第73話 ジェーさん再び
俺達は魔石の換金と冒険の準備を済まし町の外へと向かう。途中タンクさんが前から現れ。もちろんそうなれば……
「なんでノルンと一緒にいるんだタクト!」
となる。
タンクさんはこちらに猛スピードで走って来た。
「よ!ノルン、元気してたか?」
「久しぶりタンク、あなたも元気そうね!」
エヘヘへっとタンクはニンマリと笑顔になる。
「お前は元気か?タクト」
「それなりです」
「そうか、それは良かったな!」
この間のやり取りの効果かなんとも淡白なやり取りになってしまう。
「タンクは今からどこに行くの?もしかしてクエストを受けてるの!」
ノルンは楽しそうに聞く、タンクさんは革鎧を着て、背中に長剣を背負っていた。これからクエストに行くのがわかる。
「ま、まあ、そうだな!ここ最近町の周辺でゴブリンの目撃情報が上がって、バロン様がギルドにクエストを依頼したわけだ」
「えーお父様私に言えばいいのに〜」
悔しがるノルン。
「そんなわけにいかないでしょ。娘にそんな危険なことさせないよ。それにバロン様はこの町の冒険者に仕事を与えるためにあえて依頼を出しているんだよ」
「ふんだ!そんなこと分かってるはよ!言ってみただけじゃない」
ノルンはすぐ拗ねるんだから、なんとも扱いにくい。
「あ〜ムシャクシャして来たわ!タクト〜さっさと行くわよ!」
ノルンは魔物を倒してストレス解消するつもりか?俺をおいてさっさと歩き出す。
「ちょっと待てよ!ノルンはこいつとどこに行くんだよ!」
「ん?私達はフォルドの森でレベルアップよ!魔物をバンバン倒してすぐにAランク冒険者になってやるんだからー」
ノルンは拳を突き上げて気合を入れていた。
「そうか、それなら俺も行くぜ!」
「え!?タンクも来るの?でもタンクはクエストを受けてる最中でしょ、勝手に破棄したらペナルティを受けるわよ!」
「それは大丈夫だ!このクエストは特別に期間は設けてないんだ。一日二日遅れてもなんの問題もない」
「私は良いけど、どうする?タクト」
え!?俺に振るの?も〜うノルンが決めれば良いじゃん。俺が言ったら角しか立たないよ。
俺が答えるのにまごついていると、後ろにから近づく男がいた。
「あ〜ら面白そうな話ね〜私も仲間に入れてくれる?」
後ろから野太いのに甘ったる喋り方をする声がした。
俺とノルンは嫌な予感を感じつつも振り返る。
「………ギョエーー!」
「………キャーー!」
驚きと拒否反応で凄まじい速さで下がる。
建物の壁がなかったらもっと下がっていたと思わせる衝撃、魔物ではないが化け物であることは間違いない。
「相変わらずカワイイ顔をしてるはね!タクトちゃん」
「なんでまだジェーさんがここに………」
ジェーさん、前に母さんを襲おうとした男、俺がなんとか倒したのだが、訳あってオカマになった。一流冒険者である。
「師匠!すいません勝手に予定を変えてしまって」
師匠!?……タンクがジェーのことを師匠と呼んでいる。どういうことだ?
