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第92話 ルナの決断


 なんとか聖女様を守りきり、ルナさん達の話をさりげな〜く聞いていると状況が見えてきた。


 話によるとルナさんの部下であるアーチさんとレアリーさんが突然仲間を斬った。それと同時に聖女様とアイリス、そしてタリアさんが乗っていた馬車に他の馬車が襲い始めた。この時点でルナさんを含めたみんなは混乱、乱戦状態になってしまった。あとで分かったことだが、アーチさんとレアリーさん以外にも暴走していた者がいたようで、そいつらが聖女様が乗った馬車を襲った。ルナさんはアーチさんとレアリーさんを食い止め、その間に暴走した騎士から聖女様を守るために残りの騎士が戦い、そこにさらに黒尽くめの者と魔物の襲撃を受けたもよう。明らかに計画的に聖女様を狙っている。


「残った騎士はたったのこれだけか……しかも死の森に入ってしまった。予定では迂回して躱すつもりだったが」

 

 ルナさんは今後について考えている。

 さっきの件で聖女様、アイリス、タリアさんその他ルナさんとルナさんの部下4人に減ってしまった。それなのに混乱の中、魔物がウジャウジャいる死の森に入ったことで判断を誤れば命に関わる。ルナさんは暫く動けなさそうだな。


 大変だよな〜リーダーとかやると責任とかあって気苦労するんだよ。俺も昔チームリーダーやらされた時は後輩からは文句言われるし上司からは成果出せだなの納期に間に合わせろだの。文句ばっかりの板挟みに合うんだよ。あれは本当に辛かった……


「タクト!どうしたの?変な顔してるよ」

 アイリスに指摘されてしまった。ついついルナさんを見て昔の自分を思い出してしまった。変な顔をしてたかな?


「大丈夫だよ!ちょっと考えごとしてて、アイリスも大丈夫だった?怖かっただろ」


「うん!大丈夫だよ!お姉ちゃんやタリアがいたもん。それに聖女様が女神様が見守ってくれているから、きっと助けが来るって…そしたらタクトが来たなの!本当だったなの〜!」


「おう!それは良かった!」

 ま〜偶然なんだけど、……もしかしてイリスに導かれたのか?


 う〜ん、う〜んと悩んでいる。


「あらあら、どうしたのかしら勇者にはそんな顔は似合わないわよ」

 おっと、聖女様が来られた。さっきは咄嗟のことで、緊張しないで喋れたけど、考えてみれば聖女と言えば教会内では最も発言力のある方、一般の人がおいそれと話せる人ではない。緊張する。


「どうも……すいません、それと聖女様、からかわないで下さい。ボクは勇者ではありませんよ」


「あら?そうなの……賢者か大魔導師かしら?確かに剣を持ってないものね。アイリスちゃんがそう言っていたから勘違いしてしまったわ」


 ん?……賢者、大魔導師?

 そんな大それた者になった覚えはないぞ!


「あの〜聖女様、なにかとても勘違いされておられる様ですが、ボクは賢者でも大魔導師でもありませんよ」


「またまたそんなご冗談を」

 あら奥さん面白い、みたいな反応されたけど、違うんだってなんで信じてくれないの〜


「ひと目見てすぐに分かりましたよ。それにイリス様からは事前に聞いていましたから、変なヤツを使徒にしたからこき使ってあげてと」


 え〜……俺はげんなりとする。

 イリスのヤツなんてことを言うんだよ!俺は変なヤツじゃないぞ!それに……くそ〜俺をこき使うつもりだな〜


「うふふ、どうも女神様には何も言われていないみたいね。それにしても変わっているわ!あなたは加護を授かっているにも関わらず勇者でも賢者でも大魔導師でもないのね。私の知る限りでは長い歴史の中でもなかったと思うけど」


 そうか!なんで俺が使徒なのか分かるのかと思ったけど、教会の人はステータスを確認出来るんだっけ、でも大司教様でも特別な道具がないと出来なかったはず、聖女様ともなるとそれもいらないってことかよ。


「そう警戒しないで、何もしないわよ。あなたと少し話がしたかったの、アイリスちゃんに色々と聞いていて興味が出たのよ!また話をしましょう」


 聖女様は俺から離れていき、あ〜そうかどうやらルナさんが考え終わった様だ。みんなを集めている。


「聖女様、この後の事ですが、すでにかなり森の奥へ入ってしまったようです。ですので戻るよりこのまま突き進むことを許可して頂けないでしょか?」


「え〜構いませんよ。防衛の任務に関しては私からは口を出すつもりはありません。ですからあなたが思うように進めて下さい」


「は!ありがとうございます。それと……彼女達の今後の……処遇ですが……このまま置いて行こうと思います!現状悪魔に取り憑かれているのか、それとも操られているのか分かりませんが聖女様に危害を与える恐れがあります。それもお許し下さい」

 ルナさんは悲痛な顔をして進言しているな。任務とは言え自分の部下を見捨てることになる。辛い決断だな。


「それは……許しません!」

 それを即座に聖女様は否定した。


「ルナ、ダメでしょ!まずは私を頼りなさい。なんとかなるかもしれないでしょ!」


「ダ、ダメです!聖女様、申し訳ありません。少々説明不足でした。彼女達には食料を置いて一定時間経ったら拘束が解ける魔法をかけます。それに周りには結界も張りますのでご心配なさらないで下さい」


「大丈夫よ!ルナは私こと。心配をしてくれているのね。でもね聖女である私がなんの為にいるのか、それはこう言う時のためではなくて……気にしないでいずれは訪れることよ。それが少し早まるかもしれないだけ、それはそれ、それよりも私はお役目を果たしたいわ」


 聖女様は慈愛に満ちた笑顔をルナさんに向けた。


「そんな……聖女様………クッ!」

 

 聖女様が助けてくれるなら良かったと思うけど何故かルナさんは辛そうにしていた。


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