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第413話 ウジウジするおっさん


「あ!そう言えば、カンナに謝らないといけないことがあったんだ」

 

 大聖堂の目の前に来たタイミングで俺はあることを思い出した。


「はぁ?なんや。まだウチのこと怒らすんか!」


「うっ……それは」

 痛いところを突かれる。さっきのカンナの顔が思い浮かんだが言うしかない。本当に今日は頭を下げてばっかりだ。


「はい…すいません実は………」

 俺はまともや正直に話してしまった。


「なんや!そないなことか」

 カンナは俺の不安を物ともせず、せかせかと出したのはプラスドライバーとドリル。……ってえーーー!?

何であるの〜!……あ!いや待て!まだ安心するのは早いぞ。


「カンナ、それはカンナのであってボクのではないんだけど」


「ちゃうでぇ!前にも説明したやろ。これはウチの力で具現化した道具や、そんでタクトの道具も、ウチがおる限り、いくら壊されても何度でも治るんや!」


「え!?そうなの、でも壊された直後出せなくなったけど」


「う〜ん、それはそのスキルの効果で一時的にタクトとウチのリンクか切れたんかもな。せやけどウチが傍に居れば直ぐに直ったと思うで」


 なに!?なんだと!ふざけんな!

 一人心の中でごちる。


「マジかよ!と言うことは」

 俺は右手にドリル、左手にプラスドライバーを出そうとすると。

「どわぁーー!でた〜!直ってるじゃん!」

 両腕の物を交互に見て驚く。


「でも一応言うとくわ!ウチはタクトのスキルや!ウチ自身がその攻撃を受けとったらスキルの消滅もあり得たかも知れへん。せやからタクトの判断は一見間違ってへん。でもや!ウチはタクトが危険な目に遭ってる時にのうのうと仕舞われて役に立てへんのは我慢出来へん!せやからタクト今度はしっかりとウチのこと呼ぶんやで!」


 カンナの言葉には強い思いを感じる。ここで俺が断るのはなんか違うよな。カンナ、俺も同じだ。お前に何かあったらと思うと我慢ならない。つまり気持ちは一緒だ。でもま〜またこんなことを言うとからかわれるからそれは言わないけどな。


「はぁ〜仕方ないな。そこまで言うならついて来て貰おうかな。言っておくが死ぬようなふざけた真似は許さないからな」


「そんなん分かっとるし、あとその言葉はタクトにそっくりそのまま返すわ!」

 

 

「うふふっ、相変わらず仲が宜しいようで羨ましいですわ」


 カンナと言い合いをしているとお淑やかな声が聞こえてきた。


 俺とカンナは大聖堂にある中央階段を上っており、一番最上段に居たのは聖女メリダ様であった。



「あ〜良かったです。話には聞いていましたけどご無事のようでなによりです」


「えぇ、皆様のおかげです。ブラックさんとミルキーさんには何度も命を救って頂きました。タクトくんのご両親はとてもお強いかったです。あとでお礼をしなくてはいけませんね」


「あ〜そんな気にしないでください。父さんも母さんもそう言うことあまり気にしないんで、そうだ!他の皆さんは大丈夫ですか?周りには見当たらないようですけど……」


 周りのを見ると誰もいなさそう。聖女様の護衛とか居なくていいのかな〜?


「他の皆様は王都の見廻りです。聖女結界が発動したにも関わらず、突然その力を失いまして、恐らく中級レベル以上の悪魔なら生きて気配を消していると思いまして、それの浄化に向かっています」


「そうなんですか、どうしようかな。色々なことがあって一度状況を整理するために集まろうって話になりまして……」

 父さんとバロンさんが待ってるし、誰か判断出来るお偉いさんに来てもらいたいんだけどな〜。う〜ん…


「あ〜忘れていました。ここに一人いじけている愚か者ならいますよ。これで良ければ持って行ってくださいな」



 ……………うっう〜ん。どこから突っ込もうか。



 俺の位置からだと聖女様を見上げているわけだが、聖女様は少し下がり、何かを持った。それを軽々と持ち上げたと思ったら、それは教皇様!?なんでここに!と言う驚きとお婆さんの聖女様が大柄の教皇様を持ち上げる姿がシュールでびっくり!


 そしてもう一つ気になるのが、なぜか教皇様は膝を抱え、どよ〜っと暗い空気を纏っていた。一体何があったんだ?



「いつまでいじけてるのかしら?」


「でもよ〜母ちゃん、俺今回役立たずどころか迷惑しか……」


「いじいじいじいじと、母さんはそんな子に育てた覚えはありません。よぉ!」


 聖女様は容赦なく教皇様を階段に叩きつけると「アアア」と言いながら転げ落ちる。


「聖女様、容赦ないッスね〜」

 聖女様は誰にでも優しく親切に対抗するが、自分の息子の教皇様にだけは厳しい。


「良いのですよ!あんな軟弱者は、失敗が何ですか!そんなことよりあなたがやるべきことがあるでしょうに


 聖女様はため息をついている。話によると大聖堂でゴエティア九王の一人バエルと戦ったのだが、その戦闘の際に教皇様は敵に惑わされ仲間同士で戦わされ、酷くショックを受けた。バエルを倒し聖杖結界を張ったが、多くの悪魔がまだ町にいる。教皇様は名誉挽回と飛び出して行ったが、まとめ役の教皇様が現場に出られては困ると聖女様はじめ聖騎士団によって取り押さえられ今に至る。


「母ちゃん……痛いですけど」

 教皇様は頭から血を流しながら四つん這いで階段を上がって来た。半分ホラーにしか見えん。


「こんなところでウジウジしているくらいなら、他に行きなさい。そういう訳でタクトくん、この子を連れてってください」


 ………俺は教皇様を見る。

 ………捨てられた子猫のような目

 ………デカいおっさんがそんな目するなよ!

 

 そんなツッコミは言えないけど、使えるかやや不安ではあるが偉い人ではある。ここは仕方なく教皇を連れて戻ることにした。


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