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-23- のんびり

 どうせ世知辛い世の中を生き続けるのなら、のんびり生きられるのが理想と言えば理想である。しかし、現実は世知辛い上に慌ただしく厳しいのです。^^

 町役場に勤務する倉橋はのんびり生きたい…と本音で思っていた。課長になる以前、いや、係長になる以前はこんなじゃなかった…と思えるほど、今は諸事に明け暮れる日々が続いていたのである。社会的な地位につけたのはよかったが、プライベートを含め、自分の時間はまったくといっていいほど消え去っていた。これでは、なんのために課長になったのか? ということになる。係長になる以前は課長になってのんびりした気分で部下を目下に見ながら仕事をする…という目論見だったのである。それが今は、部長からお小言を頂戴し、のんびり息つく(ひま)もなく仕事に追われているのだった。

「課長、居残りですか?」

「ああ、ちょっとな…」

「そうですか。いっしょにビアガーデンでもと思ってたんですが…」

「あ、ああそうだったか…」

「残念だなぁ~。それじゃお先にっ! おい、行くぞっ!」

 係長の平坂(ひらさか)は快活にそう言い切ると、後輩職員を数人引き連れ、帰っていった。

『俺だって、冷えた生ビールでのんびりと焼鳥が食いたいよぉ~』

 口惜しそうな顔で倉橋は課員達の後ろ姿を垣間見た。

 倉橋課長さん、まあそうテンションを落とさず、家庭でのんびり一杯やって下さい。^^


                   完

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