 元気、元気」


あははー、と軽く笑う私の目の前に、見たくないものが差し出された。


それは真っ白い封筒で。


血の気が、引く。


「これ、だろ? 気にしてたの」


「あの……」


じっと、封筒を見つめる。


やっと、さっき落ち着かせたのに。

どうして、蒸し返すの?


「中、見えたんだよ……な?」


手元に戻した封筒を見ながら、草間くんが言う。

「……うん、見た」


好きですって……


私が頷くと、彼は、はぁぁっと大きくため息をついた。

「じゃあ、それで体調悪くしたのか?」

「そういうわけじゃ……」

既に顔色を無くしている私が言っても、まったく説得力がない。

草間くんは寂しそうに笑うと、封筒を握り締めた。


「そっか、そうか。ごめん、その……悪かった」

「謝られることじゃ、ないし」

「ん? まぁ、そりゃそうだけど……俺の所為だろ?」

「……」

草間くんの所為といえば、確かにそうだけど。

俯いたまま返事をしない私に、草間くんはその封筒を押し付ける。


「まぁ、せっかくだから貰って。中、ちゃんと見て」

「は?」


貰って?


「いいよ、もう分かってるから。でも、せっかくだからさ」


せっかくだから?



頭が真っ白になって、草間くんを見つめた。




せっかくだから、貰ったラブレターを見ろと?

草間くんは決まり悪そうに苦笑しながら、封筒を私の膝に置いた。



「いいだろ? 俺の世話を焼いてくれてたの、深山さんなんだから。最後だし、我侭聞いてくれよ」


最後?


「流石に俺でも、こうなった以上、この先深山さんの世話になろうとか思わない」


目の前が、歪む。

目じりに涙がたまったことに気付いて、反対側に顔を背けた。


「そっかー。じゃあ、最後にお世話焼いておこうかな」



明るい声を出して、指先で封筒の封を切る。

私の立場って、一体何?

そう思ってしまう自分がいるけど、それでも。

きちんと見た方が、諦めつくし。


中には、便箋が一枚。



折りたたまれたそれを、震えそうになる指先でゆっくりと開いた。




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