-15- ウイルス
一時期に比べれば巷のコロナ・ウイルスは沈静化の様相を見せ始めてはいるが、それでも未だに消滅はいない。理想は消え去ることだが、抑えるワクチンは多種が存在するものの完璧に病を治す治療薬や治療法は開発されていない。鳥インフルエンザにしたってそうで、何万羽も屠殺処分するしかないのかっ! と思える。ニワトリさんの気持を代弁すれば、さんざん卵を産ませておいて屠殺かよっ! と怒れます。これだけ文明が進んでいるのだから理想は屠殺せずに何とか出来そうに思えるのですが…。人だってガス室で屠殺は嫌でしょ! 医学従事者よ、努力が足りないっ!^^
蛸山正雄は国立感染症研究所の組織を前身とし、新しく設立された国立微生物感染症化学研究所で日夜、ウイルスの研究に明け暮れるウイルス第一部の先端医療ウイルス科科長を兼ねた所長である。そしてその助手、海老尾は蛸山の招請で大学の研究室から抜擢された元助手の研究員だった。
「ぅぅぅ…美尾君っ! 私もついにノーベル賞か…」
「し、所長っ~~!!」
二人はシッカと手を握り、涙に暮れた。
「当然と言えば当然ですよっ! 本当は去年、受賞されてもよかったんですけどねぇ~~」
「まあ、いいじゃないか、ははは…」
一年前は口には出さず口惜しがっていた蛸山の姿を見ているだけに、海老尾は素の顔で大きく呵った。
※ 私小説、[SFユーモア医学小説 ウイルス]から、お二方に特別出演して戴きました。蛸山所長の受賞は、飽くまでも理想です。^^
完