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-55- トントン拍子

 物事がトントン拍子に運べば大そう有難い話だが、そう都合よく理想どおりに運ばないのが物事としたものです。^^

 とある大手企業に勤める黒部の内心は深い谷間に落ち込んでいた。思うこと思うことが思い通りに運ばないのである。担当した業務の(すべ)てが全てと言っていいほど裏目に出た。その日も、こんなことがあった。

「いや、先だってお話を頂いたときは私も大丈夫だと思ってたんですがね…。社に戻って上司に話しましたら、その契約はすでに部下が締結してると…」

 契約先の担当社員のいい訳を聞きながら、黒部は、『またか…』と、今回もトントン拍子に契約が運ばず、裏目に出たことを悟った。

「ダメでしたか…。今度はいける! と思ってたんですが…」

「今度はいける、とは…?」

「いえ、何でもありません。また、よろしくお願い致します…」

 黒部は肩を少し落としながら、心なしか弱い声で軽く頭を下げた。

「いや、こちらこそ…。次回、お話を頂いた折りは間違いがないか確認してお請けしますから。では…」

「どうも…」

 契約先の担当社員と別れた後、黒部はトントン拍子に契約が運ぶのはいつの日だろう…と、天を仰いだ。

 トントン拍子に運ぶのが理想ですが、フツゥ~は運んだり運ばなかったりするのが世の中です。黒部さん、(くじ)けず気強く頑張りましょう!^^


                   完

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