-94- 薄曇り
薄曇りという天候は、なんとも中途半端でその一日の予定を確定できない不安要素があって人々を困らせる。運動会の朝なんか、昼頃、降ったらママが作った美味しいお弁当が食べれなくなるかも…などと、児童の皆さんは楽しいようで不安になりますよね。理想は、カラッと晴れ渡る天候なんですが…。^^
とある町役場の商工観光課である。早朝から主監の平目と主幹の涸井が浮かぬ顔で窓ガラスに映る空を見上げていた。
「薄曇りだな…」
「はい、薄曇りです…」
「弱ったな…」
「はい、弱りました…」
何が弱ったのか? といえば、この日は課を挙げてのイベントが企画されていたのである。数日に渡る準備は滞りなく完成していたが、問題は外で実施される関係上、天気具合だった。崩れれば、せっかく準備万端、整えたイベントがオジャンになる危険性を孕んでいたのである。
「天気予報は、どうだって?」
「はあ、それが何とも曖昧な予報でして…」
「何といってたんだ?」
「はあ、それが…」
「じれったいな。はっきり言いなさいっ!」
「曇り、ところにより小雨・・なんです」
「曇り、ところにより小雨か。確かに曖昧だな…」
「どうします?」
「どうします? って、ここまでやって、やらん訳にはいかんだろ。今は降ってないんだから…」
「ですよね…」
かくして、イベントは実施される運びとなった。ところが、である。二人の心配を他所に、その日はまったく降らず、事もなく過ぎ去ったのである。
「ははは…取り越し苦労だったな、涸井君…」
「はい、よかったですね…」
イベントのあとの片づけを済ませ、二人は笑顔で手を取り合った。
降らずに薄曇りで済んで、とにかくよかったですねっ! それにしても、薄曇りは困りものです。理想は、晴れるなら晴れるっ! 降るなら降るっ! と、はっきりしてもらいたいものです。^^
完




