第89話 配管とは……つなぐ物?
モニカさんと別れてから、まずはこの森を抜けるためにひたすら歩いた。
「全然出れん!どこまで行けば出れるんだよ!」
もうすぐ夜になる。
夜になると獣や魔物が活性化するとか聞いたことがあるから気を抜くヒマがない。そろそろ休みたいんだけどな。
「また来たよ。……魔物とはいえ殺すのは気が進まないんだよな」
とは言っても俺を取り囲むようにオークが十匹ちょい……もうこんなのばっかりだ。
俺はバーナーを取り出しスイッチON、ブヒーーと叫び声が響く。やめてよ〜また魔物が集まってくるじゃん。
「このバーナー凄いよな〜楽々で魔物を全滅させちゃんうんだから」
オークの燃えカスすら無くなってしまった。正直恐ろしい火力だ。
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名称∶バーナー
分類∶道具
属性∶空間 火
効果∶☓☓☓☓☓
性能∶広範囲に空間延焼を行う
(込める魔力により範囲と
持続時間が変わる)
発動までに約二十秒かかる
空間把握が出来る状態である事
(取り扱い注意)
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「どうしたもんかな、そろそろ帰らないと父さんや母さんが心配する。それによくよく考えたら今日ノルンと約束してたぞ!……ヤバい怒られる」
俺はブルッと身体が震えた。
「はー……早く帰らないと」
「すぐに帰るのは無理やと思うで!」
「何でだよ!」
「ま〜感覚的ではあるけど、メッチャ距離を飛んでたはずや、なんせ一日以上飛んで移動したんやから」
「はいー?……一日だと!」
おかしいそんなはずは…俺の感覚では精々半日、まさか!?実際はプラス一日眠らされていたのか!そうなるとあの鳥がどれだけ休んだかは分からないが、確かに凄い町から離れてしまった可能性がある。
「マジかよ!あーどうすればいいだ!」
俺は頭をかかえる。するとここで頼れる相棒カンナさんが素晴らしいことを教えてくれた。
「う〜ん…戻るのは無理やけど、連絡手段はあるで!」
なんですと!?
俺は驚きつつ、良かった〜と安心した。
「ほい!これや!」
カンナが俺に渡したのは配管。
配管とは水や蒸気、ガス等の気体、液体を必要な場所に送ったり、排出したりする役割を担う設備の部品である。
この配管……経が1インチくらい(筒の穴の大きさ)で長さは三十センチくらいだろうか、これでどうしろと?
「その配管は筒の穴を通して別の空間と接続することが出来るんや、つまり離れた位置に居る人と話をしたり見たりすることが出来るんや、ホンマは空間転移として使えるんやけど、今のタクトやと無理やな!MP(魔力量)が足らんで最悪死ぬで!」
えー!死ぬの!こわ!……でもこれも凄い道具だ!それにこれを使えば連絡が取れる。取り敢えずの心配事が解消出来るって訳だ!
「成る程、カンナの説明がボクの思った通りのものなら助かる。でもまずは安全な場所の確保だな。いつ魔物が襲って来るか分からない場所で話は出来ないし、それにどこかで睡眠と休憩をちゃんと取らないと後々戦闘で響いて来る」
「そやな〜でもどうすんねん!このアホみたいに魔物がウジャウジャ居るでぇ〜」
「それについてはさっき考えた。任せとけ!」
俺はバーナーを使い自分の周辺半径十五メートルに空間延焼を設定し発動した。これにより地面以外の半球状の結界を張ったことになる。その範囲に入れば無差別に焼き殺すことになるが、ここは死の森と言われる魔物だらけの森、人は恐らく来ないだろう。一応張っている間はカンナに監視もして貰うつもりではあるがな。
「これで誰も入って来れない」
「成る程、いい手やな!でも地面は良かったんか?」
「地面ね〜そりゃ〜やりたかったよ!そっちの方が安心出来るし、でも地面にやると土を焼くことになってそこが空洞になる。陥没して怪我するだけだよ!」
「せやな!でもさっき見たいな。地面から攻撃して来る魔物もおるんとちゃうの?」
「居るのは間違いないからな。取り敢えず適当にビスを撒いておくよ。刺されば空間固定の効果が出るように魔力を込めてね!」
「ええやんか!大分応用して使える様になったやん!ええで!ウチの道具は普通とちゃう、使い方には様々な可能性があるんや!精進せいや!」
カンナに褒められた。
今もカパカパ頭を噛まれている。
この感情表現はなんとかならないのか?
それでは気を取り直して配管に魔力を込める。お〜……本当だ!今までにないくらい魔力が持っていかれる。込めても込めても中々発動出来るまで溜まらない。最終的にMPの5分の1くらいもっていかれた。あ〜しんどい……
「まずはノルンに謝っておくか、あとが怖いからな。それでは発動、配管よ!ノルンと接続してくれ!」
ゴーっと凄まじい魔力を消費しノルンにつながる。
「どれどれ」俺は配管の穴から覗く。
中はやや湯気で見にくい……おう!
うむ!…これはなかなか、張りがあって丸みのあるお椀型ですな!これでまだ発育途中とは将来楽しみで
すな〜。
「きゃ~タクトさんのエッチ!やで!」
カンナはカパカパして言っていた。