-68- 地位
社会では、あらゆることに地位が人の価値を決定する。いくら愚鈍でも、名門に生まれれば自ずと、いい家系の子孫だ…などと評価される訳だ。理想としては、その人の能力次第の世の中になることですが、そうならないから何とも歯痒い気分になります。^^
とある県庁に勤める牛尾は、ここ数年、持病の腰痛に悩まされていた。
「牛尾さん、部長がお呼びです…」
中年のキャリアウーマン、鳥鋤が、小声で牛尾のデスクに近づいて告げた。
「ああ、有難う…」
牛尾は時折り痛む腰を静かに椅子から上げ、やんわりと立った。幸いにも今朝は痛みが走らず、牛尾は腰を軽く左右に振ると部長室へと向かった。
「ああ牛尾君か…。君ね、総務課長に昇格だ…」
人事課の課長補佐である牛尾としては有り難い地位向上の内示だった。
「はあ、有難う費ございます…」
「なんだ、ちっとも嬉しそうじゃない顔だが…」
「いえ、そんなことは…」
課長補佐から課長は栄転なのだか、異動から二年ばかりの間にようやく慣れ親しんだ課を離れるのは、牛尾としては内心、辛かったのである。
「まあ、いろいろあるだろうが、今まで通り頑張ってくれたまえ…」
「はあ、有難うございます…」
そう小さく返すと、牛尾は部長室をあとにした。
官庁の地位の向上は非常に有り難いものですが、理想はとしては、そう頻繁に行わない方が人事考課としてはプラスになるようです。^^
完




