-59- なんとかなる
理想は、なんとかしなくてもなんとかなることだが、この世は何とかならないことが多いから困ります。^^
田辺は省内の内部試験に合格し、訓練生の一員として研修所勤務に明け暮れていた。訓練とはいえ、身分は研修部勤務という事務職の肩書である。
同じ研修所仲間の西嶋が田辺と話している。
「どうも、民間に移行するらしいぞ…」
「省が消えるって話か…」
「そうだ。まあ、事業庁から公社を経てからだがな…」
「俺達、この先が大変になるな…」
「ああ、組合対応もきついしな…」
「まあ、なんとかなるさ」
「そうだな、なんとかなる…」
「理想はこのまま省のままがいいんだが…」
「財調へ繰り入れられるから、国債発行の要もない…」
「そうだ。民に出来ないことは民にしない方がいいんだが…」
何十年か時が移ろい、小は民営化された。ただ、国は毎年の国債発行により、多額の国債発行残額を抱える借金大国に下落し、世界第二位を誇った経済大国は、なんとかならず見る影もなくなったのである。
過去のある省庁のお話ですが、過ぎたことは仕方ありませんから、この先を、なんとかして欲しいものです。^^
完




