第424話 イリスに相談
「イリスそれって大丈夫なの?」
イリスの家に入り、そのまま書斎に行くとイリスが椅子に座って本を読んでいた。本が以前と違って魔導書から漫画に変わったのは違和感があるが共感してもらえた気がして嬉しい。
しかし今はそんなことはどうでもいい。部屋に入った瞬間に大きな肖像画が目に飛び込んできた。絵はリアルなヘカテー様、目が血走ってこわ!これって完全にさっきの挟んだヤツだよね。あとで怒られない。
「大丈夫よ。あ〜見えて本人は楽しんでいるから、私の魔法を受けるのが嬉しいそうよ」
ここにも生粋のMさんがいたか、ただ厳密に言うと少し違うかも、多分あれはクロスワードとかパズルを解くように魔法を解くのを楽しんでいるんだろうな。
「イリス実は相談があるんだけど聞いてくれる」
「別にいいわよ。それに使徒であるあなたが困った時に導くのが女神よ。むしろもっと相談に来なさいよ」
そう言われましても相手は女神様だし、簡単には頼れないよ。普通はね!
「それじゃ〜イリスまずは説明するから聞いてよ」
それから俺はアトラスとの王城でのこと、それとマッスルスイーツ店での決闘について説明した。
「まったく難儀なことね。王城での戦いは見ていたは、悲しいこと、人に巻き込まれ落ちてしまった」
ん?ほんの少しではあるけどイリスから陰りが見えた。もしかして………
「イリス、ネビエルを知っているの?」
「ええ…もちろんよ。ネビエルは元々は私の下に居たのだから」
「それってつまりネビエルはイリスの部下だったってこと、でもなんで地上に行かせたの?」
「ネビエルは能天使 (パワーズ)、悪魔から人々を守ることを役目としていたわ。人と関わることはどうしても多くなるの」
そうかカミラさんも言ってたっけ。
「ネビエルはカミラと違って人から天使になったわけではなく、純粋な天使として生まれた存在なの、あなたにとっては精霊に近いものと考えればいいわ。人よりもずっと純粋で無垢な子だったわ。人が好きだから助けないとよく言っていたわね」
イリスはやっぱり悲しんでいる。
でもおかしいそれなら……
「イリスはネビエルが堕天使になってしまったのを知っていたんだよな。なんで助けなかったんだ」
「ネビエルは自らの意思で地上に降りたの、そして人と契約を交わした。そうなれば私があの子にしてあげることはなにもないのよ」
「なんでさ、元はイリスの部下だったんだろ。助けてはやれなかったのか?」
「そうね。でも無理なのよ。私達女神は過度に地上の民に干渉を制限されているの。特にネビエルは契約によって私より契約者よりの存在となってしまった。もしもの時は助けられないことは事前にネビエルには伝えた。あの子は嬉しそうに行ってしまったわ」
「んーーー、そっか理由があるんだな。分かった」
納得は出来ない。でも理由はある。
そして疑問も、前からちょくちょく気にはなっているけど、女神であるイリスに制限をかけれる存在が、ものすごく気にはなるが今する話ではないか。
「ごめんイリス、イヤなことを聞いた」
「別にいいわ。それで本題はなに?」
イリスは俺の言葉に気分を害さなかったようだ。
正直女神であるイリスに大変失礼なことを言ってしまった。女神が違えば殺されていたかもしれない。
「アトラスに勝ちたい。どうすれば勝てるか教えてほしい」
「また随分とストレートに来たはね。少しは自分でも考えたんでしょうね」
「もちろん。一応ボクなりの策は考えているんだけど、いかんせんアトラスの強さがボクの想像を超えて来そうだからさ。その辺の話も聞きたくって」
「う〜ん、天使を取り込んだアトラスの力は格段に上がっているわ。そうね数値で言えばネビエルの魔力はあなたの五倍ほどかしら」
五倍!?……今の俺は以前宝魔の薬を飲んで飛躍的に魔力が上昇しているのに、人と天使では次元が違うと言うのも頷ける。
「それにアトラスは九王パイモンや他の強者を取り込んでいるから、きっとそれ以上ね!」
うぐっ……絶望して来た。
これは完璧に新しいスキルを使いこなさないと、相手にもならないかも………
「そんな顔しないの!あなたは私の使徒よ!必ず勝たせてあげるわ」
なんと心強い言葉。
今までのイリスにはない。熱さを感じる。
しかしなぜだろう。間違った選択をしたような気がする。
背中がゾクゾクする。
これはヘカテー様ともヘル姉とも違うけど。
間違いない。命に関わる危機が待っている。