-44- 体重
痩せたくても痩せられない人、太りたくても太れない人と、世の中には様々な人がいるが、本人が思う理想の体重は人によって違うだろう。女性の方の方が気にされる傾向が高いようですが、余り深く考えられない方がいいと思います。^^
篠川はとある大学の医科学研究所の所長である。専攻は生理系・形態生理学の生体構造医学だった。教授の彼は本人が念ずるテレパシーによって理想とする体重をコントロールし続けられるか? という一見、狂気じみた研究に明け暮れていた。
「先生っ! 喜んで下さいっ! ぼ、僕はついに理想の体重に近づきつつありますっ!」
助教の長岡が興奮気味に噛みながら叫んだ。
「おお、そうかっ! ついに私の理論が証明された訳だなっ!!」
「よかったですねっ! 先生っ!!」
准教授で副所長の顎崎が胡麻摺り気味にヨイショした。篠川は、孰れ学会で発表し、その勢いでノーベル医学賞をっ!…と、厚かましくも考えていた。ところが、である。その喜びも束の間だった。
次の朝の研究所である。ショボい顔で長岡が研究所のドアを開け、入ってきた。
「どうしたんだ、長岡君?」
浮かぬ顔つきの長岡を見て、顎崎が朴訥にポツンと訊ねた。
「ダメでした…」
「何がダメなんだい?」
奥の椅子に座る篠川が窺うように長岡に視線を向けた。
「済みません、先生…。僕の早とちりでした。体重を読み違えてました。今朝、もう一度、測ったら、理想より500gも少なかったんです、ぅぅぅ…」
長岡が咽び泣きそうな声を出した。
「まあまあ、落ちつきなさい…」
長岡はノーベル賞も夢のまた夢か…と一瞬思ったが、気を取り直して長岡を宥めた。それは自分自身を宥めるひと言でもあった。
体重は自分の理想どおりにはなりませんから、維持と管理が難しいですね。ダイエットに励んでおられる方々は、余り気になさらない方がいいようですよ。ご参考までに…。^^
完




