-88- 励む
理想は励まなくても相手に勝つことだが、励まないと勝てないのであれば、やはり励む他はない。練習、鍛錬、稽古etc.と呼ばれる日々の努力を指します。^^
とある春の国会議事堂である。本会議が行われている。隣り合って座る二人の国会議員がヒソヒソと語り合っている。
「どうなんですかね?」
「なにが、です?」
「次の選挙ですよ。勝てるんですかね?」
「ああ、その話ですか。相当、励む必要がありそうですな…」
「励まないと、どうなります?」
「恐らくは…飽くまでも恐らくは、ですが、大きく議席を減らすことになるでしょう」
「それは偉いことですな…」
「そうです、偉いことです…」
「励まないと…」
「ええ、そうすりゃいいんですが、皆さん、励む気持が今一…」
「ない、ですか…」
「残念ながら、そうなんですよ…」
「励まないとっ!」
「今からでは無理でしょう、おそらく…。私達だけでも励むことにしましょう」
「そうしますか…」
二人は互いの手を取り合い、固く誓い合った。
時は流れ、選挙が終わった後の国会議事堂である。
「理想どおりとは、いきませんでした…」
「そうですな…」
励んだのか、辛うじて当選を果たした二人の議員は、しめやかに無言で握手した。
こうならないよう、皆さん、励んで下さい。当選されようと落選されようと、当局は一切、関知しませんから、そのつもりで…。^^
完




