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第66話 デスガーゴイルの脅威


「お前なんでそんな物を持ってるんだよ!その薬かなり希少な物だぞ!」

 アポロンは俺に詰め寄り、ガクガクと身体をゆらす。


 待て、落ち着け、こんな状態じゃ喋れん!

 そこに神父さまが間に入り止める。


「アポロン落ち着きなさい。気持ちは分かるが今はそれどころではない。タクトくんまた薬は残っているのか?」

 

「そうですね〜……神父さまと同じくらいの石化ならあと十数人はいけると思いますけど………」


「足りないな………」

「そうですね……どう見ても……」

 部屋の中にはたくさんの石化した住民が、さっき言った通り村人全員がなっていたのなら約300人分薬が必要になる。


「君、どうかそれを……私達にくれないだろうか!村長を助けてくれ!」

 片腕が石化した男が声をかけて来た。

 話によると村長の石化が胸の辺りまで進行している。このままだと命に関わる状態らしい。俺達はその人に連れられ。村長のいる部屋に向かう。


「村長どうして!?」

 部屋に入り村長を見たアポロンが驚き声をあげた。それに隣りにいる神父さまも動揺しているように見えた。


「急に…急に…石化する速度が上がって……このままだと」

 村長は石化は胸までと聞いていたのに、すでに首付近まで……速過ぎる!


「やはり……これは間違いありません」

「親父!そういえばさっき心当たりがあるって言ってたな。そいつは何なんだ?」

 

 神父さまは眉間にシワを寄せ口を開く。


「デスガーゴイルそいつの仕業の可能性がある」

「デスガーゴイル!?なんでそんなヤツがこんなところに!」

 アポロンが耳は疑うように驚いて、「あり得ない」と声を漏らした。


「あの〜デスガーゴイルって何ですか?」

 聞き覚えのない魔物の名前にどんな魔物かを神父さまに聞いた。


 神父さまの話によるとデスガーゴイルとはガーゴイルの亜種で、もちろん普通のガーゴイルに比べて遥かに強力な魔物、そもそもガーゴイルとは魔法により人工的に作られた悪魔や怪物をかたどった彫刻型の魔物、監視や門番として城や屋敷への侵入者を捕らえる役割を担っている。そして亜種、こいつらははぐれガーゴイルとは言われ長い年月を経て力と自我を持った魔物、その力は個体によって違うが観測されたほとんどは石化能力を有していた。


「恐ろしい魔物ですね……」


「私はこの魔物と過去に一度だけ対峙したことがありますが、その時は町一つが滅びかけました。たった一匹の魔物にです。この魔物は石化を伝染させる能力あり、その感染力は非常に高く、一度広がればそれは倍、倍と患者を増やし身動きが取れなくなります」


「あの〜すいません、村長を……」

 話に夢中になって村長のことを忘れていた。村長は早急に治さないとまずい状態だな。


 俺は村長に薬を少しずつかける。

 するとまたもや一瞬で石化を解いた。


「お!?身体が動く……あれだけ全く動かすことが出来なかったのに、身体が…身体が軽いぞ!」

 村長はすぐに起き上がり身体の動きを確認している。

 村長は確認をするとこちらを向き頭を下げた。


「この度は助けて頂きありがとうございます。どうかその薬で他の村人も助けては頂けないでしょうか?私が出来ることがあればどんなことでもします。どうか宜しくお願いします」


