第68話 見たら死ぬ!?強敵ウルフガーゴイル
アポロンが石化されて、外にはニキもいる。
二人共大丈夫だろうか、二人のことは心配だけど、すぐには殺されないはず、だから今は外に居る。ガーゴイルをどう倒すかを考えるんだ。そもそもなんでアポロンは石化されたんだ?10秒以上見られたようには見えなかったけど。
「気がつくべきであったのじゃ、なぜガーゴイルが群れで動いていたのかを」
真っ暗で先生の顔は見えないけど落ち込んでいるようだ。それに何か分かったみたい。
「先生教えてください。何が起こったのですか?」
「恐らくガーゴイル達をまとめるリーダーがおるのじゃ、ガーゴイルの亜種に気が取られ過ぎて気がつくのに遅れたのじゃ」
「ガーゴイルのリーダー?別の敵が……先生そいつはやっぱり強いのですか?」
「もちろんじゃ、ガーゴイルの亜種と比べても格段に強い、なぜこのようなところに」
先生はやや腑に落ちない様子、でも今はこの危機をどう打開するかを考えないと。
「先生、まず聞きたいことがあります。アポロンは全身を石化されていました。まさか一瞬でも見られたらダメなんですか?」
「そうじゃな〜何の耐性も持っておらんのなら一瞬で殺られるやもしれん!其奴が我の見たて通りでウルフガーゴイルあればの〜」
「ウルフガーゴイル……どうすれば……」
「うむ!そうじゃの〜基本的には見られてはいかん、それとヤツの目を絶体に見るな!一瞬で石化される。恐らくアポロンは目を見て呪われた」
「えっと……それってどうやって戦うんすか?」
「それは……自分で考えるのじゃ!」
マジかよ!そんなの無理に決まってるじゃん。
他にも先生からウルフガーゴイルについて教えて貰った。見た目は狼に羽が生えた彫刻型の魔物で狼だけあって他のガーゴイルに比べて陸上での機動力が高い。また統率力が高いので群れで遭遇することが多いので必ず逃げなければならない。
今のところ全然良い話が聞こえないが、一つだけ良いことを聞いた。石化の効果を抑えるには魔力を身体に纏わせることである程度防げる。
さて…どうしたもんか魔力は取り敢えず纏わせるとして、ヘルメットをかぶり時間を60倍に伸ばし考えた。
…………▽
う〜ん……ま〜やるしかないか。
一応考えは纏まった。
「一応聞きますけど、今回も……」
「もちろん、手はかさんのじゃ、頑張るのじゃ〜」
真っ暗の中、明るく言われても……ま〜頑張りますよ。
「気合を入れますか!安全第一で戦闘開始!」
まずは地の精霊に力を借りて、周辺にいくつもの土壁を作り、同じく地の精霊の力を借りて地面の中を掘って移動、そのうちの一つの土壁に隠れる。
「いるな。見えないけど気配で分かる」
石で出来た魔物だけあって重いようだ。ドンドンっと足音が聞こえる。
「少し距離があるかな」
ゆっくりと壁から覗きこみ、こちらを向いていないことを確認する。
「今だ!『ビスショット』」
俺は次の土壁に走りながらビスを飛ばす。
これが決まればそれで終わり。
ビスはガーゴイルに向かい飛んでいく。
しかし、羽で僅かな振動を検知したのかあっさりと飛んで回避される。
やべー見つかった。
ガーゴイルはこちらに向かって突進して来た。
『地の精霊ヘルプ!』
俺は再び地面の中に落ち攻撃を回避すると他の土壁に移動した。
さっきは20メートル離れたところから攻撃した。
今度はもっと近づかないと攻撃が躱される。
………ビューン……プシャープシャー
「ヒィ〜」
土壁を貫いて何かが飛んで来た。
「ヒィーヒィーヒィ〜」
ヤバい!こちらに気がついてか、土壁を貫いて次々と攻撃が飛んでくる。土壁の状態からしてもかなりの貫通力がある攻撃だ。こんな物が当たったら大怪我間違いなし!
貫いてきた物体を見ると石羽を飛ばしていた。
羽ならまだまだ飛んでくるよな………
俺の顔を引きつったのが自分で分かった。
「こうなったら地の精霊教えてくれ、ヤツはどこに!」
地の精霊なら地面を歩くあいつを把握している。最初っからこうすれば良かった!
「………ふむふむ、ありがとう」
地の精霊にヤツの場所を教えてもらうと、ツールボックスからハンマーを取り出す。
「うりゃ!お前の場所はバレバレなんだよ!」
土壁に隠れながら地の精霊の情報を元に空間座標を設定、ハンマーを振り下ろす。
離れた位置でドーンっと大きな音を出し衝撃が伝わる。
どうだ!これで殺ったか!
期待と不安……両方の感覚が半々の状態で相手の出方を伺う。
バサバサ……羽音が聞こえる………上か!?
見上げた瞬間、そいつは俺の目の前に降り立った。
……ダメだ!……見たら終わる。
ヤツの顔を見ないように足元を見る。
だけどもう逃げられない。
俺は覚悟して……そいつの姿を見た。
ウルフガーゴイルの目がギラギラと赤く光り醜悪な笑顔で笑う!そして俺も……笑った。
「隙あり!」
ハンマーを横に振り、ウルフガーゴイルは空間圧縮で潰れて粉々になった。
力を失ったウルフガーゴイルの頭が足元に転がって
来た。
「こいつ、こんな顔してたのか、顔こえ〜」
狼でありながら人のようなはっきりとした醜悪な表情が分かる。一応ハンマーで叩き潰しておいた。
それにしても運が良かった。このメガネをかけていなかったら石化して終っていたな。
俺はメガネを外し、メガネに感謝した。
今回の敵は見られてはいけないうえに目を見るとゲームオーバーになるとても戦いにくい相手だった。前半は土壁で隠れつつ隙を見て攻撃をしていたが、まともに見ることが出来ないため攻撃が定まらず切れも悪かった。後半は地の精霊を頼り攻撃の精度を上げたがそれでもヤツの感知能力を上回りことが出来ず。俺は見つかり目の前にヤツが現れる。俺には逃げる選択肢もあったけど、間違いなく身体のどこかは石化されることになっただろう。だから俺は賭けに出た。逃げずに戦う選択をしたのだ。俺は敢えてヤツの顔を見る。そうすればヤツはきっと俺が石化したと思い油断するはず、でもこれはヤツの目に対抗する手段があって初めて出来ること、そして俺が取った方法はメガネを着けて過去の映像を見ること。これならヤツからは目を見ていると思わせ実際は別の物を見ていることになる。これが上手くいった。明らかにヤツの気が緩んだのが分かり簡単に攻撃を当て倒すことが出来た。
「作戦勝ちだけど、運要素が多すぎる戦いだった。もうこんなのはしたくないもんだ」
俺は安堵し腰を下ろすと先生が俺の肩に乗り、60点と厳しめな評価を頂き落ち込むことになる。そこにニキが何事もなく戻って来たので捕まえてナデナデモフモフして癒された。