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第41話 田舎から都会に来ました


「え!?アイリスって領主様の娘さんなの!」


 俺達は朝食を食べながら談笑していた。

 そこにノルンとアポロンが来る。まず初めに驚いたのが、ノルンがアイリスに挨拶をしたのだ!いや、挨拶するのは当たり前なんだけどなんと言えば良いのか、ただの丁寧な挨拶とは少し違う。ノルンも貴族そう言った相手を扱う所作と言うものがある。

 いつもと違い気品を感じさせるノルンに俺は見惚れてしまっていた。そしてその直後、さらに驚かされる。アイリスはどこの貴族の娘さんかと思ってたら、なんと!?今回の主催者である領主様の娘さんだった。これにはただただ驚いた。


 ノルンは挨拶を終えると、俺の隣に来てひそひそと話をする。


「タクト、あんたどうやってアイリス様と知り会ったのよ!」

「ん?えーっと、朝起きたら部屋に居た」

「はぁー!?何の冗談よ!ふざけてるんじゃないわよ」

「うげぇ!」

 ノルンは俺の首に腕をかけキリキリと絞め上げる。その姿を笑って見ているアイリス、きっとじゃれて遊んでいると思っているのだろう。実際はわりと苦しい。


「ノルン止めるのじゃ、タクトは本当のことを言っておる。心配せんでも子供じゃ、何もせんわ」


「何を言ってるんですかロームさん、私は部屋に女の子を連れ込むのは非常識と言いたいだけです!」


「なので、アイリスが勝手に入ったのじゃ、タクトは寝ていただけでどうにもならんのじゃ」


「ん〜!」

 ムッとした顔で俺から離れ自分の席に座るノルン、ローム先生には一応遠慮しているみたい。

 

 いかんなノルンの機嫌を取らないと!


「ノルン今日はどこに行くの?ボク町に行くの初めてだから楽しみでなかなか寝付けなかったよ!ノルンは何度か来たことがあるんだよね!頼りにしているから今日は宜しく〜!」


「ふん………私がいないと本当にタクトはダメね!仕方ないわね!私が案内してあげる。楽しみにしてらっしゃ〜い」

 ノルンは人に頼られるのが大好きだからな〜機嫌が一気にV字回復、チョロいね!


「私も行きたいなの!」

 アイリスが手を上げとんでもない事を言い出す。


「アイリス様、それはダメなんじゃないのですか?」

 俺は出来るだけやんわりと質問する。

「タクト、様はいらないなの!アイリスって呼ぶなの!」


「え!?」

 アイリスから無茶なお願いを言われる。平民が貴族を呼び捨て………ダメでしょ。


 

「タクトくん構いませんよ。お嬢の言う通りにしてあげてください」

 ここで意外なことにタリアさんから呼び捨てのお願いをされた。むしろ俺が本当に言ったら斬られそうな気がするんですけど良いのだろうか?


「気にされるのは分かるが、ここは正式な場ではない。お嬢はそれを願っている。だからは問題はない」


 そうかな〜ダメな気がするけど、でもここで断るのもダメじゃね?つまりどっちもリスキー。


「タクト?」

 いつの間にかアイリスは俺の前に、求めるような上目遣いで、かわいいな〜も〜う………はぁーどうせどっちもダメならしたい方を選んだ方が良いか!


 俺はアイリスの頭を撫でながら、

「分かったよアイリス。これで良いかな」

「うんなの!」

 アイリスは満面の笑顔を見せてくれた。


 

…………………▽


 朝食を終えて俺達は町に繰り出した。


「アイリス残念だったな〜」

「仕方ないわよ。アイリス様は貴族なんだからそんなに気軽に外に出られないのよ」

「えーっとノルンも貴族……だよね?」

「私は良いの!ほら行くわよ!」

 

 アイリス様はやはり気軽には外には出られないようで、特に予定が入っていたので一緒にはこられなかった。

 今ここにいるのは、ノルン、ローム先生、ニキそしてアポロン、アポロンに関しては意外だった。いつも遊びには付き合ってくれないタイプなんだけど?今日は来てくれた。


 俺達は中央区の商店街を目指して歩く。しばらく歩くと着いたのだが、これはすごい!人、人、人、人だらけ、これだけの人はこちらの世界に来て初めて見た。なんだろうか、田舎から都会に出て来た。そんな気分だ。


「あんなところに行くのか面倒だ!」

 愚痴をこぼすアポロン、でも俺達が行くのは止めず着いて来る。


「何あれ綺麗、あれ食べ物かな?」

 ノルンが見ているのは、果物を蜜で固めたのも、いわゆるリンゴ飴みたいなものだ。確かにキラキラして綺麗だな〜、ノルンもこう言ったところは女の子、やっぱり可愛かったり綺麗な物が好き。


「おじさん!それ下さい!」

「おう!毎度あり」

 みんなで食べながら歩いていると、今度は食いしん坊1号が俺の耳を引っ張って催促する。


「先生、何が食べたいんです?」

「この肉串が食べたいのじゃ!」

「先生……妖精なんですから、なんかこ〜う野菜とか木の実が食べたくなるものじゃないんですか?」

「そんなのヒト族の勝手な妄想じゃ!妖精も肉が好きなのじゃ」

「はぁーそうですか、おじさん!それ下さい!」

「おう!毎度あり」

 俺は肉串を買った。

 ダイダロンの肉と書いてあったが一体何の肉なんだろう、取り敢えず食べたら美味しかったから良しとした。


 今度はグイグイと足を引っ張る食いしん坊2号。


「どうしたニキ何が食べたいんだ?」

 俺は小さな声で聞いてみる。

「あれが食べたいのだ!」

「え!?……うん!そうだなニキは犬じゃないもんな。おじさん!それください!」

「おう!毎度あり」

 俺は魚の丸焼きを買った。

 見た目は犬なので、魚を食べている姿に違和感を感じる。

「タクト、この魚表面はカリカリで中はしっとり。カリカリの部分は滴り落ちる脂に旨味を感じるのだ!」

 ニキは相変わらず食べ物の表現が豊かだ。


 こんな感じで食べ続ければ食いしん坊二人を除いて腹が一杯で動けなくなる。近く広場があったので、そこで小休止する。


「あー腹一杯だ!」

 俺は木を背に腰掛け腹をさする。


「………タクトお前少し変わったか?」

 ギクギク!?

 アポロンは俺の隣に座り疑うような目をして、何を思ってか変な質問をする。


「アポロン、なんでそんなこと言うの?」

「ん!見てて前までのお前とズレを感じるんだよ。別に悪い意味じゃない。ただ気になってな」

「ちなみにボクってどの辺が変わったのかな?」

「あぁ、そうだな〜我儘になったな」

「えー、それってダメなヤツ〜」

「フッ、冗談だ!前と違って自分を出すようになったんじゃないか、お前はどうも他人の事を気にし過ぎて遠慮し過ぎなんだよ!だから、ま〜俺としては良いと思うぜ!」


「ありがとう?」

「別に礼を言われることじゃない」

 アポロンはそう言って離れていく。一体何が言いたかったのか分からない。でも父さん、ノルン、続いてアポロンにまで気がつかれるなんて気をつけよう。


……………………

 

 そして俺達はノルンの案内で今日行きたかった目的地の大聖堂に到着した。


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