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第82話 あ!殺っちまった!?


「なんでこちらにお母様が……」


「あらノルン、まだ勉強中のはずよ!

お母さんから逃げられると思ったの?」


 鋭い視線がノルンに刺さる。


「そ、その様なこと……滅相もございませんわ」


「うん、分かっていたなら良かったわ!」

 スカーレット様はそのまま部屋に入りラスタウル隊長の前に歩いていく。


「ラスタウル、話は聞かせてもらったわ!娘が迷惑をかけたわね」


「いえ、そんな、大したことは御座いません。町を守り住民を守る者として当然のことをやったまでで御座います」

 

 ラスタウル警備隊長はビシッと背筋を伸ばし敬礼する。


「うふっ流石は警備隊長さん、……でも一つだけ頂けないわね〜なぜ娘の話を蔑ろにはしたのかしら」


 スカーレット様の声のトーンが徐々に冷たく

なっていく。


「娘はこの町に魔物が攻めてきていると言っているのよ!これは警備隊として聞き逃しては決していけない内容よ!それ……分かるかしら?」


「し、しかしですね。ノルンお嬢様のお話が我々としても判断しかねると申しますか」


「なら、あなたが確認に行ってらっしゃい!人命に関わることよ!簡単に切り捨てるな!この町は今から屋敷の警備兵を使って警護します。今すぐに魔物の調査に行きなさい!いいわね!」


「は、はい!今すぐに行かせては頂きます!」

 

 ラスタウル警備隊長は顔を真っ青にして、テキパキと部下に指示し戦闘準備を整えていた。


「ありがとうございますスカーレット様」

 俺はすぐにお礼を言いに行った。


「タクトくん、随分と強引になったのね〜私からノルンを連れ出すなんて」

 スカーレット様の目が鋭くなり、後ろにオーラが見える。これはヤバいやつだ!


「あ、あのですね。なんと言ったら良いのやら!どうしてもノルンの力が借りたくて、そ、それと慌てていて混乱しておりました〜すいません」

 俺はとにかく頭を下げた。


「タクトくん……別に怒ってないわよ!でもね。それなら今度からは私にしなさい。強引なの嫌いじゃないわよ〜」

 

 スカーレット様の言葉は相変わらず色んな意味でゾクゾクする。これはヤバい!


「母様、あんまりタクトに近づかないで下さい」

「なんで…良いじゃな〜い」

 俺の首にしなだれる様に腕を巻くスカーレット様にノルンは怒り何故か叩かれた。


(デレデレしてるんじゃないわよ!)


……………▽


「お母様私も行かせて下さい!」

「ダメと言ったらダメです!ここは警護隊に任せなさい!」


 ノルンはムチでぐるぐる巻きに拘束されていた。


 ノルンはもちろん魔物討伐に加わる気であったが、それをスカーレット様が許す訳もなく今に至る。


「ノルンボクに任せて!絶対に魔物を止めてみせる」


「そんなの当たり前でしょ!私も戦いたいの!」


 やっぱそうだよね!

「まったくこんな可愛いのにお転婆が過ぎるといつか……」


「タクトくんワザとかしら、声が出てるわよ」

 スカーレット様に言われてノルンを見ると真っ赤な顔をして黙ってしまった。

 あちゃ〜やらかしたな!ま〜いっか、これですぐに出撃出来る。


 こうして俺達は魔物の大軍(三百体)を相手に向かうのだ!


…………………▽


◆イグニスの視点


「ふ〜……少々派手にやり過ぎたか」

 周りの木々は飛び散り、地面は燃えていた。

 これだけやれば流石にただでは済むまい。


「さあ、町に戻るとするか、急げばまだ

役に立てるかもしれんしな」

 俺は町の方角に向き歩き出す。その時だった。パラパラと音がした。振り返るとそこには大木がそびえ立っていた。


「まさか生きているのか?」

 大木を見ていると木の木目が徐々にあの醜悪なばあさんの顔へと変貌した。


「ヒッヒッヒ、危ない危ない、火の勇者とはいえ私も油断したよ。だけど殺せなかったの〜」

 ばあさんはニヤニヤとこちらを見ている。


「まだ生きてやがったかバハア!」

 俺は剣を構え炎を灯す。


「止めな!もう十分だよ!これ以上は戦いたくないね」

 

「はぁっ……どの口が言っている。俺を殺すつもりはないとでも」


「ないよ!元々お前さんがここにいる予定ではない。儂らがしたかったのは町の壊滅、すでに時は経った。今からでは間にあわない、すでに私の役目は果たしたのさ」


「だから引けとでも言うのか?」


「そうさ、どうせお前さんでは儂は倒せんようだしのう」


「木を操るお前を俺が倒せないだと!俺は全て燃やし尽くすと言った!改めてやってやろう!」


「だからお前さんともう戦う理由はない。ま〜聞くのだ、お前さんも儂に勝てない理由を聞けば戦う気もなくなるであろう」


「はぁっ……言ってろ!」

 剣により炎が強く燃え上がり攻撃態勢に入るが、ばあさんの顔に焦りはない。


「儂の本体はここにはない!」

 

「なんだと!それはどう言う意味だ」


「そのままの意味さ、儂の本体はここから約一キロメートルの深さに身を隠している。いくら勇者と言えど地面深くにおる儂に攻撃は不可能!どうだ……言っている意味が分かったかい」


「チッ……うっせえ〜消えろ!」

 俺は剣を振り大木を焼いた。しかしヤツの言う通りなら倒せてはいない。


 それから完全にばあさんの気配が消えたので、俺は町へと戻る。道中ゴーレムの残骸を発見した。見たからに多くのゴーレムと思われる。魔石がそのまま残っていることから冒険者の仕業ではないと感じたが、こいつまさか……


 それから暫くそこに留まっていると、やはり来たか、タクトが警備隊を連れてやって来た。


「あ!イグニスさん〜…ご無事でしたか、良かった」

 タクトくんがこちらに走って来て、俺の無事が分かると安堵していた。

 俺のことを心底心配してくれたようだ、優しい少年だな。このまま大人になってくれると良いのだが、薄汚れるなよ少年。



「おう!あんなヤツ余裕余裕…と言いたかっがな。ばあさんには逃げられた。なかなか知恵の回りやがる。油断したぜ!」


「良いですよ。イグニスさんが無事なだけで、それで警備隊を連れてきたのですが魔物はどこに?」


 はぁ?……少年はボケをかわしているのか?周りにゴーレムがゴロゴロと転がっているだろうが、どこ見てんだ?


 

「何だこれは!?こいつらが魔物!確かに凄まじい数、しかもゴーレムだと!………こんな魔物が押し寄せていたら…………」


 警備隊の奴らは気がついたか、どいてもこいつもビビっていやがる。あれでは仮に魔物の大群を相手にしても使い物にならないな。


 警備隊の隊長と思われる男がこちらに走ってくる。


「あなた様が火の勇者イグニス様でしょうか?」


「ん!……あ〜そうだがなんか用か?」


「あ…いえ……そのありがとう御座います。なんと感謝すれば良いのか、流石は勇者様です!」


 はぁ?……こいつなんか勘違いしているぞ!これをやったのは俺じゃねぇー


 その時、少年の方を見ると、あ!っと驚く顔をしてから、ポンッと手の平を叩き納得している。なんだよお前か〜、俺は少年に声をかけようとすると。


「流石はイグニスさん強い!こんなにたくさんのゴーレムを倒すなんて!」


 こいつなに言ってるんだ?

 さっきの反応明らかに可笑しかったろ!

 寧ろタクト!お前が殺ったな!


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