-97- ショートケーキ上の苺・経済観測調査
過去の様々な短編集に何度か登場した経済観測調査のお話の一つです。^^
山尾はいつものようにスーパー買い物に出た。いつもの要領で品物をトレイにいれていたときのことである。何げなく進んでいると、山尾の目の前に美味しそうなショートケーキが現れた。過去、何度か買っていた山尾だったが、ここ最近はお見限りだった。
『よしっ! 買っておくか…』
誕生日も近かったこともあり、山尾はなにげなくトレイに入れた。そうこうして、レジを終えて帰宅した山尾は、買った品を冷蔵庫へ収納し始めた。と、そのときである。
『おやっ? 随分小さいな…』
ショートケーキ上に乗せられた苺のスライスが極端に薄くなっていることに山尾は気づかされた。以前は半分ほどの厚みのスライスされた苺が乗っていた記憶が、残像として山尾の脳裏に残っていたのである。今、目にしたスライスされた苺は、慎ましやかに存在を感じさせるほどに薄い苺だったのである。
『経済は相変わらずコスト・プッシュ・インフレなんだな…』
山尾は冷蔵庫へショートケーキを収納しながら、つまらなく考えた。山尾の理論に従えば、こうなる。
[原材料費の高騰→企業が消費者サイドに立てば値上げは極力、避けなければならない→と、どうするか?→質は変えられないから商品の数または量を減らす他はない]
ということで、山尾はスライスされた苺の薄さの変化を経済観測調査の対象としたのである。
確かに、それは言えますね。^^ 理想としては、コスト・プッシュ・インフレが無くなることですが…。^^
完




