第9話 お屋敷の仕事
「父さんそろそろ僕も仕事に戻ろうと思うんだけど
良いかな?」
「ん?なんだそんなに急いで戻らなくて良いぞ。タクトはあくまでも父さんを手伝ってくれているだけで、正式に雇われてる訳じゃないんだ」
「うん、そんなんだけど僕も何か役に立ちたいんだ」
「うんうん、タクトは本当に良い子に育った。前も
そう言って手伝ってくれたのがきっかけだったもんな、良し分かった。今日は手伝って貰うよ。だけど父さんとしてはそれも嬉しいがタクトが自由にやりたい事をやってくれるのも嬉しいからな!」
「うん、分かった!考えておくよ父さん」
俺は父さんと仕事場のバロン男爵の屋敷に向かう。しかし本当にこの家族はええ人達やわ〜昔の俺ならもうちょっとゴロゴロしていな〜とか言って仕方なく仕事に出るのに、父さんと母さんの事を思うと自然と手伝いたい衝動が出て来る。不思議だ!
家の扉を開け外に出るとパトリアお姉さんが立っていた。
「おはようございます。パトリアお姉ちゃん」
「うん、おはようタクトくん、少し遅くなっちゃたけどお礼に来たの、一昨日は助けてくれて本当にありがとう。もしもタクトくんが居なかったらきっと私はオーガに殺されていたと思う」
頭を綺麗に下げ感謝を述べる。
「いえそんな、気にしないで下さい。僕は出来る事を
やっただけですから、それにもう少し早く行ければ他の人も助けられたかもしれません。むしろ申し訳ありません」
パトリアは少し目を開き驚きながら、
「ううん、そんな事ないよ!タクトくんは私を助けて
くれた。それだけで十分、他の人達の事までタクトくんが重荷に感じなくて良いからね」
パトリアさんは笑顔を向けてくれた。でもあとから
聞いた話だとパトリアさんだけじゃなく他に二人の連れが居た。そのニ人は残念ながらオーガの手によって
殺されてしまった。それにその中にはパトリアさんの
恋人のダインさんも居た。俺も知っている人でカッコ良くってとても良い人だった。だからパトリアさんの
悲しみは尋常ではないだろう。それなのに俺の心配を
してくれるとは強い人だ。
パトリアさんにギュッと抱き締められお礼に
クッキーを貰う。それを食べながら屋敷に向かう。
「タクトはこれからモテるぞ〜あと年上の女性は
良いもんだからな」
父さんは突然理由のわからない事を言い出す。
「それは母さんが年上だから?」
「あぁ、そうだ!ま〜まだタクトには年上の魅力は
分からないかも知れないがな」
いや〜父さんこそ分かってないよ!母さんにあるの
はどっちかと言うと年下の……いや俺が知らないだけだな。うん!
「父さん、パトリアお姉さん大丈夫かな〜」
「あぁ、そうだな持ち直してくれると良いんだが…」
「ん?父さん…」
父さんは物思いにふけている。その横顔を見て父さんは俺とは違う事を考えているように感じた。
「屋敷にとうちゃ〜く!」
いや〜昨日も来たけど今日は仕事で来たんだ気合を入れていこう。
「タクト来るのが遅いわよ!」
何故か屋敷に着いた途端、腰に手を当て胸を張った
ノルンが立っていた。
「おはよう、ノルン今日は早起きしたんだね」
「なによそれ!ちょっとバカにしてなーい」
怒るノルン、でも朝が弱くいつも起こしてもなかなか起きないのがノルンなのだ。だからなんで起きているのかが疑問だ。
「私がタクトくんの疑問に答えるわ」
「スカーレット様!?」
俺は突然の登場に驚く、なんで奥様まで待機してるんだよ。
「なんでお母様までいるんですか!?」
ノルンまで驚いている。知らなかったようだ。
「ノルンはねタクトくんあれを見て興奮して寝れなかったのよ!可愛いでしょ!それにね……」
「キャ~お母様何を言ってるんですの〜」
「もしもタクトくんのあれがダメになったら子供が出来なくなるって言ったら心配してたわ」
「あ〜お母様黙って下さいーー」
スカーレット様はノルンに押されてどこかに行ってしまう。
「タクトくん、あとで大丈夫か確認させてね〜」
スカーレット様、あんた俺に何をするつもりだよ。
俺は父さんに肩を叩かれ振り返ると、
「タクト、年上の女性が良いとは言ったが、ちょっと
上過ぎるんじゃないか?父さんがクビになっちゃうぞ」
「大丈夫!大丈夫だからそんな顔しないで〜」
久しぶりに父さんの怖い顔を見た。
父さんは屋敷の庭師、俺は父さんの手伝いをやっているわけだが、これがなかなか大変で屋敷が大きいのもあるが庭が広い。それにも関わらずこの仕事をしているのは父さんと俺のみ、おかしいと思うのだが父さんが有能なので問題なくこなせてしまう。
「今日はこの辺にしようかな!」
父さんはまず庭木の 剪定を行う。剪定とは余分な枝や葉を切り落として樹形を整えること。その後父さんの気分で樹形を様々な形に変えるのだが、これはセンスがいるから俺には父さんの代わりは難しい。
そしてここで初めて見ることが出来る。(拓哉として)父さんのスキル『カット』、刃物の切れ味を上げる能力、父さんはその力をナイフに付与して枝を切っている。
「スキルか〜僕のは一応変わってる方だよな!」
俺は昨日の話を思い出した。