第94話 特別じゃないことが特別!
◆ルナの視点
あれからアーチとレアリーが豹変して私達に襲いかかるようなことはなかった。聖女様にもステータスを確認して頂いたが問題ないとのこと、二人を操っていた物が何なのかは分からなかったが、その力から二人は解放された。本当に良かった。それにしても一体あれは何だったのだろうか?ただ光を当てているようにしか見えなかったが、なんにしても私達はあの男に救われた。これは礼を述べねばならない。
私は男のもとに歩み寄る。
◆タクトの視点
はぁ〜……良かった〜今回は上手くいった。前回のジェーさんみたいに人格に大きな影響が出たらどうしようかと思った。
聖女様がステータス確認で闇属性の力で操られていると判断してくれたから迷わずライトを使用出来た。ライトには闇属性の魔法を消滅、つまり無効化する力がある。だからなんとかなると思ったんだ。
ただ照射の長さや照らす強さの具合はホント良く分からない。
「キャ~タクトくんカワイイ!」
「さっきのすごく気持ち良かったわ。お姉さんと後で楽しいことしな〜い!」
ま〜ほんのちょっぴり影響があったかもしれない。
俺の両隣居る美人騎士が俺を取り合うと言う。よく分からない状況が起きている。この二人とは全く話をした覚えもないから、間違いなくライトの影響と断言出来る。
美人に迫られるのは悪い気はしない。寧ろもっと来いやーと喜びたい気分なのだが、前からただならぬオーラを纏い、ジトーっと俺を見る美人さんことルナさん、急に背中から冷や汗が流れる。
「アーチ、レアリー……あなた達仕事に戻りなさい」
おぉぉ……ズンッと重い威圧を感じる。おかしいぞ!今声をかけられているのは横の2人、なのに何故か威圧は俺に向いてな〜い。どう言うこと?
「は〜い分かりました団長」
「また後で遊びましょう」
二人の騎士は俺から離れて行く。
そして取り残されたのは俺のみ。
今も変わらず重い空気が漂う。
ルナさんがこちらに来て一言。
「お前にアイリスはやらん!このスケベ野郎が!」
えーー!?オレ何もしてないのに〜。
ルナはフンッと顔を横に向け行ってしまった。
何でこうなるのよ!ガクッ。
「あらあら、モテるのね」
聖女様が笑顔でこちらに歩いて来る。
「聖女様にはそう見えましたか?ボクには罵られたようにしか感じませんでしたが」
「それはあなたがまだまだ若いから、そう感じただけですよ」
えーー中身はいい大人なんですけど、逆にショックだわ!
「少しあちらでお話をしませんか」
聖女様にお誘いを受ける。勿論断ることはしない。
俺は聖女様に連れられて、少し離れた木陰に腰をおろし話をする。
「あの〜これどうぞ」
「あら…これは…なにかしら?」
聖女様は困惑されておられる。ま〜当然だと思う。
俺が渡したのはペットボトルの冷たいお茶、蓋は緩めてあるのでお年寄りにも優し〜いオレ!
「……冷たい!」
「ごめんなさい、これは冷たい飲み物です。ここって結構暑いから良いかな〜と思って出したんですけど……」
「あ…ありがとう。本当に暑かったから助かるわ。でもこんなに冷たい飲み物どこから」
「あ〜気にしないで下さい。ボクのスキルなんで、あ、あとこれもどうぞ、おまんじゅうです」
俺は皿におまんじゅう乗せて皿を置いた。
「これも初めて見たわ。お菓子かしら……頂くわね。うん…モグモグ……あら、甘くて美味しい!それにこのお茶も冷たくて美味しいわ〜」
流石は元の世界の商品、聖女様もご満悦である。
「あらあら、ごめんなさいね。あまりにも美味しかったから、つい夢中になって食べてしまったわ。それじゃ、お話をしましょ」
うん、たくさん食べましたね聖女様。
皿に乗せたおまんじゅうを全て平らげた。
半分俺のだったんだけどね。アハハ。
「まずは自己紹介ね。私はアンティア・メリダよ。女神イリス様に聖女の名を拝命されて、今こうして聖女を務めているわ。あなたについてはアイリスちゃんから色々と聞いてはいるけど、イリス様とのことを知りたいの、あなたはどうやって使徒になったの?……」
あ〜何を聞かれるのかと思ったら、そんなことか俺もまんじゅう食いたいもうちょい出そっ〜と。
俺は再びまんじゅうを発注し、食べながらイリスとの今までのやり取りを話した。あとまんじゅうの追加を要望されたので再発注!でも聖女様……食べ過ぎでわ?
「アハハハハハ、アハハハハハ……アハハ…………」
やっちまったか?
聖女様が壊れたみたいに笑ってる。
「アハ…アハ…アハ…ハァ〜ハァ〜……ごめんなさいね!こんなに笑ったのは四十年ぶりよ!この後こんなに笑えることはないわね。アハハハ」
…………聖女様、全然謝る気ないですよね!そんなに笑われると恥ず!
「本当にごめんなさい、危なく笑い死ぬところだったわ。女神様とお友達……それは思いもしなかったわ。タクトくん…あなた面白いわ!」
「面白いからって、そんなに笑わなくっても〜メッチャ恥ずいっス!」
「今のはそう言う意味の面白いじゃないわよ!あなたに興味が湧いたと言う意味ですよ!あなたはもしかしたら私達使徒の中で特別な存在なのかもしれません」
「そうてすか?……聖女様達と違ってボクには特別な力はくれなかった気がするんですけど」
「それが特別なのです。あなたは女神様から役目を仰せつかっていない。にも関わらずあなたは使徒、特別扱いしないことが特別、そしてその答えがきっと友達なのでしょ」
「はぁ?…分かるような。分からないような。難しいですね」
「あまり難しく考えなくて良いと思いますよ!」
聖女様はニコリと嬉しそうに笑った。
「聖女様!出発の準備が整いました!こちらに来て下さい!あと君も一緒来るんだろ!来るならさっさと来い」
ルナさんが声をかけてくれたのだが、相変わらず俺にはきつい、俺としてはもうちょい仲良くしておきたいので、なんとか距離を縮めれないだろうか、アイリスに後で協力してもらうかな……
こうして俺は森を出るため、聖女様一向と共に行くことになった。