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第65話 ジャクソン村の石化事件


「何でこんなところに居られるのですか?

神父さま、アポロン……」


 雑木林から飛び出て来たのは神父さまとアポロン親子だった。


「おや?奇遇ですね、こんなところで会えるとは、これも運命でしょうか、もしかしたらイリス様のお導きかもしれませんね」

 

「何言ってるんだよ親父、そんな冗談を言ってる場合か!急ぐんだろ」


「ま〜待ちなさい。そろそろ休憩を入れても良いでしょう。それに何やら嗅いだことのない美味しそうな匂いがしました」


 クンクンっと周りの匂いを嗅ぐ神父さま、鍋はすでに空なのに良くわかったな。


「神父さまも食べますか、さっき食べたばかりなんですけど、先生達が食べ足りないと言うのでまた作ろうと思っていたのです」


「それは助かります。それでは遠慮なく頂きましょう」

「親父…それで良いのかよ!」

 すでに腰を落ろし食事をする体勢に入った神父さまに対してアポロンはイマイチ納得出来ていないが、渋々腰を下ろした。


「これは美味い!」

「何だこりゃ?こんなの初めてだ……うまい」


 神父さま達の口にもあったみたいだな。良かった。

そしてその後ろで一心不乱に食べる二人の食いしん坊

もいたことをお伝えしよう……


「あの〜神父さま達はどこかに行かれるのですか?」

 さっきまで随分と慌てていたようだけど何かあったのかな?


 神父さまは口いっぱいにカレーを頬張って喋れない。仕方なくアポロンが話をする。


「ま〜な、この先のジャクソン村で病人が結構出たみたいで、結構ヤバそうだから親父が呼ばれて来たわけよ」

 

「そうなんだ、それは大変だ……」

 イリスが言ってた件か……神父さまが来てくれたのは心強い。もしかしたら薬は要らなかったか?でも患者がどれだけいるか分からないし俺も一応このまま村には行った方が良いか。


 神父さまはカレーを食べ終わり水を飲んで一息つく。


「タクトくん、このカレーと言う物、とても美味しかったよ。ご馳走になってなんだが私達は先を急ぎます。またの機会に礼をさせて下さい」


「良いですよ神父さま、いつもお世話になっていますから、それよりも患者さんが待っているなら早く行って上げてください」


「あ〜ありがとうタクトくん、それでは行くかアポロン」


「やっと行くか親父」

「よく言うな〜アポロン、カレー三杯食べておいて」

「親父は五杯だけどな!」


 二人は言い合いをしながら走って行った。


 神父さま達ってまさかずっとあんな感じで走ってきたのか?

 そう言えば思い出したけど、神父さまって体育会系の人だったわ。アポロンも大変だな。


「さてと、俺達も明日起きたら早めにジャクソン村に向かうか」


 俺は飯の片付けをして早々に就寝した。


……………▽



 俺はいつもより早く起き、朝が弱い先生を地面から引き抜くとポッケに入れてジャクソン村へ向かう。

 ジャクソン村に向かう道は魔物が少なかったのでスムーズに進むことが出来たが、途中で先生とニキがお腹を空かしワーワー言い始めた。朝食を作る時間が惜しい俺としては簡単に済ませたい。どうしようと考えたすえタブレットでクッキーを購入し二人に渡すのだが、普通に渡しても面白くないな〜とふと思い。ポイッと前に投げると見事にニキが口でキャッチする。面白いかも!



「クッキーだ〜取ってこ〜い!」

 クッキーがビューっと勢いよく飛んでいく。さっきと違いかなり遠い、それを二人の食いしん坊が競り合いながら飛びつきクッキーを狙う。

 

 本当はここまでするつもりはなかったのだが、最初はほのぼのとフリスピーで遊ぶ犬のつもりでやったのに、そこに先生が乱入しニキのクッキーを食べてしまった。ニッシシと笑う先生、それに腹を立てたニキが勝負を申し込み、今に至る。


「平和的にやってほしんだけどな〜」

 俺は軽くぼやきながら投げる。

 

 そして、そうこうしている間にジャクソン村に到着〜。


「なんじゃ?もう着いたのか?」

「もっと遊びたかったのだ!」


 えー君たちいつの間にか楽しんでたの〜

 全然そんなふうに見えないんだけど!


