第422話 アトラスの話③
「へぇー驚いちゃった。ソロモンについて聞かれるとは思わなかったよ」
アトラスは余程驚いたのか目が点になっている。
「そうか、話の流れからはズレているけど、ゴエティアの創始者について九王の一人に聞けるなんて、このタイミングを逃したらないんじゃないか?それならダメもとでも聞こうと思ったんだよ」
「うん。なるほどね!確かにこんなチャンスはないか、でも残念ながらボクからソロモンについて話せることはほどほどないよ」
「そっか、それは残念だ」
九王のアトラスが知らないとなると、本当はもう死んだのかもな。考えてみればかなり昔の人、寿命はとうに過ぎている。
「でも、一度だけ会ったことがあるよ」
「なにーー!?それいつ!どこで〜!」
突然の発言にびっくり!
テーブルに前のめりでアトラスに食ってかかる。
「わぁわぁわぁ!!お…落ち着いてよ!タクト、今話すからさ〜」
アワアワと少しわざとらしいくらいの動揺をして驚くアトラス、俺はその姿を見て冷静になり席に座り直す。
「オホン、なんだよ会ったことあるのか、それならさっき言ってくれよ。ボクはてっきり……」
「いや、会ったことはあるけど、情報って言えるようなことは何もないんだよ。あの人現れてすぐにいなくなっちゃったから」
「ふ〜ん、そうなんだ。それでどこで会ったんだ?」
ソロモンの手がかりになればいいけど。
正直会いたいと思っているわけではない。でも!
悲しみを生む死の商人を止めるには彼女の力が必要だ。
「どこでって言われると正直あまり良く覚えていなくって、ソロモンとはパイモンを取り込んだ直後に現れたんだ。さっきまで誰も居なかった場所に突然、この時のボクはパイモンを取り込んだ影響で頭がすごくボーっとして朦朧としていた。彼女はそんなのは関係ないみたいに話をし始めた。
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「はじめまして私の名はソロモン、新たな協力者の誕生は喜ばしい。ん?……おー君は少し変わっているね。そうか、そのようなことになったか、興味深い。あ〜気にしなくていい。パイモンの悪魔の力を君がどのように使おうと私は気にしない。でも一つだけお願いする。君が制限などせず自らの欲望のままにその力を使ってほしい。そうすれば君も私も願いを叶えることが出来るだろう。それでは頑張ってくれ!」
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「そんなこと言って、すぐに居なくなっちゃった。ソロモンがゴエティアの創設者って言うのも後で知っただけで組織としては全く動いてはいなかったよ。ただそれでも組織がなくならなかったのは、恐らくソロモンにとって必要とされたから、死の商人を使って定期的にテコ入れしていたみたいだし。ボクのところにも何度か顔を出していた。間違いないと思うよ」
ソロモンを探す手掛かりにはならなさそうだけど、ソロモンは今も存在して、そして何かをやっている。
それは彼女の願い、『人の蘇生』だろう。でもそう考えれば、アトラスはもしかしたら必然的に選ばれたのかもしれない。きっと彼の願いは父親と再会、『人の蘇生』だから………
「はぁ〜なんかドッと疲れた。考えることが多すぎる。頭を使い過ぎたわ」
俺が眉間に手を当てて顔を押さえていると、「店員さ〜んフルーツミックスマッスル二つ」と声が聞こえた。そうだな。アトラスありがとう俺の分まで、まずは糖分摂取だな。それからアトラスが頼んでくれたオススメのスイーツを食べたのだが、不覚にも涙が出そうなほど美味しかった。なんなだこの店は、甘いものは好きだが、ここまで驚かされたことはない。
「さっきはサンキュ〜助かったわ」
「サンキュ〜?なにそれ」
おっといけない。つい前の世界の言葉が出てしまった。気をつけてはいるつもりだけど、たま〜に行っちゃうんだよね。
「あ〜わるい。ありがとうって意味だ。ボクが住んでいる地域の言葉だ」
嘘です!
「へぇ〜サンキュ〜……サンキュ〜良い言葉だね〜」
「だろ!」
なんか知らんがアトラスはその言葉をえらく気に入って連呼していた。
「くぅ〜美味かった」
スイーツを完食。糖分摂取して頭をフル回転だぁ!
「アトラス、お前はこの後どうするつもりだ?」
さっきまでスイーツで癒されて緩んだ目つきを戻し、キリッと真剣な目でアトラスと向き合う。
「タクトそれはさっき言ったよ。ボクはこの国を一度滅ぼす。君はやっぱりボクを止めに来るかい」
「あ〜それな。最初に聞いた時、そうするつもりだった。だけど今は少し違う」
「なにそれ、もしかして仲間になってくれるの?それならもちろん大歓迎だよ。どうかな〜!」
期待のまなざし。少し心が痛むが仕方がない。
「アトラス流石にそれはない。ただ考えが変わった。今はお前を倒して終わりにする気分じゃない」
「タクト、もしかしてボクを説得するつもり、無駄だよ。バラク兄さんでも出来なかったんだ。タクトにボクは説得出来ない」
「あ〜そうだろうな。言葉だけでは説得出来ないことは良くある。それなら行動で示せってな!アトラス、ボクはお前に決闘を申し込む」