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第421話 アトラスの話②


「食った!?だと………意味が分からん!」

 バラクは頭を抱え考え込んだけど速攻で考えるのを諦める。


「ま〜ま〜説明するから待ってよ。バラク兄さん」

 アトラスはニッコリと笑い話の続きを始める。


「たぶん人を殺したことがキッカケになったんだと思う。その時、ボクは新しいスキルを手に入れたんだ。ユニークスキル『スペースイーター』を、その力はあらゆる物を取り込み自らの力として取り込む恐ろしく強い力だった。その力はボクの意思と関係なく発動、運良くボクに取り憑いていたパイモンを食べてくれた。パイモンも驚いただろうね。何の力もなかった子供に倒されるなんて」


「そうか、お前はパイモンの力を手に入れてそこまで強くなったんだな」

 バラクはアトラスから威圧される程の底しれない魔力を感じ冷や汗が出ていた。


「うん!ま〜ね。でもさっきもっと凄いものを取り込んだから、力を抑えているつもりなんだけど、どうにも抑えきれないみたい。でも大丈夫だから時間はかかるかもしれないけど、なんとかなると思う」

 

 アトラスは手を握り締め、自分の力を、そして身体の動きを確認するように動かす。


「分かった。それで、お前はこの後はどうするつもりなんだ?」


「う〜ん………まだその辺は考えてる途中なんだよね〜。さっき取り込んだネビエルはまだ定着していないから天界にも冥界にも行くのは難しそうだし、だからまずはこの国を滅ぼそうと思ってる」


「アトラスお前……」

 バラクは驚き眉間にシワを寄せ難しい顔でアトラスを睨む。


「ボルジアは殺したんだろ。そこまでする必要があるのかよ!もう……いいんじゃないか」


「ダメだよ!バラク兄さんは分かっていないんだよ。この国の貴族はボルジアの息がかかった者達が多く居る。ボルジアが居なくなったからと言って安心は出来ない。僕達だけのことじゃないんだよ。多くの者達を不幸にした輩だ。気にすることじゃない」


「はぁ〜………そうだとしても国を滅ぼすのはやり過ぎだ。この国の人々にまで手を出すつもりかー!」


「そんなつもりはないよ!ボクだって出来ればやりたくはないんだ。でもクズが居るんだ。どうしょうもないクズが」


 怒りをあらわにするアトラス。


「気持ちは分かる。俺だってアペトスの旦那や屋敷のみんなが殺されたんだ!はらわたが煮えくり返ってるよ。でもよ。アペトスの旦那が生きてたら、きっとお前を止める」


「………………………ダメ……やっぱりダメだ!」

 バラクの言葉に躊躇するアトラスだったが、それでもアトラスの意思は固かった。バラクの言葉を否定する。


「もうこの国は腐っているんだ。一度潰して再生させるべきなんだ。大丈夫だよ。殺るのは貴族だけで一般市民にはこれ以上手は出さない」


「アトラス……お前が言いたいことは分かるが、貴族の中にもなんだ…その悪い奴ばかりじゃないだろう」


「それは分かっている。だけど彼らもまた罪がないわけではない。彼らは何もしてこなかった。今の現状をよしとして放置したんだ。やれることは何かあったはずなのに、それにボクではどこまで放っておいていいかも分からないから、あとで後悔したくないから、殺すよ」


「チッ……このバカ野郎が、そんなことしたらお前はもっと闇に堕ちるだろうが」


 やるせない気持ちになりバラクは小声で呟く。

 親や親しい人達を殺され恨む気持には分かる。だがこれ以上罪を重ねればアトラスの心が完全に壊れてしまう。


「闇に堕ちる。そんなのあの日からずっとだよ。ボクはね!それでも良いと思っているんだ。だからバラク兄さんにも手伝って……」


「ざけんな!誰が手伝うかよ」

「え!?なんで……」

「そんなふざけた計画に乗るつもりはない」

「うーーもう!どうしてさ!損はさせないのに」

「そんなの関係あるか、理由は自分で考えろバカ」

「ムキッ〜〜〜〜………………」



………………………▽


◆タクトの視点


「てぇな感じで喧嘩して、イライラしたから甘いものを食べに来たんだよ」


「あらま〜そうなの、大変だったはな〜」

 最後でだいぶ緩んだ感じにはなってしまったが、色々と見えてはきた。こいつは難しいことになってきたぞ。気持ちは分かるけど、認めるわけにもいかない。


「ちょっとタクト!ちゃんと聞いてる〜!」

「わーわー言うな!むしろちゃんと聞いてるよ。だから色々考えているんだ。そうだな。まずは二つ聞きたいことがある。いいか?」

「うん!いいよ。ボクが分かることなら」


「お前の親父さんって、どんな人だ?」

「へぇ……なんで?」

 アトラスはキョトーンとした顔で固まる。


「なんでもいいだろ。ちょっと気になっただけだ。それで教えてくれるのか?教えてくれないのか?どっちだ」


「うん!いいよ!そうだな〜。父さんは身長が高くて細身でメガネをかけてるんだけど、頭が良くてカッコ良くって、それで……優しいんだ。困っている人がいると誰彼構わず手を差し伸べるんだ。僕達スカイ家はスラム街の中央に屋敷を建てているんどけど、その日のご飯もままならない人が多くて、食事を与えたり、職を紹介したり、みんな父さんに感謝していた。そうだ!前に父さんがお世話していた子供達の話なんだけどさ〜……………………」


 アトラスの話は尽きることがなかった。父さんの話をしている時の顔は、いつもと違って自然に笑っているように見える。話を聞いて良かった。どれだけアトラスが父親を好きなのかが分かった。


「でね〜………」

「アトラスありがとう。よく分かったよ」

 俺は話を切った。このままだと永遠に続いて話が進まなさそうだからな。まだ俺には聞きたいことがある。


「え〜まだ話したいのに〜」

「もう十分だだろ。話はまた聞くよ」

 アトラスは不満そうではあったけど、聞く体勢を取ってくれた。


「も〜う絶対だよ! それで!他に何がききたいのさ〜」


 正直半分はただの好奇心。もう半分はこのタイミングを逃せば聞くことは出来ないと思ったから、アトラスは会ったことがあるかは分からないけど、俺の勘が言っているんだ。



「ソロモンと会ったことはあるか?」


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