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第70話  タクト天を仰ぐ!


 あれからジャクソン村の村人は全員石化が解けていることが確認出来た。

 石化の後遺症か?身体が上手く動かせない者は居たけど死人は出なかった。


「さっきはすまなかったね〜私としたことが動揺してしまいました。お恥ずかしい限りです」

 神父さまが照れている。日頃は冷静な方だけにある意味貴重な光景だ。


「アポロン、まだ石化の影響で身体がまともに動かない人がいる。ちょっと行って手伝って来なさい」


「仕方ない、俺もまだ身体がダルいがそれなりに鍛えてるからな行ってくる」


 アポロンはそのまま奥の部屋に入っていった。


「神父さま、ボクも動けます。何かお手伝いしたいのですが、何かありますか?」


「…………」

 神父さまはなぜか難しい顔をして黙っている。なんとなく気まずい空気の中、神父さまはやっと口を開いた。


「タクトくん、一つ聞きたいのですが、この薬はどこで手に入れたのですか?」


「あ!それですかイリスに渡されたんです。ここの村に届けてほしいって」


「なんと!?イリス様に!」

 神父さまは驚き、そして天に向かい手を仰いだ。


「神父さま!?違います!イリスはイリスでもイリス違いです!神様じゃないですから」


「いえ、タクトくんそれは違います。この薬にはとても神聖な気が込められています。私達教会の者は女神イリス様へと強い信仰心と長い修業をへて聖魔法と言う特別な魔法をイリス様から授かり行使することが出来ます。この薬にはそれと同じ力を感じます」


「う〜ん、それなら神父さまと同じように聖魔法の力を使える者が作っただけのことなんじゃないですか?」


「それは無理なのです。先程私は同じ力と申しました。ですがその力、濃度と言いますか、込められた魔力が別次元に強いのです。そうですね……例えるなら私の使う聖魔法の千倍の力を有しています。このようなもの神でもなければ作れません」


「……………」

 イマイチ神父さまが言われていることが理解出来ない。あの薬がそんなにすごいのか?俺では分からない。だけど神父さまが言っているのは間違いないのだろう。と言うことはイリスは神?それが事実だとするならば、今までのことを考えると天罰なのか神罰なのか知らんが間違いなく下ることだろう。



 ダメだ!ここでイリスが神なのか考えたところで分かりはしない。今度会った時にでも聞いてみるか、その時は俺の最期かもしれないがな!ハハハハ……


「神父さま、正直ボクにも良く分かりません。もしかしたらボクにこの薬を届けるように言ったのは女神様だったかもしれませんね。それではボクもアポロンを手伝って来ます」


 俺は頭を下げ、アポロンが居る奥の部屋に向かった。


 神父はその後ろ姿を見送り、感慨深く感じて

いた。


「ブラック、お前の息子は神に選ばれし者かもしれんぞ……もしもそうだったらお前はどうするんだ」


 神父は誰にも聞こえない小さな声で呟いた。



……………▽

 それから3日後、村人全員が回復、村は日常の姿を取り戻していた。


「どうかもうしばらくご滞在願えないでしょうか、お礼をさせて下さい」

 

「いえ、お構いなく、私達はその様なことのために来た訳では御座いません。お気になさらず」


「神父さま、しかしですな!」


 村長に止められてもうかれこれ十分以上経つ。

 お礼したい気持ちは分かるけど、こういった時、相手のことを考えてほしい。この人はきっと自己満のために言っているだけだ。


 なんだろうかムカムカしてきた。

 俺ってこの人に付き合う必要ないよね。

 目的は果たした訳だし、さっさと行くか!


 俺は手袋をはめると、神父さまと村長の間に障壁を張る。


「神父さま行きましょう」

 俺は神父さまの手を取りそのまま引っ張って歩く。


「あ〜神父さまお待ちを〜………あ!?あれ?なんでだ進めん!おい!ちょっと待ってくださ〜い」


 村長が叫んでいるが無視無視、さっさと帰ろう。


 俺達はジャクソン村を出た。


 帰りはゆっくりと戻ることになり、食事はカレーがまた食べたいとニキと先生はもちろんのこと神父さまやアポロンにまで言われたので、作ることにした。折角なのでこないだと違うルーに変えた。みんな懐かしいボ◯カレーだ!さ〜ご賞味あれ!


 あまりの美味しさに、この間作った量の倍作ったのだが、結局足りずもう1回作るハメになった。


 俺はみんな食べ過ぎ〜とみんなに言いながら、こっそりと一人でアイスを食べていたのだが、どこで嗅ぎつけたのかニキと先生に見つかり取られる。


 そんなこんなでやっと村に帰ることが出来た。

 俺は神父さま達がと別れると家に一直線に戻る。


「ふ〜数日とはいえ。家を離れると懐かしく感じる。ここはもう俺の実家だとしっかりと認識しているんだな」


 転生してからしばらく経つ、俺もとうとう拓哉ではなくタクトになって来たのかもしれない。


 

 俺は家の扉を開く。


「ただいま〜」


「お帰りなさい。思っていたよりは遅かったわね」


 俺は呆然と立ち尽くし、ゆっくりと扉を閉める。


「あら?どこに行くのかしら」


「え!?なんで!」

 

 扉を閉めて部屋を出たつもりが、後ろでニコニコと笑う少女が居た。確かに部屋を出たつもりだったのに!


「やぁ!イリス今戻ったよ!いきなり現れたからびっくりしたよ!」


「うふ、驚いた?私とあなたの縁が強くなったからこの家とも繋ぐことが出来たの、これでいつでも会いに来られるわよ!嬉しい?」


「わぁ、わぁ〜い……嬉しいな〜……」


「うふ、それは良かったわ!それで届け物の件、話を聞かせて貰えるかしら」


 イリスはニコリと笑う。

 それを見て俺に緊張が走る。

 

 俺はイリスにジャクソン村で起きていた状況から、その原因と対処した内容について簡単に説明した。


「そう、だいたい聞いていた通りのようね。ガーゴイルが絡んでいたの、しかもウルフガーゴイル、少しおかしいわ」


 イリスは少し面倒そうな顔をしていた。


「ま〜何してもご苦労だったわ。しっかりと私の期待に応えてくれたわね。感謝するわ」


 ニコリと笑い感謝するイリス。


 しかし俺は素直に喜べなかった。

 

 神父さまの話の通りなら、この少女は女神様と言うこと、こうして対話することなど本来恐れ多い。


 俺の顔は自然と引きつっていた。


「う〜ん……どうしたのさっきから変な顔をして、あまり喋らないし、元気がないわね。悩みがあるのなら相談には乗ってあげるわよ」


「う、うん、ありがとう。じゃ〜一つ聞きたいんだけど、この間貰った薬はどこで手に入れたのかな?」


 もしかしたらイリスが女神のイリス様に貰ったのかもしれない。


「あの薬?あれは私が作ったの、どこにも売ってないわよ。欲しいならあげるけど」



 ガーン……と言うことは……イリスはイリス様確定!

 天は我を許してくれるだろうか?………続く。


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