第43話 謎の少女
「えーっとごめん、間違えたみたい。お手洗いに行こうとしたんだけど…………」
でもおかしいな〜曲がった先にはこの扉しかなかったと思ったけど、まさか大司教様がトイレの位置を!……そんな訳ないか、長年ここに勤めている最も詳しい人が場所を間違えるわけがない。……つまりどう言うこと?
「あら、私は誰って聞いたのよ!教えてはくれないの?」
「あ!ごめん、ボクはタクトって言うんだ」
「そう、タクト………知らないわ」
「それはま〜初対面ですから」
少女は少し考えてから立ち上がり、こちらに向かって歩いて来る。
立ち上がって気がついたのだが、少女には白い羽が生えており服装が真っ黒なゴスロリファッションのためか際立って目立つ。少女自身もが神秘的な美しさを持っていたので神々しく見惚れてしまう。
「あなたはどうやってここに入って来たのかしら、私が許可を出した覚えはないの、場合によっては排除するんだけど」
排除?この子手厳しいな。確かに無断で入ったのは悪かったけど、そこまで言わなくても良いじゃない。
「分かったよ、出て行くから勘弁してくれ」
俺は胸の前に手を合わせて許してくれるようお願いする。
「待ちなさい!」
俺は部屋を出ようと振り返ると、手を掴まれ止められる。
何なんだこの子は、歳は俺よりも少し下くらいだと思うけど、やたらと偉そうだし、もしかしてどこぞの貴族様?それは面倒だな、適当に話をして帰らせてもらおう。
「何か御用ですか?」
「あなたに少し興味があるわ」
「あの〜お手洗いに行きたいんですけど……」
「あら?あなたは私よりオシッコかウ◯コをする方が大事なのかしら、変わっているわね」
「そんな堂々と女の子がウ◯コとか言わない方が良いのでは?」
「あら?なんでかしらただの生理現象でしょ、恥ずかしがることはないわ。まさか聖人と言われる清い人物はウ◯コをしないとでも思っているの?」
「もういい!取り敢えず君からはウ◯コの話は聞きたくない!」
なんでこんな話になったんだ〜
「そうね!私もこの話はもう良いわ。それより手を貸して」
少女は俺の手を取りしばらく触る。
俺の手を少し冷たくてスベスベの手が何度も触り、遊ばれている?
「そう言うこと、あなたのスキルがこの空間に干渉して扉を開いたのね。ふ〜う……興味ぶかいわ」
少女は何かに納得してスッキリした表情に変わる。
この子は本当に貴族様なのかな〜、気品を感じるんだけど言葉とか行動に違和感を感じる。これははっきり聞いた方が良いかな。
「あの〜………」
「あなた面白そうだから私の加護を与えたわ。今度は正面玄関から来なさい」
「はい?」
喋ろうとしたら、話を被せられてしまった。しかも言っている意味が分からん!
俺は改めて言い直そうとした時、お腹の具合が悪化、そろそろ限界が近い。
「あの〜やっぱりお手洗いの場所を聞いても良いかな」
腹に手を当て恐る恐る聞いてみる。
「お手洗い?………そうね、あなたが入って来た扉を出て後ろを向けばあると思うわよ」
「えーっと、なぞなぞですか?」
言っている意味がまったく分からん。
本当に分からないことだらけだ!
「良いから……騙されたと思ってやってみなさいな」
「あ……はい…」
納得がいかない!だけどここにトイレがないのは確実、ならこの部屋を出て探さないと見つからない。急げ〜」
俺は扉の方に歩き、出る直前で振り返る。
「いきなり部屋にお邪魔してごめんなさい!あとお手洗いの場所を教えてくれてありがとう。それじゃ〜」
俺は軽く手を振り、別れを告げた。
俺が外に出た瞬間、僅かに聞こえた。
「近いうちにまた会いましょう」と…………
…………………▽
「お〜トイレトイレ〜どこだ〜」
限界まで溜まった膀胱が決壊寸前、お股を締めてモジモジ動く。
そう言えばあの子変なことを言っていたな。確か扉を出て後ろを向く。
言われた通りやってみた。
…………え!?
おかしなこと、不思議な出来事、あり得ないこと。
俺の頭は混乱していた。後ろにはエメラルドブルーの扉はなく、トイレのマークが付いた扉があった。
一瞬頭が混乱して痛くなったが、すぐに下腹部の苦しみを思い出しでトイレに駆け込んだ。
ふ〜……スッキリ〜
間に合ったぜ!
俺はトイレの扉を見て頭を悩ます。
さっきの出来事は夢か幻だったのか、周りを見て触って確認したけど、扉は見つけられなかった。俺はトボトボとみんなのもとに戻る。
「遅い!私をどれだけ待たせるのよ!」
ノルンは仁王立ちでお怒りのようで困るな〜。アポロンに関しては問題ない。今もヨハネ様と超笑顔でイリス様の素晴らしさを語っている。
「あ、ごめんちょっと迷っちゃて!」
「ふ〜んそう言う嘘をつくのねタクトは、どうやらお仕置きが必要ね!」
「え!?なんで!嘘じゃないよ」
「だってさっきヨハネ様に聞いたもの。この通路、お手洗い以外繋がっていないって」
「……………ポン!なるほど」
俺は手を叩いて納得し、ノルンに蹴りを入れられた。そんな殺生な〜
「皆さん、せっかく来て頂いたので、ステータスの確認をされていきませんか」
「えーーーもしかしてヨハネ様にやって頂けるのですか!」
アポロンの嬉しそうな雄叫びが響く!
またシスターに怒られるぞ〜
「はい、あなた達を見させて貰おうかと、宜しいですか?」
「もちろんです!断る者などいるわけがない!」
鼻息荒くアポロンが答えた。
【ステータス確認】
自分の様々な能力値やスキル、または状態等を確認することが出来る。
ステータス確認を行えるのは教会の司祭以上でなければ出来ない為、一生のうちに何度も教会に訪れ確認するのがこの世界では普通のことなのである。
アポロンじゃないけど、俺達は司祭どころか大司教のヨハネ様に見てもらえるなんて本当に貴重なことで嬉しく思った。
「さ〜こちらへどうぞ、誰から見ますか?」
ヨハネ様の問にいち早く反応し手を上げた。アポロンが一番最初になり、次にノルン、そして最後は俺になったのだが、まさかこの後、あんな騒ぎになるとはこの時はまったく思っていなかった。
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