表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

88/443

第88話 その一言が ボクを救ってくれたよ


「いやーーー〜〜〜」


 なんだ!?どうしたどうした。

 突然キマリスの叫び声がこだまする。


「えーーなんじゃこりゃーー」

 キマリスは黒い瘴気に包まれたかと思うとそこから出て来たのは巨大な黒い鳥、そしてその顔はあの女、キマリスとそっくりだった。


「何が起こったのかは分からないが、間違いなくあれは敵だな!」

 俺は鳥相手に空中では不利だと判断し、まずは地上に降りた。


 降り立った瞬間違和感を感じる。


「甘い香りがする」

 この匂い、どこがて嗅いだ気が……

 くっ……頭がクラクラするぞ!


 これはちょっとヤバいかもな。

 

 クラつく頭を押さえながら周りを見ると、多数の魔物が蠢いていた。これはさっき以上の数かもな。

 甘い香りはどんどんと強くなっていく。空を見るとあの鳥の化け物がゆっくりと羽ばたき僅かにキラキラとピンクに光る何かを撒いていた。


 この感じは魔力、だけどこいつからあの甘い匂いがするぞ。


 俺はその匂いを嗅ぎ力が抜け膝を着いたところで、

「何しとんのよ!目ぇ覚まさへんか!」


「あいってぇー」

 カンナが俺の頭にどんとぶつかり、痛みで俺は頭を押さえる。


「う〜ひどいよカンナ〜」

「何言うとるのよボーっとせぇへん」

 うー……痛かったけど少しは目が覚めた。とにかくあの鳥を何とかしないと、この頭のモヤは取り払えないか、とは言うものの、まずは周りにいる魔物を倒さないと、今ならこのバーナーを使えば一掃出来る。


「タクトそら止めときな!死ぬでぇ!」

「え!?なんで!」

「その道具は意識がはっきりした状態とちゃうと危険なんや!空間把握が出来てへんと自分も巻き込まれる」

「おいマジかよ!」

 困ったぞこの数をまともに相手するの大変だがそれ以上にこの匂いを嗅いではいられない。頭がおかしくなりそうだ。


 ん?……待てよ。良い方法を思いついたかも。

 なんでもっと早く気が付かなかったんだ。

 この匂いのせいかな〜…ま!いっか!


「カンナ〜この甘い香り吸い取ってくれない」


「あ!」……カンナも気がついていなかったようだ。

 

 カンナはカパッと開くとダイ◯ンも真っ青な吸引力で匂いを吸い取ってくれた。俺の意識が回復していく。


 それじゃ〜いっちょやりますか!

 俺は地上に居る魔物にバーナー向けてポチッとな!

 ………あれ?何も起きないぞ!


「それ、時間がかかるのよ。大体20秒くらい」


 なに!20秒、戦闘中の20秒は死ぬほど長いぞ!


 魔物が一斉にこっちへ向かって来た。

 内心早く!早く!と叫んでいたがなんとか間に合った。魔物は焼き払うことに成功!あとはあの鳥の化け物だけだ。


 俺のスキルって遠距離向きじゃないうえにアイツ結構速いからな〜どうすっかな〜


 う〜ん……そう言えばツールボックスのことで頭がいっぱいだったけど、雷魔法っていうのもあったな。あれも確かタクトの時にはなかったスキルだ。つまりあれも俺こと拓哉が目覚めたあとの特別スキル、考えて見ると一度も使ったことないや、1回使ってみようかな〜。


 使ってみようとか思ったけど、魔法名とか呪文とか分かんないや………イメージでやっとくか!


 まずは魔力を高めてそれを腕に集めて収束する。

 腕に集めた魔力を電気に変換、イメージは光ってビリビリする?そうそうだんだん腕がビリビリとして光って来た。あとは両腕をあの鳥に向けて放つ。


 なんか技名欲しいな!

 思いつきでいきまーす!


『エレクトリックディスチャージ』


 俺の腕に溜め込んだ電気が放出され一直線に鳥へ飛んでいく。


「ギャーー」

 見事に命中し鳥はビリビリと痺れて落下地面に落ちた。


 俺は落下地点に向う。


 向かった先には女性が倒れていた。キマリスと名乗っていた女性だ。どうやら落下の衝撃ですでに亡くなっている。


「おのれおのれおのれ」


「な!なんだ!」

 突然声が聴こえた。その声は彼女から聴こえたように感じたけど、まさか生きている?


 彼女から黒いモヤの様なものが出て来た。それはだんだん人の顔の様に変わり、俺を睨みつける。


「おのれガキが!よくも殺ってくれたな!」

 

「ゲェ!……何こいつもしかして悪魔か?」


「そうだ我の名はキマリス、ゴエティア72柱の一人よ!よく覚えておけ、いずれお前を殺す者の名だ!」


「………カンナ〜ハンドライトくれ!」

 俺はライトを受け取るとスイッチを光に切り替えて即座に点灯した。


「ギョェーやめろやめてくれーー」

 キマリスは苦しみ湯気の様な煙を出し消えていった。


 危ない危ない、悪魔は肉体を持たないから魔界か異界か知らないがそのまま逃げて、新しい宿主を見つけて仕返しに来るかもしれない。そんなヤツそのままにしておくかよ!


 キマリスは聖なる光で浄化された。

 パッと見ただのライトの光ですけど……


「……ありがとう…なんとお礼を言ったら良いのか」


「え!?……キマリスさん?」

 やや透き通って見える彼女が現れた。でも彼女は死んだはず、だってそこに倒れているし……


「改めてまして私はモニカと言います。キマリスはあの悪魔の名よ。あなたが倒してくれたから表に出ることが出来ました」


 そうか、この人もパトリアさんと同じで心を閉ざされていたのか!


「私は自らの欲望に囚われ、悪魔の力を借りてしまった。今ではとても後悔しています。ですがあなたが私を解放して下さりました。本当にありがとう」


「いえ、そんな……」

 お礼を言われるようなことじゃない!だって本当ならこの人も殺さずに助けることが出来たかもしれない。


「そんな顔しないで、あなたは私をあの悪魔から救ったの、もしもあのまま魂を奪われていたら私は未来永劫地獄の苦しみに囚われていたわ。今はとても清々しい気持ちよ!優しいあなたは勘違いしてしまうかもしれないけど、あなたは私を救った!間違えないで、それじゃ〜ね本当にありがとう」


 モニカさんはスーッと天へと昇って行った。


「はぁー……モニカさんありがとう、その一言がボクを救ってくれたよ」


 俺は暫く空を見上げていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