第85話 新たな敵
「イグニスさん、俺は勇者じゃないって………どういう意味ですか?」
「うん…ま〜そのままの意味だ!俺は火の勇者と言われているが、勇者じゃない。勇者スキルを持ってないんだよ」
「う、う〜ん」
「わるいわるい。言っている意味が分からないか、女神様から選ばれる勇者って〜のはユニークスキル勇者スキルを持っている。俺にはそれがない」
「でも……イグニスさんは勇者って言われてますよね」
「俺はな、次の火の勇者が現れるまでのただの繋ぎだ、俺の師が火の勇者でよ、亡くなる前にこの剣デュランダル託された。この剣を持っているから勘違いする奴が多いんだよ!」
そんなことが……それにしてもイグニスさんが火の勇者じゃないことにはビックリだ!こんなに強いのに勇者スキルを持っていない……逆に凄くないか?
「も〜う!またそんなこと言って!私の方こそ何度も言っているわ!そんなの関係ないって!イグニスはたくさんの人達を助けた偉業があるのよ!私はその話を聞いて憧れたの、良いかしら!勇者スキルを持っているから凄いんじゃないの!みんなから認められる行動をした人が凄いはの肩書なんてとうでも良いわ!」
おいおい、さっきと言ってることが違うぞノルン、でもノルンの言う通りだと俺も思う。スキルなんて関係ない。きっとイグニスさんの凄いところはそんなところじゃない。
「ホント、ノルンには参るぜ!どうしたらそんなカッコいい言えるんだ。俺が女神様だったらノルンに勇者スキルをやるんだかな!……ヨッシャ!今日は特別にこの俺イグニスが一日お前らの先生をやってやる」
イグニスさんは嬉しそうに笑顔で俺達を指導してくれた。
…………▽
「はぁ〜……疲れた。見た目通り体育会系の指導だった」
俺とノルンはイグニスさんの指導を受け、素振り千回、ウサギ跳び1キロ、懸垂百回………本当にこれで強くなれるのか?どうにもイグニスさんにからかわれているように感じる。
肉体を鍛えるのも勿論良いことなのだが、この世界ではやはりスキルの力を鍛えること使い方を学ぶことが大事と感じる。俺の場合は工具をもっと上手く扱えれれば戦いの幅が広がる気がする。
よ〜し……明日から自主練でもするか!
最初は乗り気はなかったけどイグニスさんの指導を受けて刺激を受けたようだ強くなりたいと思った。
その次の日……俺は空を飛んでいた。
う〜ん……高い……怖〜い……どうしょう……
俺は今ドラゴンにも負けない巨大な鳥に捕獲されて空を飛んでいた。正直現実逃避しそう。
取り敢えず冷静になろう。俺に一体何が起こった。まずはそれを思い出すんだ。確か………朝起きてご飯食べる前にニキと散歩してから先生を引っこ抜いて、朝ご飯を食べる。よし!ここまでは問題ないな!で!その後、先生とニキが将棋をして遊んでいたので、俺は一人森に行って修行をしに行った。
「あの〜……どちら様でしょうか?」
森の中から一人の女性が出て来た。
「うふ……カワイイ子がいるはね。おはよう!朝のお散歩かしら?」
「おはようございます……えっとそんなところです」
俺はやや動揺しながら返事する。
おかしいな、この場所には町の人は滅多に来ないはず、それにこの人……見たことない!そっかこの人はどこか別の町から来た人ね。もしかして道に迷ったのかも。
「こんなところでどうされたのですか?もしかして町に行きたいのならここからもうすぐですよ!」
「う〜う違うの町には用はないの」
女性は片手を頬にあて悩ましい表情で答える。
この人はなんか色香が凄いな〜肌がほとんど出てない長いドレスを着ているのにそのムチムチボディがそう思わせるのか、それに甘い香りもしてなんかクラクラする。
「そうなんですか、でもここあまり魔物は出ないですけど獣の類は出るかと思うので、町に戻った方が良いですよ」
「あら!そうなの……もしかして坊やがお姉さんを襲う獣って言いたいのかしら?」
女性はおもむろに服のボタンを外し、そのこぼれそうな豊満な胸の谷間をみせる。
え!?……え〜んでっか、それなら遠慮なく。
俺はお姉さんの谷間をジーッと見る。
これは男として仕方ないこと、それに中身は三十のオッサンあんなもの見せられたら性欲が刺激されて当然だ。
俺は吸い寄せられるようにその胸に囚われた。
………それで今に至るのだが、これってもしかして…
「あら…目が覚めたかしら?」
声が聞こえるやや斜め上を見上げると、そのに俺を捕らえている鳥の魔物と同じヤツに乗ったあの時のお姉さんが居た。
「おはようございます。……ここ寒いんで降ろして貰えませんか?」
「うふっ…ダメ!私はあなたを連れてくるように命令去れているの」
やっぱり……つまり認めたくないが俺は…俺は…ハニートラップに引っかかってるじゃないかバカヤローがー……なんてバカなんだオレ……メチャクチャ悲しくなる。
くっそ〜こんなの恥ずかしくて誰にも知られたくない。
あ〜ダメだ!ダメだ!タクト落ち着け、お前はまずはこの現状を打開することを考えろ!まずは冷静になるんだ。
「あの〜聞いても教えてくれないと思うんですが、それって誰の命令です?」
「う〜んどうしようかしら、別に教えてあげても良いわよ!」
「え!本当ですか…それじゃ〜教えて!」
「う〜んタクトくんは可愛いわね。主様に言って貰おうかしら」
俺の名前……把握されているのか。
「良いわよ!教えてあげる。私は主様からの命で動いているの、主様はパイモン様よ」
あ!……あの時の少年……ゴエティアか…
「それでボクになんのようだよ!」
「あら、反抗するつもりかしら、良いわよ」
お姉さんは何を考えているのか顔を赤くして光悦した表情をする。何考えているんだ?
「その前にあんたの名前を教えてくれるか?ボクだけ知られているってのは気分が悪い」
「そうね、まだ名乗っていなかったわ!私はゴエティア72柱の一人、キマリスよ。宜しくね坊や」
「教えてくれてどうも、それじゃ〜そろそろ反抗させてもらうよ!」
俺はプラスドライバーを出し鳥の魔物にビスでロックした。