第5話 どうやら破格の性能みたいです
「安全第一で戦闘開始だ!『ツールボックス』来い!」
俺はツールボックスからプラスドライバーを出す。
「オリャー行ってこーい」
プラスドライバーを地面に向かって投げた。
『大いなる手』
地面から出た手がプラスドライバーを持つ。
「よ〜しビスセット!行っけ〜」
プラスドライバーを持った手はビューンと伸び、
オーガの腹に突き刺す。
「止めれ!」
ドライバーを右に回してビスで止めた。
オーガは止まった。
でも四肢がまだ動かせる。暴れて危険なので、
俺は手と足にもビスを刺して完全固定する。
「は〜疲れた。もうクタクタだよ〜」
腰が抜けそうになり尻もちをついて一息つく。
「ま〜ま〜じゃな!まだまだ修行が必要じゃが」
「リーム先生は厳しいですね〜オーガですよ!
良くやったな〜って褒めても良いですからね」
「タクトはそんなに調子に乗らんぞ!」
「おっといけない!ボクはタクト、ボクはタクト」
なかなかタクトになれん。
こちらにパトリアさんが走ってきたのが見えて、
俺は立ち上がる。
「あーもう何してるのよ!逃げなさいって言ったのに!」
バフっと抱き締められた。身長差の関係で顔にとても
柔らかい感触が、あざ〜す!
「パトリアさん、怪我が酷いじゃないですか!」
パフパフ楽しんでいる場合ではなかった。パトリアさんの
腕が斬り裂かれて血が流れている。改めてパトリアさんを見ると多数の怪我をしている。致命傷になる傷はなさ
そうだけどかなり痛いはず、早くなんとかしないと。
「コンコン」
「ん?」
音が聞こえた方を向くと、ツールボックスが揺れていた。
俺は気になりツールボックスを開ける。
「へぇ?まさかこれで治せと……いくら何でも無理、
いや無いよりましだな。ありがとうよツールボックス」
ツールボックスには今度は絆創膏が入っていた。
こんなものでは大した処置は出来ないけど出血を少しは
抑えることが出来るかも知れない。
俺はパトリアさんの傷口に貼り付けていく。
「さてと、後はあいつをどうするかだな」
オーガの前まで来た俺は悩む。固定して危険はないが
出来れば殺しておきたい。
悩んでいると再び「コンコン」と音を出しツールボックス
が揺れる。
「今度はなんだ」
ツールボックスを開けると入っていたのはニッパ、
銅線や鉄線などの線をカットするための専用工具であり、
電気機械や通信機器などの配線や修理などを行うためには
欠かせない工具。
「配線を切る道具でどうしろと?」
悩んでいると頭の中に再び使い方が入って来る。
そして同時にステータス画面が表示された。
「意味は分からんが凄そうだな〜」
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名称∶ニッパー
分類∶工具
属性∶空間
攻撃力∶☓☓☓☓☓
性能∶空間断絶により万物を切断
リーチが短い
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「へー普通のニッパーにしか見えないんだけど」
俺は不意にニッパーを開くと、
「お!なにこれ格好良い」
ニッパーの先端から光の線が一メートルくらい伸びた。
俺は驚きつつもまたしても不意にニッパーを閉じる。
「ぶっへー」
大量の血が俺にかかり血まみれになる。なぜに?
目の前には肩口から真っ二つにされたオーガの死体が、
「え!?え!?なにが起こったんだ!」
俺は理由が分からず混乱してニッパーを動かす。
「ぶっへー」
また大量の血がかかる。気分は最悪だが今ので分かった。
このニッパーでオーガを切っている。オーガがいつの間にか
無惨な姿に、正直吐きそう。
どうやらこのニッパーは破格の性能を持っている。
「でも気をつけよ!切れ過ぎてこんなの普通のニッパーと
同じ様に使えないよ〜」
「タクトくん大丈夫?」
おっといつの間にかパトリアさんが俺の傍まで来ていた。
「大丈夫です。汚れて気分が悪いですけど、それより
パトリアさんこそあんまり動かないほうが」
「うん、それがね、全然痛くないのよ」
腕や足を動かして見せるパトリアさん、確かに全然
痛そうじゃないしスムーズに動かしている。
「まさか!?パトリアさん、それ剥がしても良いですか?」
俺はパトリアさんの了承を得て絆創膏を剥がすと、
「え!?ない!傷口が無くなってる」
俺はあまりの回復力に驚き、パトリアさんも傷口を
見て驚きの表情をしている。
どうやら俺のツールボックスは破格の性能がある
道具を出してくれるようだ。
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名称∶絆創膏
分類∶医療品
属性∶時空間
回復力∶一分あたり十秒再生 最大一日
性能∶貼った傷口を完治するまで時を戻す
範囲小(5センチ程度)
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