-67- ようやく…
寒波とはいえ、時が経てば、やがては終息する。ようやく…と、ぼんやり思うようになると、春ちゃんがルンルン気分でやってくる訳です。^^ 理想は、強烈な大寒波とまではいかず、軽く冬さんに去って頂く・・というパターンなんですがねぇ~。^^
とある市役所に勤める課長補佐の竹鉾は、今朝も早くから出勤の車を急がせでいた。いつもの通勤時間帯は車列が出来るほど混むから、急ぐ日は馴れたもので十分ばかり早く自宅を出るのが常だった。
その日も車列で混んでいたが、いつもはしばらくすれば動き出す車列が一向に動かない。その日は定例監査があり、監査資料を監査委員に配布しなければならなかったから、いつもより十分ほど早く自宅を出ていた。ところが、竹鉾が予期せぬ渋滞が生じたのである。竹鉾は焦ったが、こればかりはどうしようもない。腕を見れば、十分ほど早く家を出たのが帳消しとなり、逆に五分以上、いつもより遅れていた。
『弱ったな…』
竹鉾は、徐に車のボックスに収納した水晶の大数珠を取り出し、合掌しながら両眼を閉じ、なにやら呪文を唱え始めた。
「どぉたらぁ~~こぉたらぁ~~~」
そして、しばらく唱えると、数珠を軽く右や左に振り、印を結んだ。
「ムゥン!! ヤァ~~!!!」
竹鉾が大声で叫んだ途端、あら不思議、今まで渋滞していた車列がスムーズに動き出したのである。
かくして、ようやく…庁舎に着いた竹鉾は、監査委員が到着する五分ばかり前に入庁して事なきを得たのだった。
おまじないが効いたかどうか? は別として、竹鉾さん、ようやく…間に合ってよかった、よかった!^^
完




