第414話 フリーズ〜
◆タクトの視点
「教皇様、そろそろ勘弁していただけませんか」
もうそろそろ限界だ。こんなことは言いたくないが捨てて帰りたい。俺はなぜか教皇を背負って運ぶことに、なぜにこうなる!?
「はぁ〜落ち込んでいる俺を優しく励ましてくれる人は居ないのか?一応俺って教皇で、イリス教で一番偉いのよ〜。なんで俺にみんな厳しいのよ」
教皇は嘆いていた。
そして俺も嘆いていた。
だけど同情は出来なかった。
さっさと立ち直れよ!教皇さんよ!(心の叫び)
「あ……えっと、教皇様あまり気にし過ぎない方が良いと思いますよ。皆さんは教皇様のことを信頼しているのは間違いないと思いますし、それに教皇様はなんと言いますか……とっつきやすくて優しいからついつい言っちゃうんですよ」
「なぁ〜とっつきやすいって教皇としてどうなのよ」
「アハッ……どうなんでしょうねぇ〜」
「おい!考えなしかよ!もう少し慰めてくれよ」
「イリス教会って悩みとか聞いてくれるところないんですか?懺悔室的な?」
「いや、あるけど俺がそこに行くのか」
「たぶん、担当する人メッチャ驚くでしょうね。自分所の最高権力者が来たら、端から見る分には面白いんですけど」
「なんだよ!タクトは俺をからかってるのか」
「アハハ、からかっていませんって、それよりまだやることはありますんで、そこで挽回して聖女様に褒めてもらいましょうよ」
「ムッ!……うむ!そうだな!」
教皇様はキリッとやる気を見せ、俺から降りてくれた。人はやるべきことと目標が決まると動き出す。ちなみに教皇様の場合は聖女様(母ちゃん)であればなんでもいける気がするけど。
やる気になってくれた教皇様を連れて王城に入ろうとしたら兵士に囲まれた。…………そりゃ~そうか。
さてどうするか、どんなに上手い説明をしたところで中には入れてくれないだろうし、それに逃がしてもくれなさそうだ。面倒だから倒すか。
「皆さん武器を引いてください」
声が聞こえる方を見て兵士達は即座に武装を解き、その女性の前を開けた。
「お待ちしておりましたわ!勇者様どうぞこちらへ」
その女性はラウラ王女だった。
そうか安全が確保されたと判断してこちらに来たのか、それにしても………
俺は周りを見渡す。
………特に兵士以外はいないように感じるけど、イグニスあたりがほっつき歩いているのかな?
「あ…あのどうされました勇者様、何か問題が御座いましたでしょうか?」
ん?……何かおかしい。ラウラ王女は明らかにこちらに向かって話をしている。俺の前に俺には見えない人物でもいるのか?そう思って見たものの、透明になれるスキル持ちなど、そうはいない。と言うことは、もしかして………
「ラウラ王女様、もしかして私に話されておられますか?」
俺は恐る恐る聞いてみる。
ラウラ王女は少し首を傾げ、「はい」と一言言って頷く。
そうか、今回の一件で俺の評価は勇者と呼ばれるほどに上がっていたのか。
「ラウラ王女、勇者に関しては丁重にお断りします」
「ええ!?なぜです!勇者なのですよ。これからあなた様には多くの富と名誉が……」
ラウラ王女はなぜ勇者を断るのか分からずは驚きながら、勇者になるとどのように良いのか説明し始めるが俺が止める。
「あぁ、そういうのいいんで、私は平穏で落ち着いた生活をしたいんです。勇者とかなったら面倒なので止めて頂きたいです」
ええっ!?……と更に驚きたじろぐラウラ王女、なんか申し訳なくなって来た。
「オホン、失礼致しました。少々取り乱してしまいましたわ。でももう大丈夫ですの。落ち着きましたの、それで改めて言わせて頂きますの!何がどう気に入らないのかサッパリ分からないですの!私にも分かるように言って欲しいですわ」
ラウラ王女はいつの間にか近づいて来て、すごい威圧で迫って来る。俺はタジタジになりながら徐々に下がる。
ラウラ王女に分かるように〜……考えても出て来ないぞ。多分勇者が良くないと思っている俺の考えを伝えないとダメなんだろうけど……う〜ん……
「どうされたのですか?答えてください」
更に圧が……誰か〜助けて〜。
「ラウラ、何をしているんだ」
「あら、お兄様どうしてこちらに?」
「ラウラが何をしに行ったのか気になって来たんだが……ん!タクトくん、それに教皇様!?そうかこちらに来て頂いたのか、ラウラ何をしているんだ。早く中に入ってもらいなさい」
「あ!はい、どうぞこちらに」
はぁ〜助かった。運良くエリック王子が来てくれてうやむやになった。俺と教皇様はラウラ王女について行くと、ラウラ王女がスーッと俺に近づき「さっきのお話また後で聞かせて下さいましね。
えーー!逃がしてくれないの〜しつこいぞ!この姫。
「はぁ〜やっぱりか、どうりでわざわざ出迎えに行っているわけだ」
エリック王子が先導してくれたのだが、振り返りこちらに、何かに納得したようで、でも顔はムスッとしているぞ。
「タクトくんすまないな。ラウラはさっきの君の戦いを見て感銘を受けたようで、君こそがこの国の勇者だとさっきから騒いでいるんだよ」
「あ〜そういうこと、だからボクのことを勇者なんて、おかしいと思ったんです」
なんだ〜ラウラ王女が言っているだけか。
「だが君を父様…この国王が勇者と認めるのは間違いないだろう」
……………………はぁ?なんだって?
俺はしばらくフリーズする。