 楽しかったらもう少し和やかにやってほしいものだ、ま〜ケンカするよりいっか。


 俺達は村に入るとあまり人の気配がしない。シーンッと静まりかえっている。村自体はそれ程広くはないのに、歩いている人をまだ一人も見ていない。これはどう考えても異常だ。これは想像より被害が出ている可能性がある。


「急ごう、なんか嫌な予感がする。少し先に他の建物に比べて大きな建物がある。まずはそこに行こう」


 俺は小走りでその建物に向かう。


 近くまで行くと建物から人の声が聴こえた。


「それ以上近づくな!アポロン離れるんだ!」

 鬼気迫る神父さまの声、中で何か大変なことが起きている。俺は慌てて扉を開き中に入ると、中にはたくさんの人が倒れ、石化によって動けなくなっている。イリスの言う通りだ!この村の人達は石化していた。


「タクトくん君も逃げなさい!ここは危ない」

 大声をあげる神父さまの足はすでに石化し動けなくなっていた。


「神父さま、アポロン、何があったんだ!」

 俺は警戒して近づかずに質問をする。


 神父さまは一度呼吸を整え冷静になり状況を説明してくれた。


「良いか落ち着いて聞いて欲しい。この村の住民は全員石化の呪いを受けている。しかも並の呪いではない。私の神聖魔法では解くことが出来ません。それどころか触れるとたちどころに呪いを受けてしまう。決して私や村人に触れてはいけません」


「でもよ!親父どうするんだよ!このままじゃ親父達は石になっちまうぞ!」

 アポロンはいつになく焦っていた。たぶん神父さまがあんなことになったのは初めてなんだろう。まずは落ち着かせないと。


「アポロン落ち着いて、まずは冷静になろう。助ける方法は必ずある」

 

 続いて神父さまも声をかける。


「そうだアポロン落ち着け、すぐにどうこうなることはない。かかった当初こそ石化の進行は速かったが、それ以降は石化が進んでいるようには見えない。村人も全身石化した者がいないことから、まだ時間の猶予はある」


「分かったよ!それでこの後どうするんだ!」

 アポロンは少しは冷静になれたのか、さっきまでの自分の行動を思い出し照れて横を向く。


「そうだな……この呪いには覚えがあります。もしもあいつなら私より呪い専門家か司教様より上の方を呼ぶしかあるまい。………アポロン…頼めるか」


「当たり前だ親父、そんなこと聞くんじゃね〜。すぐに呼んでくるから、それまで石像になるんじゃねいぞ!」

 

 神父さまとアポロンが感動的な親子愛を感じさせるシーンを行っている。どうしよう。薬を出すタイミングを見逃した。


「待ってろー行ってくるぜ!」


「わーちょっと待って!アポロンストップストーップ」

 俺は慌てて飛びつきアポロンを止める。


「おい!タクト、邪魔すんな!」

「う〜痛い、何も殴らなくても……」

 アポロンはまた自分を見失っていた。

 無理やり止めたら拳骨をされた。


「ま〜あと数分待ってよ〜効くか試すから」


 俺は懐からイリスに渡された薬を取り出すと神父さまの足に薬をかける。


「タクトくん、その薬は……」

 神父さまはそれを見て目を見開く。


 キラキラと光るその薬は神父さまの足にかかり一瞬にして元に戻した。


「親父!?足が足が治ったのか!?」

「あ〜アポロン、完全に治った!それどころか身体に力が漲るぞ!」

 神父さまは力こぶを作り元気一杯になっていることをアピールする。流石は肉体は神父!


「あ!?マジで効いたぞこの薬、イリススゲ〜な〜、こんな薬持ってるなんて……」


 俺は薬と神父さまの足を交互に見て驚いた。


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