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-7- バーチャル世界

 理想どおりにいかないのが、私達が生きる現実の世界である。だから、という訳でもないのだろうが、(ちまた)蔓延(はびこ)るバーチャル世界[仮想空間で現実には存在しない物や生物]が、社会を席巻しているのです。^^

 石尾明がバーチャル世界にどっぷりと浸かり過ぎたのも、元は、といえば、好きになった女性に近づけない石尾の劣等感によるものだった。バーチャル世界なら、自分がイケメンに変身して美人と付き合える…という石尾が理想とする進行が可能となる訳だ。

 そんなある日のことである。石尾はその日もゲームにどっぷりと()まり込んでいた。二時間ばかり続けているうちに小腹が空いてきた石尾は、カップ麺でも食べようか…と、キッチンへ向かった。そのときである。

『あらっ、お食事なら作ってあるわよっ!』

 どこからともなく、若い美人の声がした。石尾は空耳か…と(いぶか)しく(あた)りを見回したが人の気配はなかった。そりゃそうだろ…と思いながら石尾は、ふと、テーブルに視線を走らせた。すると、テーブル上には美味(うま)そうな料理が盛り付けられた皿が幾品か湯気を上げて置かれているではないか。トーストもいい焼き加減で小皿に乗っている。(かたわら)にはナイフ、フォーク、スプーンも添えられていた。石尾は一瞬、嘘だろっ! と、自分の(まなこ)を疑った。だが、いい匂いも漂っている眼に入る料理皿は、バーチャル世界のものとは思えなかった。石尾はチェアーに座り、まあ、いいか…と食べ始めた。料理は実に美味だった。バーチャル世界にどっぷりと浸かり込んだ石尾には、どういう訳か、誰が作ったんだ…という疑問は湧かなかった。

「アキラァ~~!! ご飯よぉ~~!!」

 石尾が満腹になった心地よい気分を味わっていたとき、祁魂(けたたま)しい声が階下から聞こえてきた。

『もう食えねぇ~よっ!』

 と思った瞬間、石尾は目覚めた。バーチャル世界のキッチンは夢だったのである。現実に引き戻された石尾は、理想に縁遠い自分に気づかされた。

 まあ、石尾さん、理想ではなくてもバーチャル世界の夢を見られただけで吉としましょう!^^


                   完

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