第423話 決闘の約束
「決闘?それって戦うことと何か違いがあるのかな〜?」
「あるさ、戦うのはボク一人、ボクとお前の一対一で勝負しよう」
アトラスは難しい顔に変わり、うーんっと口元に手を当てて考えていた。
「タクト、君が強いのは分かっているよ。でもそれは無謀なんだよ。君は前の戦いを想定してボクと戦えると思っているんだろうけど、ボクはもうただのゴエティア九王と呼ばれる存在とは違う。君とボクでは存在の次元がもう違うんだよ。天使の力を取り込んだボクは一人で国だって相手に出来る力を手に入れた。ボクを止めたければ組織で多くの戦力を用意しなよ。じゃないと勝負にすらならないよ」
「へぇーそうなのか、それは考えていなかったわ。でも、それでもボクは一人で戦う。勝負を受けてもらおうか」
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俺は考えを曲げない!
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「はぁ〜なんで一人にこだわるかな〜。タクトならかなりの戦力を集めることが出来るんじゃないのか?そうすればボクに勝てる可能性はあるのに……」
「これは、ボクの我儘だからな。みんなを巻き込むわけにはいかない」
「なにそれ?意味がよく分からない」
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分からなくっていいさ。
これは俺のエゴ。
コイツはただ倒せば良いとは思えない。
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「よく分からなくって良いんだよ。ま〜楽しみにしていろよ。あ!っと言わせてやるからさ」
「タクトは変わっているね。良いよ。分かった。タクトの申し出を受けるよ。勝負だ!タクト。それで今からやるの?」
「いや、こちらからの申し出で悪いが時間をくれないか、色々と準備がしたい」
「それは構わないけど、もしかしたら今戦った方がチャンスかもよ」
ふふふっと笑うアトラス。
どういうこと?
「実はまだネビエルを定着、つまり力を取り込んで制御が出来ていない。時間をおくとボクは今よりもっと強くなるよ」
ニヤッと笑うアトラス。
俺は頭を軽くかきながら悩む。
困ったもんだ問題ごとまた増えた。
「それは困る………けどいいや。さっきも言ったが準備がしたい。それに俺はもっと強くなるからいいや」
「あはっ、本当に面白いや!タクトは、それじゃ〜いつにしようか?」
「あーそうだな。う〜ん……2週間後でどうだ。それくらいなら待ってくれるか?」
「うん!いいよ。それじゃ〜それまでは誰にも手を出さないでおくよ」
決闘を約束した。
俺が勝てばアトラスはこの国の貴族、王族に手を出すのを諦めてもらい。俺が負ければそれを止めない。と言ってもその時は俺は死んでいるだろうが、正直こんな決闘、アトラスからすれば受けるメリットはあまりないと思うからよく受けてくれたものだ。ま〜ただの気まぐれだろう。ただその分後悔はさせるつもりはないけど、それにしても2週間後か〜……自分で言っておいて間に合うかな〜。まだあんまり上手く使えないからな〜。でもあのスキルは次の戦いには必須、修行して上手く使わないとな。
俺は店を出るとソウルフロンティアにすぐ戻った。
今回はアトラスが言っていたが、天使と言う存在を取り込んだことで別次元の強くなったらしい。戦うのはもう避けられないけど、やはりその辺が気になる。それに色々と助言も聞きたいしな。
向かったのは教会、イリスは居るかな〜
教会に入ると多くの信者が居た。居たのはいい。問題は人数。多い!?中に全然入れないぞ!そうか、イリス教の住民が押し寄せて来たのか、ま〜自分達が崇めている神様が居ると知れば一度は会って見たいと思うのは当然か、でもこんな状態の場所にイリスが居るだろうか?……間違いなく嫌がる。つまりここには居ない。と!なると、家に戻っているか、出来れば行きたくはないけど仕方がない。俺は覚悟にを決めてイリスの家に向かう。
トントンっとドアをノックする。
あ〜緊張してきた……と言うか怖い。
ガチャと扉が開く……………もうですか?
扉を開いたのはヘカテー様。
なんでヘカテー様が、いや聞くまでもないか。
イリス大好きヘカテー様は予想通りここに居た。
『DEAD OR ALIVE』
この女神様と関わることはそれを意味する。
一挙手一投足にも注意を払わなければならない。
「あら?……あなたは……名前なんだったかしら」
忘れないでくださいよ。ヘカテー様、一応俺ってあなたの使徒なんですけど。
「タクトです。イリス…さまは居ますか?」
「居るわよ。でも何の用」
ヘカテー様の表情がキツくなっている。
俺の今の発言だけでもう不機嫌になってしまった。
何がダメなのか分からないが、言わないと始まらない。
「えーっとイリス様に助言を貰いたくて話がしたいのですけど、入れてもらってもいいですか?」
「ダメよ!」
……………ガクッ。はぁ〜ここからかよ!
まずは家に入るところからかよ!前途多難だ。
もうどうしたらいいか分からない。
考えてみたらこの家に入るのアトラス倒すより難しいんじゃないか。
いきなり諦めモードに入ってしまった俺は呆然としていると、突然ヘカテー様の左右に透明な板が現れ、バシンっとヘカテー様を挟み込む。
おっお〜……驚き過ぎて声が出ない。
ヘカテー様はぺったんこに潰れてクルクル回って家の中に消えた。
「タクト〜早く入ってらっしゃいな」
家の奥から声が聞こえた。
その声の主が誰かと分かり、ホッとして家の中へと入る。
「失礼しま〜す!」