-39- ランク
理想のランクがある。高からず低からず、そう身の負担にもならず、居易い相応の地位に就けるということです。^^
二月とはいえ、まだ肌寒いとある市役所のとある課の朝である。
「おはようございますっ!」
「ああ、おはよう。君はいつも朝が早いねっ!」
関心感心っ! とでも言うかのように、課長の魚目は係長の海老川に返した。
「いやぁ~、早朝のジョギングの続きでして…」
「というと、まだ朝は食っとらんのかい?」
「はあ、まあ…」
「そりゃ、よくないな。まだ時間は十分ある。これから前のコンビニでパンと牛乳でも買って食べて来なさい…」
そういうと、魚目は財布から千円札を一枚出して海老川に手渡した。
「いや、これは…」
「いいから、いいから…」
いつも仕事で手助けする利口な海老川に恩義を感じていた魚目だったこともあって奢ったのである。
「そうですか? では、遠慮なく…」
海老川は軽く一礼すると課内から出ていった。出勤時間にはまだ小一時間は優にあった。魚目の理想は部長ポストだったから、そのランクまで昇任するまでに、まずは次長のランクが見え隠れしていた。そのためには海老川の手助けがさらに必要だった・・ということもある。
春三月、人事異動の内示が発令された。残念ながら、この年の異動は小規模で、魚目にお呼びはかからなかった。千円札の撒いた餌は徒労と帰したのである。
「まあ、いいか…」
魚目はさらに先の人事異動を目指し、撒いた餌を忘れることにした。
理想とするランクに近づくためには、慌てず、一歩一歩努力するたゆまぬ姿勢が必要なんですね。^^
完




