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第52話 白銀の騎士


「アンディー!!」

 俺は心配でつい壁に磔にされているアンディーに声をかけてしまった。そうすればもちろん謎の白銀の騎士に気がつかれる。


 白銀の騎士……一体何者なのか?

 その姿は白銀の鎧を着け、さらにフルフェイスの兜を着けているため、そいつの顔も表情も分からず感情を読み取れない。そしてここからが問題、恐らくだがここで倒れている組織のメンバーとアンディーを倒したのはこいつだと思う。それならば敵ではなく味方なのだと思いたかったのだが、こちらを見た瞬間鋭く突き刺さるような殺気に俺は襲われていた。


 白銀の騎士は突然発光し前が見えなくなる。


 眩しい!……そう思った数秒後、首の後ろにヒャッと冷たい気配を感じて咄嗟にしゃがむ、シュッと俺の上を鋭く剣が通り過ぎた。

 あの白銀の騎士がいつの間にか俺の真上に居る!?

 即座に側面に回避するが、白銀の騎士は地面に降り立つとそのまま俺を追撃する。


 ヤバい!アイリスを背負ったままで闘えるような相手じゃない!だが当然アイリスを置いていけない。俺は手袋の力で空間障壁を張って白銀の騎士の剣を受け止めた。

 

 さすがは空間障壁、あの鋭く重い斬撃を難なく防ぐことが出来た。………この後どうすれば……そう思った瞬間、凄まじい怒気が襲って来た。この騎士相当怒っているぞ!俺が一体何をやったって言うんだよー!



「ア…イ…リ…ス…を…返せ!!!」

 


 ヒィー!……怒気が殺気に変わり俺は怯える。


「ん〜……ルナお姉ちゃんなの?」

 目を擦りながら寝ぼけた状態のアイリスが言った言葉を俺は考える。お姉ちゃん……誰の?そんなの考えるまでもないわな〜



…………アイリスのお姉ちゃん!?



 それはつまり敵ではなく味方なのでは?

 俺達が闘う理由なんてない!


「アイリス待ってろ!お姉ちゃんが絶対に助ける!」

 白銀の騎士の闘気オーラが高まり、さらに強力な攻撃をしようとしている。


「待って待って!落ち着いてボクは敵じゃない!」

 俺は両手を上げ降参する。


「うるさい!この外道が!アイリスに手を出せば女神イリス様はもちろん許さないが、それ以上に姉である私が許さん!跡形もなく消し飛ばしてくれる」


「いやいやちょっと待て!話を聞け!」

 白銀の騎士改め、アイリスのお姉さんは闘気オーラを剣に集中し大技を出すつもりだ!こいつ全然話を聞いていないし怒りで我を忘れている。


 とにかく防御だ!

 俺が再び空間障壁を張ろうとしたその時、アイリスが俺の前に出て両手を広げて立ちはだかる。


「お姉ちゃん、メェーなの!タクトをイジメたらプンプンなの!お姉ちゃんのことキライになるなの〜!」

 

 アイリスの雄叫び、それが効いたのか?


「バコーン」と凄まじい勢いでコケた。地面に倒れたアイリスのお姉さん………大丈夫なのか?



