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第72話 おっさんの馴れ初め


「実は俺と妻のエルシーは正式に結婚出来ていないんだ、ほぼ駆け落ち同然で家を出たんだよ」


「ほう……そうなんですか、それでこの魔石が必要なのと関係があるんですか?」


「ま〜間接的にだがな。俺は元は魔導製品の職人をやってた。当時国一番の魔導ショップルーシーに努めてバリバリ仕事をやってたんだがよ。ある日運命の出会いをしたのさ」


◆おっさんとエルシーさんの出会い……回想①


 フッ…どいつもこいつも大したことはないな。また、俺の作ったの魔導具のおかげで売上は倍増、このまま行けば所長の座もすぐだな。


 この時の俺は調子に乗り野心の塊の様な男だった。周りの人間が猿にしか見えず、ドンドン態度がデカくなっていた。そんな俺に周りの人間は陰口を言っていた様だが猿がキーキー言っているとしか思わなかった。


 そんなある日、エルシーと出会う。


「誰の許可を得て二足歩行をしてるのよ!この豚野郎」


「ごめんブヒー!」


◆回想①…終わり


「うん!おっさん、今の話じゃ色々と分かんないんだけど」

 俺は少し頭が痛くなった。


「お?そうか…ま〜そうだな。まだ子供のお前には分からないかもしれないが、ブタは二足歩行してはいけない。……衝撃的だったぜ!」


「大人になったら分かるのなら、ボクは一生子供でいようと思います」


「分かるぜ!子供の頃は意外なところで恥ずかしがったりするもんだぜ!気にすんな」


 おっさんはフォローのつもりかウィンクするが、気持ち悪いのでやめてほしい。


「取り敢えず続きをお願いします」


「そうだった!そうだった!俺は運命の出会いをしてなんとか振り向いて貰うために必死にエルシーを口説いたのさ〜」



◆おっさんとエルシーさんの出会い……回想②


「俺と付き合ってくれ!」


「ブタが言葉を喋るんじゃない!」


「君が好きだー!」


「ブタが調子に乗るんじゃないの!」


「俺は君を愛している」


「ブタに真珠って言葉知ってる?あなたのために

ある言葉よ!」


「ブヒーブヒブヒブヒッ〜」


「女王様とお呼び!ビシッバシッ」


 こうして俺達は付き合うことになった。

 

◆回想②……終わり


「恥ずかしい話だぜ!青春ってやつだな。俺はこの時幸せの絶頂だった。たけどそれを邪魔する存在がいたのさ」


 おっさんは照れながら過去の話を思い出し、嬉しそうに話すのだが、俺には全然響きません。恥ずかしい話に関しては激しく同意しますけど……


「その邪魔する存在ってのは何なんですか?」


「親だ……エルシーのな。

 エルシーの親は俺が勤めていた魔導ショップの社長だったんだよ。俺はエルシーと別れるよう散々言われ、いわれもない罪で吊し上げにもあったな。それでも俺は認められるために必死に頑張った。でも……それは叶わなかった」


 おっさんは少し肩を落とし当時のことを振り返っていた。そしてガンっとカウンターを両手で叩き、怒りをあらわにした。


「クソォー……俺のせいでエルシーが!……クソォー!」


「騒がしいわよ!このブタ野郎!」

 おっさんは突然現れたエルシーさんに蹴りを入れられ、ゲシゲシと踏まれている。


「なにベラペラ喋ってるのよ!このブタ!」


「ブヒーすいませんブヒ〜」

 

 おっさんは嬉しそうだが、

 ………幸せの形って人それぞれでいいのだろうか?

 ………疑問だ?


「そんなこと、思ってたのかブタ野郎!あれは私が自分で判断してやったことだよ!ブタが気にするなんておこがましんだよ!」

 

 エルシーさんはフンッと横に顔を背けれる。


「ブヒー、そうだったブヒー、それで何回怒られたことか……ブヒ!ブヒ!言ってろってな!」


「あー思い出したら腹が立ってきたわ!あのクソ親父!絶対後悔させてやるんだからー」


 エルシーさんが激怒している。だけどおっさんにはあたらない。いつもならムチでビシバシ叩くのに?


「あの〜それでその後どうなったんですか?」

 俺は恐る恐る聞いてみる。


「出て行ってやったわ!あんな場所、こっちから願い下げよ!」

 

「つまり親と喧嘩して駆け落ちをしたわけだ。それで俺とエルシーはこのままただ出て行くだけじゃダメだって思ってな。エルシーの親父をギャフンっと言わせるために国一番の魔導ショップを作ろうってなった訳だが、もちろんそれは簡単なことじゃない。なんとか地道に金を貯めてこの町に店を出すことが出来たがまだまだだ。商品を売るには良いものを作らないといけない。良い物を作るには良い素材と技術が必要だ。こう見えて俺は腕には自信がある。だが素材集めは専門外、どうしても売り物を買うことになるのだが、良い物ってのは高いしなかなか見つからない。だから見つけた時は是が非でも欲するものなのさ」

 

「ふ〜ん…それでこの魔石を……これってそんなにすごいのか?」


「坊主、バカ言っちゃいけね〜。その魔石は強い魔力を内包しているのは当たり前だが、何よりこいつに込められた力が珍しい。これは色からしても闇属性だろ」


「………はぁ〜そうなんですか?」

「はぁ〜!?坊主そんなことも知らないで、こんな凄い物を持ってきたのか?呆れてものも言えねぇ〜よ」


「アハハハ、あんまりそう言うこと知らないんですよ」

 俺は笑って誤魔化す。


「ついでだ教えてやる!良いか魔石ってのは、普通の物は魔力を内包しているだけだが、その中に属性を有しているものがある。基本的には鑑定用のルーペを使って見るんだか、バッと見でも大体は分かる。例えば火属性は赤、水属性は青って感じにだな、それで今回は紫だこれは闇属性に当たる。闇属性は滅多に出回らない希少価値の高い魔石でその利用価値は未知数、それだけにどんな魔導具が作れるか楽しみな魔石なんだよ!分かったか?」


「おっさんありがとう。分かりやすかったよ!それでその魔石を使えば他の店にはない。凄い魔導具が作れる訳だ!」


「そう言うことだ!だから頼む!これを俺に譲って

くれ!」

 おっさんは必死に頭を下げた。


「はい、良いですよ!」

 俺はあっさりと了承した。


「え!?良いのか坊主、俺はお前に借金している身

だぞ?」


「それで諦められるなら言わないで下さい。それでも欲しいから一生懸命頼んでいるのでしょ、それに俺が持ってても仕方がないですし、有効利用出来る人が持っていた方が良いですよ」


 俺はおっさんに魔石を渡す。

 その際一つだけ条件を出した。出来た魔導具を見せてほしいと、こっちの世界に来てから魔導具には興味があったんだよね〜楽しみ!


 おっさんは楽しみにしてろと、承諾してくれた。

 

 

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