第87話 道具のスイッチは無闇に押さないでね!
この森は俺を落ち着かせてはくれなかった。動くたびに何かしらの魔物が襲って来る。ここはまさに魔物の巣窟といったところか、ただ一点良かったのは今のところ強力な魔物と対峙していなかったこと、まだまだ余裕を持って対応出来る。
「とは言っても……そろそろ三時間位経つか、それならもうそろそろ来るな」
俺は敢えてこれ以上動くのを止めた。無闇に動いて隙を作りたくなかったからだ。それならキマリスが襲って来るのを待つ。
「遅いな……まだ来ないか………ん!」
森の奥で何かが動いた。
現れたのはモグラだった!ちっちゃくて可愛らしい風貌をしているが決して侮れない。何故ならこの魔物から発せられる殺気がさっきまで戦っていた魔物より強く感じたからだ。
「お前はキマリスの使いか、それともノラかどっちだ?」
俺はニッパーを構えると、
モグラは地面に潜りその姿を見失う。
「地の精霊さん教えてくれ、モグラはどこに…………うげ!メッチャいるじゃん一旦退避!」
地の精霊からの情報によると地面の中にはさっきのモグラだけではなく数百のモグラが待機しているから食べられないように逃げてと教えてくれた。いきなり地面からそんな数が現れても回避出来る自信はない。俺は空中に空間障壁を作りそれに乗って、またその上に空間障壁を使って乗ってを繰り返し三十メートル程上に上がった。
地面からポコっとモグラが顔を出す。しかも大量に、……あそこに居たら喰い殺されていたな。あぶな〜。
ふ〜一安心と思ったその時、
「見つけたわよ!坊や」
俺よりさらに上から女性の声が聞こえた。
「まさか!?」
上を見ると鳥の魔物が大量に空を覆っており、その中に大型の鳥の魔物に乗ったキマリスが居た。
「うふっ、どうする坊や、上も下も地獄よ!食べられたくなかったら大人しく捕まりなさい」
「い、イヤです!」
断ったもののこれは大ピンチだな。数が多すぎる。ある程度は倒せても捌ききれないぞ!
こう言う時は〜助けて〜カンナさ〜ん。
「ウチのことを呼んだ!」
なんか声が嬉しそう。
「呼んだ!呼んだ!この状況をなんとかしてほしい」
俺は素直に助けを求める。
「も〜う……タクトは世話が焼けるやな〜!しゃ〜ない、ウチに任せときー!」
流石は俺の頼れる相棒カンナさんだ!
「はい!これ!」
「これ……バーナーか……焼けと?」
これは俺も仕事場で使ったことがある携帯バーナー、トーチがあってボンベがあって……点火スイッチね!無闇に押しちゃダメだぞ!
「さて……これはどんな効果が?」
「押してみればええやん」
え!?良いの?危なくないかな〜。
俺は取り敢えず地面に向けてポチッとな!
ん?……何これ何も出ないんだけど。
俺は何だこれと思いトーチを自分に向けようとすると「アホかー!道具は安全に使うんやでー!」と言われてカンナが俺の頭にぶつかって来た。
「アイタタタ……何するんだよ!カンナ」
「危ないやろ、アホかいな!よ〜見てみー」
俺は下を見ると、
「え!?何これ真っ黒焦げなんだけど!」
モグラは真っ黒に焦げて見ていると全て塵と化した。こわ!
「空間延焼、指定した空間に居る相手に燃える事象を与えることが出来る。しかも今までの道具と違って広範囲さらに無音で無臭だから、その辺の奴らなら気づかずに燃やせるわよ。凄いでしょ〜」
カンナがカパカパと嬉しそうに言ってるけどモグラ達を見るとかなりエグい道具だと思う。こんなの受けたらひとたまりもない。
「あ、あなた何したのよ!」
あれ?……キマリスさん動揺されてます?
見たら分かる動揺してブルブルと震えていた。へー……流石に怖かったみたいだね。
「さ〜なんだろうね〜一応この道具でやったんだけど、キマリスさんも受けてみる!」
「ヒィー」
キマリスは怯え転倒した。
これは勝負あったな。
「お〜いもう止めないか〜俺としては穏便に済ませたいんだけど」
言ってどうにかなるかは分からんが、ダメなら仕方ない。その時は倒せば良い。
◆キマリスの視点
なかなか可愛い獲物、その上活きが良い。これは狩りを楽しむのにうってつけね。私は敢えて獲物を逃がした。
この森は死の森とも言われ多くの魔物が生息している。私が扱うユニークスキル『甘い香り』は魔物を集め魅了する。多くの魔物を従え、私はあの少年を追った。あ〜楽しみ!
しかし、私の予定通りにはいかなかった。私は少年の困る姿、泣き叫ぶ姿をみようとしていたのに一瞬で数百匹の魔物を焼き殺した。しかもどうやって殺ったのかさっぱり分からない。私はこのままこの少年に焼かれて死んでしまうのかと恐怖して倒れてしまった。
そんな私に少年は手を差し伸べて来た。この戦いを止めようと、その言葉を聞き私は安堵した。でもその時だった。声が声が聴こえた。
「何あなたパイモン様を裏切るつもり〜良いけど契約に従いあなたの魂は頂くわよ!」
「あ!?待ってお願いそんなつもりじゃないの」
「ダメよ〜だってあなたの心は私に丸見えなんだから」
カハァ……身体が熱い、私の中にいる悪魔が身体を乗っ取ろうとして……あ〜……ダメ…抗えない。
「いやーーー〜〜〜」
私の姿は化け物と化した。




