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第76話 火の勇者イグニス


 ドラゴンが真っ二つに!?あの人が殺ったのか?


 こちらに歩いてくる一人の男、見るからに強い闘気オーラを纏っている。


 俺はその男を見据え緊張が走る。

 助けてくれたのなら良いけど、イリスが言っていた件も気になる。もしかしたらこの人は敵かもしれない。


 その圧倒的な威圧感を放つ男に俺はビビっていたと思う。身体が自然と後ろに力をかけて逃げる体勢を取っていた。


「イグニス!なんで!こんなところに居るの!」

 俺の後ろから嬉しそうな声でノルンが飛び出して行く。止めようかと思ったが明らかに知り合いの反応だったので完全にタイミングを逃した。


「おお!ノルンか!暫く見ないうちに美人になったじゃないか、バロンは元気してっか」

 

 ガッハッハと豪快に笑う大男、

 身長は2m近くあり、ダークブラウンのゴツい鎧を着て凄く強そうに見える。でもその割には武器は剣なのだが普通、あれはただのロングソード、ジェーさんみたいにゴツい大剣でも使うのかと思った。


 俺は警戒を解き、ノルンとその男がいる場所に向かう。


「お〜いノルン……この人は知り合いなのか?」


「そうよ!聞いて驚きなさい!この人は火の勇者イグニス様よ!」


「勇者?………おー!スゲー勇者とかいるんだ!」

 異世界に来たからもしやとは思っていたけど、やっぱり勇者はいるんだ!カッケー!


 俺は勇者に会えたことに興奮、いつになくテンションが上がってしまった。



「あ?坊主はもしかしてノルンのこれか!」

 

 イグニス様は右手の小指を立ててニヤニヤとしている。……なんかゲスいな〜


「何言ってるんの!バカ〜!」


「ウガァ!?」

 ノルンはイグニス様のスネを思いっきり蹴り飛ばし、イグニス様は足を押さえてぴょんぴょんと跳ね回っていた。


 なんか、さっきから俺が思う勇者と大分イメージが違うんだけど。


「あ〜痛って!そんなに強く蹴らなくてもいいだろ。足が折れたかと思ったぞ!」


「ふ〜んだ!そんなの知りませーん!イグニスが悪いのよ!アホなこと言うからー」


「そうか……悪かったな。

それにしてもお前達はこんなところで何してんだ?ここは結構危ないところみたいだぞ。ドラゴンが居るからな〜、早く帰った方が良い」


「それは分かるけど、そもそもこの森に今までドラゴンなんて居なかったのよ!これはお父様に早く知らせた方が良いわね!」


 えー……どうしよう。あれはニキが呼びました。……なんて言えないし、それに信じてくれないよな〜何か良い方法はないだろうか!


 俺は考える。……そして思ったもうどうにもならないと。


「冗談だよ!この森にドラゴンは生息してない」

 

「でもイグニスさっきのは……」


「あれはこの森のドラゴンじゃねぇ〜よ!俺はこの森を十日間調査したが、ドラゴンを見た覚えはない」


「はぁ〜良かった!それなら大丈夫ですね」

 俺はホッとした。イグニス様が証明してくれた。お陰で大事にならなくて済みそうだ。しかし何故かノルンは不審な顔をしていた。


「あれ?ノルンどうしたの浮かない顔して」


「別に〜どうせ迷子になったんでしょ。イグニスもの凄く方向音痴だから」


 え!?もしかしてイグニス様、迷子だったの?


「意地悪言うなよ!ノルン、俺が偶然迷ったから助かったんだぞ!俺の方向音痴もたまには役に立つだろ!ガッハッハ」


 俺達は運が良かったようだ。正直笑うね〜


 俺は苦笑いしつつ、倒されたドラゴンを見る。

 あのドラゴンをあんなに簡単に切断するなんて、人間技じゃない。


 ここが改めて異世界だと痛感させられた。

 

「もう少し強くなっておかないとダメだな!」

 俺は無意識に思ったことが声に出て漏れる。


「ほぉ〜良い心がけじゃ、これは修行の要望じゃな!」


「先生、気配を消して近づかないで下さいよ!驚くじゃないですか」


「そうか……その割には落ち着いているように見えるが」


「イグニス様がドラゴンを倒す姿を見て驚いた後なんで、このくらいで動揺するのは良くないと思った…かもしれませんね。

 それより先生、勇者っているんですね!もしかして魔王とかも居るんですか?」


 当然の疑問だと思うのだが、勇者とは魔王を倒すためにいる存在であり、魔王が居ない世界に勇者など要らないのだ!



「魔王?……もちろん居るのじゃ。それがどうした?」


 やっぱり居たか、あ〜どうしよう。

 この町も襲われるじゃないのか〜


「なんじゃ、急に不安そうな顔をしよって、魔王が居たからと言ってなんなのじゃ」


 あれ?先生の反応が俺と大分ズレている気が…


「先生、魔王って悪いやつなんですよね?」


「タクト、今時そんなことを言っているヤツはおらんのじゃ、なにを考えておる?」

 

 先生は何この弟子はアホなことを言っておると言った感じの顔をしている。どうも相当非常識なことを言ったようだ。これでは埒が明かない。もう少し具体的な質問をしないと。


「魔王って世界征服を企んで、戦争を仕掛けているとかはないんですか?」


「タクト……頭大丈夫か?修行の話は少し休んでからの方が良いな」


 え〜!先生に優しくされる程アホな質問をしてしまったのか!?


「タクトよ〜魔族との覇権争いなど二百年以上前に終わった話、友好条約まで締結している。ヒト族でそんなこと言ってるのはお前くらいなものじゃぞ」


 へーこれにはびっくりした!

 元の世界の常識は通用しないのね。そうなると勇者の役割とは一体?


 う〜ん?………考え事ていると後ろから気配する。


「誰だ!隠れているのは分かっているぞ!」

 俺は草むらに向かってプラスドライバーを構える。


「誰だ!……じゃないわよ!忘れていた訳じゃ

ないわよね〜」

 飛び出してきたのは、頭から流血しているジェーさん。………忘れてた!……良し誤魔化そう!

 

「ギャー化け物〜」

「誰が化け物よ!食べちゃうわよ〜」

 

 俺は走って逃げた。


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