-5- 寒い
寒いというのは、何も身体が冷えて寒いという意味だけではない。景気が悪いとか懐具合が寒いなどという場合も意味するからだ。では、暑ければいいのか? ということになるが、猛暑の夏で苦労した方々も多くおられよう。暑けりゃいいというものでもない。景気も同じで、バブル景気のように懐具合が潤っているときはいいが、泡のように消え去ったあと、その反動で底冷えするというのも困る訳です。ほどほどに暖かい春や秋の頃の温度が、身体も景気も快適なんですね。^^
馬川は底冷えする寒さの中を歩いていた。慌ただしくなった歳末の買い物を済ませるためである。アレは買ったがナニがまだかせぎのがくだったがだった…などとメモ書きを見て、買い忘れがないかをチェックしながらである。いつもは昼前だと空腹に苛まれるのだが、慌ただしく正月ものを買い揃えていると、上手くしたもので案外と腹が減らなかった。
『干し柿が店頭になかったな…。今年は家で作った干し柿がカラスか野良猫か知らないが、すっかり食われてしまった。動物界も人と同じで寒いんだなぁ~。まあ。五、六個はかろうじて残ったから神様や仏様には辛抱してもらうか…』
などと、馬川は買えなかった干し柿のことをアレコレと考えながら歩いていた。退職してからは年金暮らしの馬川にとって懐具合が決して温かいと感じたことはなかった。ここ数年は特にそうで、物価高の直撃を受け、貯えを取り崩してかろうじて寒さに耐えていたのである。
『まあ、仕方がないか…。この程度の寒さなら喜ばにゃ~いかんのかなぁ~。ウクライナやパレスチナ辺りは極寒だからなぁ~』
命の危険がない私達の寒さは、まだ暖かい方なのかも知れませんね。理想はもう少し暖かい方がいいんですけどねぇ~。^^
完