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第430話 拳と拳の誓い


「タクトよく眠れた?」

 目が覚めると覗き込むように見ているカンナが居た。


「あ〜よく眠れたよ。あんまり見んなよ。恥ずかしいだろ」

「もう。何言ってるんや!ウチ達はそんな仲やないやろ。むしろ一緒に寝なあかんやろ」

「いや、別にそこまでではない」

「え!?なんやそれ、ひど……」

 ショックを受けている相棒を横目に身体を起き上がらせ服を着替える。

 身体の調子も良く。気持ちの整理もしっかりと出来ている。不思議なくらい落ち着いているな〜。自分でも変な感じがする。俺は今から化け物みたいに強いヤツと戦うのにな。どうしちまったんだろう。


「なにをボケーっとしておる?いい匂いがするのじゃ」

 先生は寝坊助さんだが、食い意地をはっている。飯の匂いで目が覚めたか。


「ご飯!ご飯!なので!なのだ!わんわんわん!」

 ニキも先生と同じで、こちらはイヌなのにスキップしている。どんだけ朝飯を楽しみにしているんだよ。


 ご飯を食べに居間に行くと父さんが席に着いていた。母さんは忙しなく料理をテーブルに並べている。すごい量の料理だ。これは食いしん坊の三人のためである。


 いつも通りの日常、良い朝だ。

 お腹も膨れたし少ししたら行くか。

 

 ベットに軽く寝転がり、アトラスとどう戦うか考え纏まると、丁度良い時間になっていた。ベットから立ち上がると、先生が神妙な顔をしていた。


「ん!先生……どうされましたか?」

「一人で行くつもりか?」

「えぇま〜、一対一の勝負なんで」

「それは分かっておる。しかし我らが出向いても問題ないあるまい」

 先生は心配してくれているのか。

「ありがとう先生、でも相手への敬意ですかね。一人で行こうと思います」

「………そうか、分かった。それならもう何も言うまい。我の弟子として立派に戦ってくるのじゃ」

「はい!先生頑張って来ます」


 先生と約束し俺は一人アトラスの下へと向かう。

 会う約束をした場所は王都にある以前偶然アトラスと会ったマッスルスイーツ店にしてある。戦う気持ちを作って来たが、まったりスイーツを食べてからになるかもしれない。


 

「よぉ!遅いぞ。待ってる間に食べ過ぎちまったじゃねぇ〜かよ!」

「そんなこと知りませんよ。ボクは時間通り来ました。それよりなんであなたが居るんですか?」


 パフェを頬張っている男は知り合いだった。

 こちらを鋭く睨んでスイーツを楽しむ男は、悪魔に連れ去られたバラクだった。


「迎えだよ!迎え!お前を待っていたんだよ。アトラスと勝負するんだろ。流石にここで会うって〜のは良くないだろ。だから俺が来た」


「うん、確かにそれはそうだな」

 ここでアトラスと会っていたら萎える。それはきっとアイツもか。ま〜納得だな。



「それじゃ〜案内を頼む」

「おう、ちょっと待ってろ。これ食うからよ」

 そう言ってバラクはパフェを口にかっ込み。店を出た。


「バラク、どこに行くんだ?」

「ん!あ〜、家に帰る」

「そんなんじゃ、分かんないよ!」

「そんなの良いじゃ〜ねぇ〜か、ついて来れば、今から行くのはスカイ家の屋敷だ。スラム街にあるから結構歩くぞ、場所が場所だからチンピラにからまれるなよ。ま〜俺が居ればそれもないだろうがな。


 フッフッフ〜とエラそうに笑うバラク。



「それにしても無事だったんだな。捕まっていたはずだろ」

 なんとなく話は聞いているが、あまり実感がわいていなかった。下手したら嘘と言うのも考えていた。


「いや〜俺もあの時は焦ったぜ!完全に動きを封じられてしばらく簀巻きにされて転がされていたからな。アトラスを見た時はびっくりしたぜ」


「幼馴染なんだってな」


「ま〜そうだが少し違うな。俺の親父がスカイ家の兵隊長を務めていてよ。その頃からの付き合いだ。相手は貴族様だったが歳の差の離れた弟みたいなヤツだったよ。いつかは親父に代わって俺がアイツをスカイ家のみんなを守っていきたかったんだけどよ。…………不甲斐なくなってきたわ。な〜お前はなんでアトラスと戦うんだ?王族や貴族様に頼まれたのか?」


「………ん?元はどうだったけか?色々あり過ぎて忘れたよ。今は取り敢えずアイツをぶっ飛ばしてやりたいだけだ」

 俺はバラクの質問に淡々と答える。


「そうか、そうだよな。そう言う考えシンプルで俺は好きだぜ!ただその後のことは俺に任せてくれないか」


「バラク、あんたバカなことを言っている自覚はあるんだよな」

 俺はギロッとバラクを睨みつける。


「分かっているさ。アイツは許されないことをやった。きっと俺が思っている以上のことを、だかよ。俺は血がつながっていなかろうと弟のように思っているんだ!家族はどんなことをしようと守らなければならない。今度道を間違えるようなことがあれば殴ってでも止める。…………頼む!俺に任せてはもらえないだろうか」


 バラクは深々と頭を下げた。

 アトラスを助けたい。

 悪魔に取り憑かれ酷い状態に成り果てたアイツを……

 あまいヤツ、家族ってヤツだからね〜。


「無理じゃない。あんたよりアトラスの方が強いし」

「いや!それはそうなんだがよ。大丈夫だ!俺はもっと強くなって止める」

「そんな簡単には無理!はぁ〜バラクはアイツの心の支えになってやれ、俺が許す許さないは戦ってから考える。今はアトラスと戦うことに集中したい」

「あ〜すまない。我儘を言っちまった」

「そんなことはないさ。バラクの話を聞けて良かった。あんたの気持ちをボクがぶつけてやりますよ!」

 俺はグッと握り拳を前に出すとバラクは「おう」と返事をして俺の拳に拳を重ねた。


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