「な〜アイリス、お姉さんは大丈夫なのか?」

「大丈夫なの!ルナお姉ちゃんは私の言うことをな〜んでも聞いてくれるなの」

「そっか、お姉さんはアイリスに弱いわけね」

「そうなの!お姉ちゃんすっごく強いけど、私には弱いなの!だからアイリスが一番強いなの〜」

「アハハ、アイリスはかわいいな」

 俺はアイリスの頭を撫でる。


「私のかわいい妹に手を出すな〜」

「うわぁーー」

 いつの間にかアイリスのお姉さんが立ち直っていた。


「ルナお姉ちゃん!」

「お〜アイリスよく生きていてくれた」

 お姉さんはアイリスを抱きしめる。

「ルナお姉ちゃん、鎧が硬くて痛いなの」

「すまないアイリス、無事を確認出来てホッとしてつい力が入り過ぎた」


 はぁーなんとか落ち着いたみたいだな。


「あの〜アイリスのお姉さん」

「アイリスに手を出したら殺す!」


 …………落ち着けシスコン。


「お姉ちゃん……」

 アイリスは両手を腰に当て仁王立ち。


「あーすまない、決して手を出したりはしないよ。お姉ちゃんはアイリスが嫌がることはしないからね〜」

「ほんとにほんとなの?」

「本当に本当だよ!」

「わーやったなの!」

「キャー可愛い!!」


 アイリスがバンザイして喜ぶ姿を見て、可愛い可愛いとテンションを上げている白銀の騎士。

 さっきまで殺気をアホほど放っていた人物とは到底思えない言動だ!



 あっちは姉妹水入らずってことで、俺はアンディーの様子を見に行った。


「お〜いアンディー生きてるか?」

「君、それが命がけで囮役を買って出た友にかける言葉かい」

「そんなことは言われてもな〜そんな嬉しそうな顔をしたM野郎にかける言葉が見つからないよ」

 

 心配して見に来たら光悦した表情で磔にされていた。これには呆れて物も言えないよ。


「楽しんでいるとこ悪いんだけど降りてくれる」

「タクトくん、私は磔にされているのだよ。助けて

はくれないのかい」

「どうせ自分でなんとか出来るんだろ。さっさと降りろ」

「なんだい、つれないな〜タクトくんは」

 そう言いながら固定されたナイフを手も使わず外していく。

「ほら〜本当はいつでも取れたんじゃないか」

「君に磔にされて、その楽しさを知ってしまったのさ、だから君のせいだよタクトくん」

「やめろ!ボクが目覚めさせたみたいじゃないか!お前は元からドMだ!」


 はぁードMエルフと喋ると疲れる………でも言うべきことはちゃんと言わないとな!


「アンディー助けてくれてありがとうな!本当に助かっよ!」

 俺は頭を下げてお礼を言った。


「フッ、そんな大したことじゃないさ、頭を上げてくれタクトくん」

 俺に優しく手を差し伸べるアンディー。


「私と君の仲じゃないか、助け合う。当たり前の事だよ」

 微笑みかけるアンディー。そして俺は少し手を上げ、手のひらを前に出す。


「あ!それは結構なんで、お礼だけ受け取って下さい」

 俺は冷たくあしらうのであった。


「おい!お前達話が聞きたい。こっちへ来い!」

 とても高圧的な態度で声をかけて来たのは、シスコンのお姉さん。俺とアンディーは仕方なく言われるがままそっちへ歩いて行った。


「何でしょうか?」

 さっきまでとは違い殺気は放っていないけど、相変わらず威圧をかけている。足がぷるぷるするからやめて欲しい。


「お前たちには、今回の件で弁明の許可を与える。すべてを正直に話せ!そうすれば罪を軽くしてやる」


 …………はぁー!?何言ってるんだこいつは!俺達はアイリスを助けたのに、なんで罪に問われないといけないんだ!


「ちょっと待って下さい。ボク達はアイリスを助けようと必死に動いたのになんで罪に問われないといけないんですか!」


「ふざけたことを吐かすな!アイリスに怖い思いをさせたのだ!重罪に決まっているだろう」


 ダメだこいつ、シスコンをこじらせて話にならない。


「そんなの無理に決まっているだろ」


「いや、私には出来る!お前達を裁くことがな!」

 

 シスコンは短剣を取り出し、こちらに柄の鍔に描かれた天秤の模様を見せる。


「はぁー、それが一体?」

 俺はシスコンの行動の意味が分からず首を傾げる。


「ま、まさか!?その若さで……君にその資格があるというのか!」

 アンディーが珍しく驚いていた。………何でだ?


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