-1- 大晦日(おおみそか)
黒豆は今年も侘しく大晦日を迎えようとしていた。思うのは、今年も神仏にお願いして黒々しく懸命に頑張ったけれど報われなかったな…という諦めの心境だった。除夜の鐘が♪グォ~~~ン♪と低い響きで鳴り始めた頃、黒豆はカップ麺の蕎麦を啜りながら、深々と降り始めた庭の雪景色を眺めていた。昨日はよく晴れていたが…と思いながら、注連飾りを飾れてよかった…と、ホッ! とした安堵の息を吐きながら、蕎麦のだし汁を喉へ流し込んだ。誰に怒られることもないのに、何故安堵するのかも分からず…。^^
「なんだ。もうこんな時間か…」
ウツラウツラしながら微睡んでいた黒豆は、ふと我に返ると、少し冷えが和らいだ気がした。外気は冷えに冷えて身震いする寒さにだが、中は暖かく極楽だった。しかし、今日は気分が折れて掃除も出来なかった…と悔やみながら、年食べ終えた越し蕎麦のカップをゴミ箱へ捨てに立ち上がった。黒豆の理想は苦労もなく働き、健康を維持しつついい暮らしが出来る…というものだった。理想と現実のギャップを感じながら、いつの間にか眠気に誘われた黒豆は医者から投薬された薬を飲んで眠りについた。
黒豆さん、ほぼ健康に過ごせた結果、大晦日のカップ蕎麦が啜れたんですから、理想は豪華料理なんでしょうが、それなりによかったんじゃないでしょうか?^^
完