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第431話 アトラスの求めた未来


「着いたぞ!ここだ」

「はぁ!?………ここって、前来たところじゃん」

 バラクに連れられて来たのは、以前エリック達を追って着いた屋敷だった。

「そういや〜そんなこともあったか、ま〜遠慮せず入らよ」

 バラクに言われ屋敷に入るが、お前の家じゃないだろ!と内心ツッコミを入れる。



「お待ちしておりました。タクト様」

 扉を開き入ると待ち構えていた?……出迎えてくれたのは以前からアトラスに仕えている悪魔、確かアロケルと言う名だったと思う。


「どうも、アトラスは居るよね」

「えぇもちろん、アトラスくんは今あなたと戦うための準備をされておられます。ご案内しますのでついて来て頂きますか」

 俺は頷き返事を返すとアロケルは先導して通路を進む。


 屋敷には下に向かう階段があり降りていく。進むにつれて周辺に高い魔力が大気に混じっていることに気がつく。こんな空間聖域とかダンジョンの最下層でしかない。


「驚きましたかな。アトラスくんはあなたと会った日から堕天使ネビエルの力を完全に取り込むために地下に籠もっておりました。この魔力はその残滓、この辺りだけでも上級魔法使いのMP(魔力量)に相当しますね」


 俺はイリスの修行で魔力とMP(魔力量)を大幅に上げることは出来たが、イリスが言うにはそれでもネビエルを取り込んだアトラスには遠く及ばないらしい。


「そろそろ着きますよ………さ〜こちらにどうぞ」

 階段を降りたところに扉があり、それをアロケルが開け腕を動かし部屋に入るように促す。



 部屋の中は体育館くらいの広さで、家具などのものはほとんど置いておらず、中央あたりに椅子が一つポツンっとあり、それにアトラスは座っていた。


 目を閉じ精神統一をしているのか?そうか俺との戦いに合わせて……アトラスの本気度が伝わってくる。


「アトラスくん、タクトくんが来られましたよ!」

 アロケルが声をかけると、ゆっくりとまぶたを開き、俺の方を見る。


「わぁぁぁーータクト久しぶり〜」

 俺に気づいたアトラスは勢いよく立ち上がり、ブンブンと元気よく手を振る。その反応に俺はガクッと膝が崩れた。


 おいおい、俺は今から戦う敵だぞ!そんな嬉ろうな反応をすんな!


「たく〜お前はな〜。俺の気合いを返せよ!」

「エヘェヘェ、ごめんねタクト。つい嬉しくなっちゃって、我慢出来なかったよ」

「はぁ〜やめろ。余計戦いづらくなる」

「うん!それもそうだね。でもボク本気だから、さっきまでネビエルと対話していたんだ。少しの間だけど力を貸してくれる。交渉は上手くいったから、これでボクは全力でキミと戦えるよ」

「アハハ、そうかい、それはボクにとって良い話しかはなんともだけど、負けた時にあとで言い訳されても困るからな。これで気兼ねなくお前をコテンパンにしてやれるよ」

「えへへ、頑張ったかいがあったよ!それじゃ〜そろそろ行こうか」

「あ?行くってどこに、ここでやるんじゃないのか」

「タクトなに言ってるのさ。こんなところで戦ったら屋敷がなくなっちゃうでしょ。特別に用意した場所があるからさ。行こう」


 アトラスは手からブラックホールの様なものを出し、その中へと入って行く。


「うーん……怖いんだけど」

 ないとは思うけど、まさかユニークスキル「スペースイーターでバクリとか不意打ちはしないだろうな。


「おーいはやくはやく〜」

 真っ暗な空間から無邪気な声が聴こえる。

 人の気も知れないで、コイツは………

 

 俺は言われるがままその中へと入って行く。

 別に信じて進んでいるだけではない。

 もしもの時は配管(空間転移)を使って逃げれば良い。


 進み続けると前から光が見えて来た。

 光の中に入ると一気に視界が開けた。


「ここは………」

「ボクが作った異空間だよ!」

 

 やっぱり、俺が作ったソウルフロンティアの元の空間によく似ている。荒れ果てた大地に灰色の空、あまり良い場所ではない。でもここなら周りには被害は出ないから気兼ねなくやれるか。


「アトラス、配慮してくれてありがとな。これで全力が出せる」


「うん!どういたしまして、ダクトなら気にするかな〜と思ってさ。どうする?もう始める?」


「あぁ、そうだな。でもその前に一つ聞きたいんだけど、この国をどうしたいんだ?」


「えっと、随分とザックリとした質問だね。前にも言ったけど、ボクは君を倒し王族と貴族を殺す。そして一度この国をまっさらにするのさ。それで出来ればバラク兄さんにこの国を先導してほしんだ!」


「はぁ!?そんなの聞いていないぞ!どう言うことだ」

 バラクは酷く驚いていた。どうも初めて聞かされたようだ。


「アトラスだいたいだな〜。俺にそんなこと出来るわけ無いだろが、俺はせいぜいお山の大将くらいしか出来ない、身の丈くらいは分かっているつもりだぞ」


「確かにバラク兄さんには少し似合わないかもね。でもまっさらになった国に必要なのは純粋に国を思う心、これがなければボクが求めている世界にはならない。だから初めのうちだけでもいいからさ。バラク兄さん頼むよ」


「無理なもんは無理だ!それなら自分でやれ、俺は手伝ってやるから」


「それはダメだよ。ボクは罪人なんだから、今までやってきたことに何の疑問も持たずにやって来たわけじゃないんだ。この国を新しいものに変える資格はボクにはない。ボクがやれるのは、もう汚れ仕事だけだよ。だからお願いだ!バラク兄さん」


 アトラスは真剣な顔でバラクに頼む。


「お前な〜そんな顔すんなよ。それにだな!俺がしたいのはお前を救うことなんだよ!その世界の先にお前の幸せはあるのかよ!」


 バラクの言葉にアトラスはニコリと笑顔に変わり、でも何も言わない。きっと話はこのまま平行線を辿るだろう。でもバラク良いところを聞いてくれた。


「アトラス、その後はどうするつもりだ?」


「まずは父さんを捜す。あの世を彷徨っているはずなんだ。優しい人だったからきっと未練で天国にも地獄にも行けてないと思う。ネビエルの力を取り込んだ今のボクならあの世に行くことも可能なんだ。絶対に見つけるよ」


「なるほど、天使を取り込んだ理由はそこにあったのか」


「うん!そう言うこと、ネビエルの力があれば父さんを生き返すことまでは無理でも、こちらの世界に呼び戻すことは出来るはず、まずは会って謝りたいな。助けられなくってごめんって……」


「ふ〜ん……なるほどなるほど、それでその後は?」

 

「その後か〜………まだあまり考えていなかったけど、出来れば誰も居ない遠くで父さんとのんびり過ごせれば良いな〜」

 アトラスは遠くを見て、その姿を思い浮かべしみじみと言った。


「………………ナイス!」

 俺は大声で言ったので、全員が俺に注目する。


「あ!ごめん、ちょっと嬉しくなっちゃって!良い考えだと思うよアトラス、よし!これで思い残すことはなくなった!勝負だ!アトラス」


 アトラスの求めた未来は、俺が目指す日常に近いものだろう。平穏な生活を目指し俺は戦う。

 

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