-40- 便利
何ごとも便利になるに越したことはない。しかし、便利に成り過ぎれば成り過ぎるほど、人は怠惰に陥り易くなる・・という傾向は困りものです。^^
とある市街にある、とある店の自動車展示場である。客が新車を見ようと来店している。接客する店員が客に対応している。
「新発売のコレなんか、いいと思いますよっ!」
「…そうかい? なんか恰好よくないんだけど…」
「お客様、恰好はどうであれ、性能が世界特許を取っておりますので…」
「ふ~ん、そうなの? どんな特許なんだいっ?」
「AIを全車体に網羅しておりますので、車に語りかけて下さるだけで宜しいんでございますよ、ほほほ…」
客は、ほほほ、は余計だろ…とは思ったが、そうとも言えず、続けて訊ねた。
「というと、例えば?」
「そうでございますね。例えば、お客様が手ごろな温泉で美味い料理を食べながら寛ぎたいな…と思われたとします」
「ああ、思ってみようじゃないか。すると?」
「すると、車がその言葉を感知して『畏まりました!』と言う卯が早いか、適当な温泉地へひた走るのでございます」
「勝手に走り出しちゃ危ないじゃないかっ! 私はまだハンドルも握ってないんだよっ!」
「ええ、それでよろしゅうございます。車はお客様がバスに乗ったときの運転手と思って頂いて結構でございます」
「ほう! そうなの? そりゃ便利だっ!」
「はいっ! そりゃもう便利で御座います。運転する道すがら、いろいろとお訊ねしますからそれにお応え願えればそれで結構なんでございます。車がお客様のご要望どおりコトを運びますから…」
「そりゃ益々、便利だ…。何もしなくていい訳だね」
「はい、左様でございます。一人の執事を雇ったとお考え下さいまし…」
「燃料は?」
「燃料は必要ございません。エコカーは古い時代の産物でございます。この車にはエクト・プラズマという新発明のエネルギー使用によるエンジンを搭載致しておりますから…」
「それは最近、ニュースで聞いたが…」
「嘘のような本当の話でございますっ!」
「ははは…それだけ便利になりゃ、ずぅ~っと、車で暮らせるよねぇ~」
「そうでございますね、ほほほ…」
ほほほ、はいらない…と、客はふたたび思ったが、無言で哂ってスルーした。
便利になるのは理想ですが、これだけ便利な時代になるのも如何なものか? とは思えます。^^
完




