-33- 時間
理想は時間がいくらでもあることだが、そういう訳にもいかない。時計がいくつあっても時間があるということではありません。^^
とある町役場である。総務課の課長である竹川は多忙の諸事に疲れ果てていた。さて、どうしものか? と思い倦ねた挙げく、余り急がないことにした。すると、嘘のように物事が捗るようになったのである。竹川は理想のゆとり感に満足した。束の間、時計をいくつも買えば時間が出来るのでは…と思ったりもしたが、その考えが馬鹿で阿呆な考えだと気づいたからである。^^
「竹川さん、最近、バタバタされなくなりましたね…」
「ああ、焦っても時間が出来る訳じゃないからね、ははは…」
所属課の課長補佐、梅吉に訊ねられた竹川は、思っていたことをそのまま口にした。
「そうでしたか…」
それ以上は訊ねず、梅吉は自分の仕事に戻った。焦らなくなってからというもの、竹川の仕事は順調に処理されるようになっていった。竹川は『ひと皮むけたな…』と自らを褒め称えた。^^
まあ、自分を褒め称えるほどのことでもないとは思いますが、焦らないことで理想に少し近づけるのは事実かも知れませんね。^^
完