「良いわよ!タンクちゃんもお友達と一緒の方が楽しいでしょ、それにまたタクトちゃんと会えて嬉しいわ!」
「うわぁーバカ!くんな〜」
ジェーが両手を広げ、こっちの走ってくる。
気持ち悪いからあっちいけーー
「いや〜タクトちゃんはイケズなんだから、ま〜ぁそんなところも……かわいいぞ!」
うっ……寒けがする。帰りたくなって来た。
俺のテンションが大きく下がった。
「それにしてもなんであなたが居るわけ?確かお父様の話ではもう釈放されたって聞いてたけど」
「あら?あなたはバロンさんの娘ね。
ま〜私にも色々あってね。私は今まで酷いことをばかりをやっていたわ。でもそこのタクトちゃんのおかげで目が覚めたわ!だからまずは私がやり直す第一歩として、迷惑をかけたこの町に罪滅ぼしがしたくてね。ここでしばらく働くことにしたの」
ジェーさん……変わったんだな。
オカマにして良かったか不安だったけど、良い方向に進んで良かった。
「そうなんだ、良かったよジェーさん」
「タクトちゃんのおかげよ!今はタンクちゃんみたいな冒険者を目指す人の指導と冒険者のクエストのお手伝いを主にしているわ」
ジェーさんはAランクの一流冒険者、この町には冒険者ギルドがないから、どうしても指導者不足だったけど、これはこの町からすればかなり助かる話だと思う。
「ジェー師匠みたいな一流冒険者に俺はなるぜ!それでよ、それでよ……グフフフ」
タンクがニマニマと笑っている。
タンクさん……お前の考え手に取るように分かるぞ!カワイイタンクさん16歳だな。
「それじゃ〜話はついたわね!魔物をガンガン倒してレベルアップするわよー」
ノルンの掛け声が元気に響いた。
……………▽
俺達はフォルドの森に着いた。
前に来た時はゴブリンやコボルトばっかりで大して強い魔物はいなかったけど、オークやオーガもいるから気をつけよう。
「みんな一つ話があるの聞いてくれるかしら」
ジェーさんは頬に手を当てて悩ましく声を掛ける。
「今回は人数も多いから即席だけど戦闘時のフォーメーションを決めたいの、だからあなた達の戦いを見せてほしいわ!」
流石は現冒険者、ちゃんとしてる。
ノルンも特に文句を言う様子はなく。むしろしっかり指導を受けようとする姿勢さえ感じた。
「タンクちゃんは知ってるからノルンちゃんのタクトちゃんの戦い方を見せてもらうわね」
それから森の奥には入らずに、ゴブリンかコボルトを狙って探した。
「えい!やぁー」
ノルンは2匹のゴブリンの攻撃を躱し、間を通り抜けるようにゴブリンを斬り裂いた。
「あ〜ら良い動きするじゃな〜い!流石はバロン男爵の娘、動きの切れが一段違うわ!」
ジェーさんはノルンの動きが想像より良かったのか、ほぉーっと感心していた。
「ま〜当然よ!このくらい楽勝なんだから!」
ノルンは褒められて嬉しそうにしている。でも俺は知っている。こうして調子に乗るのが一番危ないことを、あとで注意しておこ〜っと。
「次はタクトちゃんね!」
ゴブリンがこちらに3匹来る。
俺は一番前を走って来るゴブリンの足元を地の精霊の力を使ってほんの少し土コブを作る。それに足を引っ掛けたゴブリンは転倒、俺は倒れたゴブリンに蹴りを入れ倒す。残りの2匹は警戒して離れたので、同じく地の精霊の力を使って、2匹のゴブリンの両サイド土壁を作ってサンドした。
「よ〜し、終わった」
俺はゴブリンを倒し戻る。
タンクさんは驚き顔をしている。そう言えばタンクさんは俺が地の精霊を使えるの知らなかったけ、忘れてた。
ノルンは俺がゅ゙強くなったことを喜んでいる。冒険者になるようにずっと言われていたしね。弱かったら困るもんな。
そして肝心のジェーさんだか……不思議そうな顔をしていた。
「タクトちゃん、今の戦い方…ワザとかしら?」
「え?何がです?」
最初はジェーさんの言っている意味が良く分からなかったけど、恐らくツールボックスのスキルを使わなかったことが理解出来なかったと思う。
「ま〜良いわ。むしろ援護を中距離で出来る人がほしかったもの、助かるわ」
「じゃ〜フォーメーションは決めたから、もう少し森の奥に行ってみましょうか!」