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第55話 少女との再会


「タクトーーー無事でよかったーー」

「お母さん………さすがに…苦しいです……」

 アイリスが何者かに連れ去られて会場は大騒ぎする中、母さんは俺のことを町の中を走り回って探していたらしい。町に戻るとものすごい勢いで抱き着かれて、今はふくよかな胸に埋もれています。


 母さんの苦しい幸せからやっと解放され、新鮮な空気を吸っていると、俺を探して駆け回っていたもう一人に怒られた。


「なに勝手な行動してるのよ!助けに行くなら私に許可を取りなさいよバカ!」

 ノルンが激おこぷんぷん丸である。何とかお怒りを鎮めねば、なんて言えば良いんだろう。


「心配させてごめんね!ノルンこれからは気をつけるよ」

 結局考えても分からないから当たり障りないことを言ってしまった。


「なに言ってるのよ!私がタクトの心配なんてしてるわけないんだからね!……ふん!」

 なんとま〜在り来りなツンデレだこと、俺はついボソッと「本当にかわいいな〜」と言ってしまい、それが聞こえてしまって様で、顔を赤くしてノルンは走ってどこかに言ってしまった。


 ま〜機嫌は悪くはならないだろうと勝手に良い方向に考えていると、俺の肩に手を置きアポロンが声をかけてきた。


「まったくお前は、日頃は大人しいくせに変なところで大胆というか行動力があるというか、ま〜無事で良かったよ!タクト」


 アポロンにも心配をかけてしまったようだな。


「うん、なんとか助かった。ごめんね心配かけて」

「いいさ…俺のことは、それはお前の母さんとノルンに言ってやってくれ、抑えるのが大変だったんだからな」


 アポロンとその後ろに居る父さんがゲッソリとしていた。その姿を見て二人が何か仕出かしていないか一気に不安になる。


「不安になっているところ悪いが、もう一人お前のことを心配して暴走している方が居るからすぐに来てくれ!」


 俺はアポロンに引っ張られ連れて行かれる。

 着いたのはマルクト支部の教会、なんでこんなところに?


「ボーっとするな!早く来てくれ!」

 アポロンは大分焦っているようだけど、こんなところに俺の知り合いが居たっけか?


 教会の中に入ると、白を基調とした鎧の軍団が整列していた。どこかに戦争にでも行くつもりか?


 数百人は居るであろう圧巻の迫力の軍団を前に俺はカッコいいな〜と感じていると、奥の方から争う声が聞こえてきた。


「ヨハネ大司教落ち着いて下さい!ルナ団長の報告によれば、アイリス様は保護され、タクトくんはすでにこちらに向かっているそうです。さすがにこの兵を動かすのはまずいですから」


「セルギウス司祭…お話が出来ないですが、今は一刻の猶予もないのです!邪魔をしないで下さい!あなたがいくら言っても私は止まりません!退くのです!セルギウス」


 ヨハネ大司教に押され、よろけて後ろに下がるセルギウス司祭をアポロンが支える。


「父さん、何やってるんだい」

「はぁーここまで耳を貸さないヨハネ様は初めてだよもうどうしたものか」

 頭を抱える神父さま。

 これって俺のせいだよな〜

 早いところ俺が健在なのを見せないと!


「神父さまお待たせしました!今すぐにヨハネ様に顔を見せてきます!」


「おーー!タクトくん無事で良かった!すまないがヨハネ様を止めてくれ〜」


 俺は神父さまの横を駆け抜けながら、言葉を交わしそのままヨハネ様の下へと向かう。


「ヨハネさま〜ボクは生きてます!無事です!どこも怪我をしていません!」


「おーーしと……」

「ストップ!」

 ヨハネ様か使徒様と言いそうになったので、慌てて口を手でふさぐ。


 俺はヨハネ様だけに聞こえるように小声で話をする。


「ヨハネ様、その件は言わないで下さい」

「お〜そうでしたな。つい焦ってしまいまして、申し訳ない。それよりもお怪我は本当に!あれば私が即座に治療を行いますので!」

「あ〜本当に怪我してないんで、大丈夫ですよ!」

「さすがは使徒様、お一人で対処されたのですね。私…感服致しました」

 

 涙を流して喜ぶヨハネ様に俺はどうして良いか分からず、とにかく自分が無事なのでここに集まっている兵士をなんとかして欲しいとお願いし、すぐにヨハネ様は対応してくれた。


 はぁ〜精神的にしんど〜


 俺はあまりにも大騒ぎになりあたふたして疲れた。

 そんな姿を見ててくれた神父さまが、気を使ってくれて食事を準備するからそれまでに身体の汚れを落として来なさいと言われた。

 確かにかなりの距離を歩いたし、さっきの件で焦ったから、身体が汗でビチョビチョだよ。


 俺はシスターに案内され脱衣場に向かう。

 この世界では風呂と言う物は贅沢品、ほとんどは貴族でもなければ入ることは出来ない。だから基本的には井戸か川などの水を汲んでそれをかけて身体を拭いて終わり。元の世界を知る俺からすればあり得ないことだが、これがこの世界の常識。


 この教会には水魔法が使える者が何人かいるので交代制で大きめの風呂に水を貯めてそれを汲んで使っている。ちなみに入るのはNGである。


「こちらになります」

 シスターに案内されてついたのはこじんまりとした空間に服を入れる籠が並んでいるだけ、はぁ〜とついため息が出る。


 これだけ大きな教会だからちょっと期待したんだけど、想像を超えることはなかったか、ま〜こう言うところにはお金はかけられないか……


 それじゃ〜さっさと服を脱いで身体を洗おうと思ったのだが、一向にシスターが脱衣場から出て行かない。


「あの〜もうあとは大丈夫ですから仕事に戻って下さい」


「いえ、私のことはお気にせず、服を脱いで下さい。私が洗濯しますので」


 ん?……そっか、森の中を歩いたから汚れちゃてる。

 

「ありがとうございます。でも見られていると恥ずかしいので出ていて頂けませんか」


「先程も申しましたが、お気になさらず、見慣れておりますので」

 シスターはツーンと澄まし顔、見慣れてるってナニに?そんなこと堂々と言われてもな〜


「あの〜ボクが恥ずかしいてすが〜」


「フッ……そんなに恥ずかしがるような齢ではないかと」


 このシスター………笑いやがったな!

「どうせ大したことないくせに、見たってなんとも思わないわよ」とでも言いたいのかー!良いだろう!転生して生まれ変わった俺のムスコをとくと見よ!


 俺は服をカバっと脱ぎ、身体を隠さず堂々と歩き胸を張ってシスターに服を渡した。

 シスターは俺のムスコを見て「まぁ〜」と頬に手を添えて顔を赤くして服を受け取った。


 フッ……どうだ俺のムスコはなかなかのもんだろ。

 俺は一人勝利の感傷に浸りつつ扉を開き浴場に入る。


「へ?…………」

 俺はまさに目が点になる程に驚いていた。

 扉を開き入ると見覚えのある書斎に居た。そして真っ黒なゴスロリの少女が椅子に座り本を読んでいる。


 少女は本をパタンと閉じる。


「あなたって、結構無礼なのね。初めてよ!そんな姿で私に会いに来た人は………」


 少女の言葉に俺は未だに状況が飲み込めない。


「あら…なかなかね!」と言われ少女の視線を追い、ムスコとこんにちは〜……「いや〜ん」と俺は叫び。状況を把握することが出来た。


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