第49話 意外な申し出
「ウガッ………痛った〜」
闇の空間を抜けたと思ったらいきなり地面が見えた。俺は顔面から地面に落ちて激突、鼻が痛い。
「あ〜もうここはどこだよ!」
周りはを見ると石造りで作られた部屋で目の前には鉄格子が………え!?
ここは少し広めの牢屋の中だった。
「マジかよ!ボク捕まったの?」
周りにはアイリスは居ない。もしかしたら邪魔者が来たと判断され、移動先を牢獄の中にされたのかも。
「いやー!奇遇だね〜タクトくんこんなところで会えるなんて、君とは縁を感じるよ」
俺がせっかく見ないようにしていたのに、あっちから声をかけて来た。
「うるさいぞ!アンディーこっちは願い下げだ!だいたいなんでこんなところに居るんだよ!」
「いや〜しくじってしまってね!捕まってしまった」
アンディーは牢屋の中で両腕両足がそれぞれ捻れる方向に引っ張られ拷問を受けていた。
「はぁ〜遊んでないで、脱出する方法を考えてくれ」
「いやいや、タクトくん、どう見ても遊んでいるようには見えないはずだよ。それより早く助けて欲しいな〜」
「ん〜それよりさ〜」
「いや!?それよりって状態じゃないよ助けてー」
アンディーがとうとう騒ぎ出したので、誰か来ても困るので、ニッパーで鎖を切って助けてやった。
「いや〜助かったよ!タクトくん。相変わらず凄い切れ味をした武器を持っているね〜」
「そんなことはどうでも良い!アンディーが知っていることを全部話せ!」
「いや〜お腹すいたな〜」
「シャキン!……今喋らないと一生飯が食えないと思え!」
ニッパーをアンディーの首元で開く。
「アハハハ、分かったよ。もう少し我慢出来そうだから先に話をするよ!」
アンディーは両腕を上げで話をし始める。
話によるとこの場所はゴエティアのアジトで、アンディーはローラン様の頼みで潜入捜査を依頼されここに来ていた。予定では調査内容を持ち帰りアジトを襲撃するつもりだったのだがヘマをやらかして捕まってしまった。そこに突然影の中から飛び出して来たのが俺とのこと。なるほど状況は掴めた。間違いなくここにアイリスが連れてこられている。助けに行かないと!
「タクトくん、それは無茶だよ。ここには多くのゴエティアのメンバーが居るんだぜ!とてもじゃないが助けられない」
「やっぱりそうか、でも関係ない。ボクはアイリスを助けると決めている。止めるな!ボクは行く」
俺はニッパーで鉄格子を切断して牢屋の外に出る。
◆アンディーの視点
いや〜へまして捕まってしまった。しかし問題はないさ〜これはこれで恐怖のドキドキ感を感じられるかもしれない。そう思ったがゴエティアのメンバーは案外ありきたりなことしかしなかった。期待外れだ、そろそろ脱出しようかと思っていたら彼が突然飛び出て来た。本当に彼とは縁がありそうだと思わされた。
彼はローランの孫娘のアイリスを助けるために来たと言う。しかもたった一人でだ!無謀も良いところだ、私は確かにスリルを楽しむがそれなりにわきまえているつもりだ。いつだってなんとかする方法をいくつも持っている。しかし彼はどうだアイリスを助ける。それ以外何も考えていやしない。まったくここまで無謀だと呆れる。
でもたま〜に居るんだよ。こう言うほっとけないヤツ、もう少し自分のことも考えろよバカ、はぁ〜仕方がない俺が手を貸してやるか、ローランの孫娘を見殺しにしたらあいつに合わせる顔も無くなるしな。
「お〜い、ちょっと待てよ!俺は逃げるが手伝ってやるよ!」
タクトは振り返り呆れた顔をしていた。
◆タクトの視点
アンディーが訳の分からないことを言っている。逃げるけど手伝う?どっちだよ。
「アンディー、ボク急いでいるんだけど」
「ま〜話を聞け、絶対にお前のそしてアイリスを助けることに繋がる話だ。損はさせない」
「ん〜……分かった!」
俺はいつもと違うアンディーの目をしているそう思い、話を聞くことにした。
アンディーが考えた作戦はこうだ!
まずはアンディーがアジトの中で騒ぎを起こし逃げ回って敵の注意を引きつけ、その間にアイリスを救出し逃げる。案外シンプルな作戦だ。
「な〜アンディー、これには二つ問題があるぞ。まずは、アイリスが今どこにいるか分からない。これだとボクも手当たり次第に探さないといけなくなるから、時間もかかるし見つかりやすい。もう一つは、アンディーお前死ぬ気か?自分でさっき言ったよな〜アジトの中には敵が多く居るって、そんな中を逃げ回るのは容易なことじゃない。高確率で捕まって殺されるぞ」
俺は真面目にアンディーに問う。
「タクトくん、私を舐めてもらっては困るな〜言っておくが本気になればあんな奴らに捕まる訳はないさ、それとアイリスが今いる場所に心当たりがある」
「え!?本当かアンディー」
「あ〜本当だとも、アイリスは間違いなく生贄の間に連れて行かれる」
「生贄の間……まさかアイリスを!?」
俺は自分で想像し恐怖した。
「あ〜間違いないね!あいつらはアイリスを生贄にて上位の悪魔と契約するつもりだ!だから急がないいけない」
「くそ〜急がないと!」
牢屋を飛び出るとアンディーに腕を掴まれる。
「アンディー放してくれ!このままだとアイリスが!」
「分かっている!分かっているさ、でも焦るな!焦れば助けられる者も助けられなくなる」
「それは……そうだけど」
俺はぐっと我慢した。
「そうだ、それで良い、………いいか今から十分後に私が騒ぎを起こす。そうしたら急いで生贄の間に向え、場所は図面に書いておいた。これを持っていけ」
俺はアンディーから地図を受け取る。
「もう一つ言っておきたい。生贄の間には間違いなく悪魔憑きが居る。そいつは悪魔の力を行使出来る人間だ!だがその力はまさに化け物、かなりの強さを持っている。それでも行くんだな!」
「はぁ〜行くよ!アイリスがそこに居るなら」
「…………フッ、ま〜タクトなら余裕かもな、なんと言ってもドラゴンを倒したんだ。そんじょそこらの悪魔なんて目じゃないか、いいね〜ゾクゾクする」
アンディーは立ち上がり牢屋を出る。
「アンディー………ありがとうな!」
俺は心の底から礼を述べた。
「あ〜せっかくだ!楽しんでくるわ!タクトはしっかりとやるべきことをやって来い!」
アンディーの背中が頼もしく見えた。