-71- 柵(しがらみ)
世の中を生きていく上で、柵が人生の流れを阻害する。理想は水のように軽く通り抜けられることですが、硬い物質である私達には、どぉぉ~することも出来ませんから困りますよね。^^
とある都心の区役所である。朝から窓口課で、担当職員と住民の間でア~だのコゥ~だのと、一悶着が起きている。
「どうして、一歩出た途端、都外なのに区民税を支払う必要があるんだね?」
「…そう申されましても、地積図ではお住いの集合住宅が都内になっておりますので…」
「私もね、不審に思って調べたんだが、うちの住宅の中で市と都が分かれてるそうじゃないかっ!」
「はあ、それは確かに…」
「同じ住人がだよ、アンタは都民で私は市民なんてことがあるのかね?」
「いえ、そのようなことは…。集合住宅内の方は、すべて都民です」
「だって、うちの住宅の中でさぁ~、都と市が分かれてんでしょうが…。どう~考えたって、怪しいよ。そう思わんかね?」
「はあ、それはそうなんですが…」
担当職員は困り果て、後部に座る上司の顔を振り返ってチラ見した。上司はデスクから静かに立つと担当職員をホローした。
「ウ~~ン! そりゃまあ、そう言われりゃそうだけどね…」
しばらくして住民はかろうじて納得したのか、窓口から渋々、去っていった。
このような出来事が、世の中でよく起こる小さな柵です。理想は柵がない世の中が理想なんですけどねぇ~。残念ながら、そうはなっていないようです。^^
完