 う〜ん困ったことになったぞ。


「その〜薬の量から村人全員には全く足りません。申し訳ありません」


「そ……そんな〜……」

 村長はガクリと足を折り、倒れそうになったところを村人の男の人に支えられていた。


「それでは……この村は……村人は死んでしまうのかー!うわぁぁぁー」

 村長は現状を受け入れきれず、怒り雄叫びをあげながら俺に突進して来る。

 突然のことに反応できず、首を絞め上げられる。


 くっ……苦しい〜


「村長!あんた!それが命の恩人、子供にすることか、バカヤローがーー!」

 神父さまの拳が村長の顔面に直撃し村長はぶっ倒れる。


 村長は鼻血を出し目を回していた。

 村人が駆け寄り、村長を起こす。


「イッタタタ………ヒィー……すまない。私がどうか

していた。もう殴らないでくれ〜」

 両手を前に出し怯える村長、今ので完全に神父さまに恐怖を植え付けられたな。


「村長と言う立場は軽くはないぞ!良いか私は全力で協力してやるが、お前がしっかりせんではどうにもならん!さっきみたいな振る舞いをしたら叩きだすからな、二度とするな!」


「はい!分かりました!申し訳ありませんでしたー」

 深々と頭を下げる村長、それにならい隣の村人も頭を下げた。

 

 それから神父さまが3人で話がしたいと、村長に個別の部屋を借りて話をする。


「親父どうするつもりだ、俺達だけじゃ無理だぞ!」

 

「分かっている。さっきも言ったが私ではこの呪いを解くことは出来ない。解くにはやはり解呪師を連れて来るか、もしくはこの呪いを放っている魔物を討伐するしかない」


「やっぱそうなるか、魔物も討伐しても必ず解けるとは限らないしな〜、解呪師を連れてくるしかないか」


「そうだアポロン、間違っても魔物を討伐しようなどとは考えるな!もしもガーゴイルの亜種であれば接近すら危険だ。見られているだけで呪いを受ける。お前や私では相性が悪すぎる相手だぞ」


「分かってるさ、俺もそいつは本で知ってるからな戦闘は避けるさ」


「それを聞いて安心した。それなら分かるな!アポロン急ぎ戻りバロン様に報告して援軍を呼んで来てくれ」


「やっぱそうなるか、親父はどうするんだ?」


「私は今から石化の進行を抑える為に結界を張り聖域を形成する」


「そうか分かった。親父無理すんなよ……」


 …………なんか俺だけ蚊帳の外なんだけど、

 二人の親子の信頼関係は伝わった。



 神父さまが話を終えるとこちらに向き直す。


「タクトくん待たせたね。話は聞いていたと思うが、とても危険な状態だ、君はアポロンと一緒に戻りバロン様に伝えてほしい」


 神父さまはきっと俺の心配してくれているんだ、出来れば俺もここで手伝いをした方が良い気がするけど、ん〜……ここは従った方が良いのかな〜


「タクトくん、私の心配はしなくて良い。時間を稼ぐことなどなんてことはない。それに村人のほとんどが腕もしかは足の一部が石化しているだけだ協力し合えばなんとかなる」


「そうですか……分かりました!ここは神父さまにお任せします。出来るだけ早く助けを呼んできますね」


「助かるよタクトくん、頼んだよ」


「はい、……あ!そうだこの薬……渡しておきますね!もしもの時使って下さい」


 俺は神父さまにイリスから渡された薬を出す。


「ゴクッ……タクトくん……本当に良いのかい、この薬は……」

 

 なぜか神父さまは手を出した状態で受け取らない。どうしてだろう。遠慮しているのかな〜、でも今はそれどころじゃないし。


「えっと…良いですよ!元々この薬を使って村人の石化を治すように渡された物ですから」


「なんと!?この薬を……まさに神の思し召しか!」

 

 神父さまはぷるぷると手を震わせて薬を受け取る。

 落とさないか不安だ。


 俺とアポロンは薬を渡すと、すぐに村を出る。そこにはニキと先生も来てくれていた。


 急いでいた事もあり走って移動をしていると、

ニキが左を向き吠える。


「アポロン、先生、ニキが何か見つけたみたいだ、1回止まろう」


 バサバサと空から魔物が降りてきた。


 先生はそれを見て冷静に魔法を唱える。


『アースウォール』


 俺達の前に大地がせり上がり土壁が出来る。


「くそ!見つかった。やっぱりあいつか!」

 

 悔しがるアポロン。そしてガーゴイルはゆうゆうと木の枝に降り立った。


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