第407話 知識はあるのに知恵がない
白と黒の光を放ち大爆発、キョウカはともかく父さんと母さんはかなり近くにいた。もしかしたらスキルが……そう頭をよぎっていると、俺の傍に着地する足音が二人分し、視線をそちらに向ける。
「父さん!母さん!良かった。無事なんだね!」
父さんと母さんはだった。
二人は少し間を置き口を開いた。
「悪いなタクト、失敗した」
「タクちゃんごめんね!不甲斐ない母さんを許して」
二人の言葉と表情から読み取れる。父さんと母さんはネビエルのユニークスキルの効果を受けてしまったのだ。
あそこまで接近した状態で、あの爆発……躱せるわけがなかった。まさかあんな攻撃をしてくるとは、これじゃ〜ほとんど近づけないぞ!……一体どうすれば……………
「タクト…タクト…落ち着け、父さん達は死んだわけじゃないぞ」
「はぁ!?……ごめん父さん……」
いけない。また考えてぼーっとしてしまった。
くそ!油断するなっていつも言ってるのに何やってるんだ俺は!
父さんと母さんが酷い目に遭わされたことで俺は動揺していた。
「タクト、あの化け物には確かにスキルを消す力があるようだが、どうやら万能と言うわけではなさそうだ」
「え!?父さんそれはどう言う意味?」
父さんは手に持っている物を見せる。
………鎌だ!………ちっさい鎌。あれ?父さんの武器って……
「どうやら完全にスキルを失ったわけではなさそうだ。とは言え今感じる力は全力の半分と言ったところだろう。すまないがあまり力になれそうにない」
父さんは珍しく悔しそうにしている。
でも俺からすれば十分助けられた。
「父さん、母さんありがとう。あとはボクとキョウカに任せて」
ボクは出来る限り感謝を笑顔で応える。
「ごべんね~役ただずのお母さんでぇ〜」
母さんは今度はギャン泣きで抱き着いて来た。も~まったく、全然責めるつもりはないのに、もしかして嫌われると思っているのかな?まったく心配そうだな。
「母さん本当に早とちりだな!ボクはむしろ感謝しているんだよ!母さん達のおかげですごく助かったよ!本当だよ!母さん達のおかげであの化け物と戦う方法を思いついたんだから」
「え!?ホント、キャー流石タクちゃんあったま良い〜!」
母さんは泣き顔から一転満面の笑顔になった。本当にこの人は、と思いながら俺は安心した。
「タクトも気がついているようだけど、あの手数はタクト一人では難しい、キョウカさんと連携をしっかりと取りなさい」
「うん!分かった父さん、行って来る」
ここで父さん達に無理はさせられない。二人には待機してもらい、キョウカを呼ぶ。
すると!?何故か身体に浮遊感が、キョウカがチョンチョンと杖を動かしている。俺は一気にキョウカに引き寄せられた。
「うぇ!………キョウカ元気」
どんな魔法を使ったのか?俺は引き寄せられるとぶら下がる様な体勢でキョウカの前に……キョウカさんもう少し優しくしてほしいんどけど。
「今のところは元気よ!そんなことよりどうするのよ!あの化け物、言っておくけど、私絶対にスキルを失うのは嫌なんだからね!」
「アハハハハ、そうだねキョウカ」
キョウカは鬼気迫る勢いで言ってくる。
コワっと俺は引くが、キョウカにとって元の世界に戻り妹さんに会うためには大魔導師のスキルを失うことは決してあってはいけないこと。ゆえに失敗は許されない。
「悪いけど、私じゃあの結界は貫くのは難しいと思うわ。何か策はあるんでしょうね!」
えぇーー!?丸投げかい!
キョウカは多分頭は良い、それに基本的には冷静沈着で日頃から動揺するようなことはないタイプ。だけどこうして俺に作戦を考えろと言うあたりから、想像するに、恐らくキョウカは考えるのが苦手なタイプだ。なんて言ったらいいのか、知識はあるのに知恵がない。つまり応用力がない。ま〜今まで考える必要もないくらい優秀で困ったことがなかったんだろう。こう言う人ってどうにも変化に弱いんだよな〜。
「んんっ〜!……なんかその顔腹が立つわね!」
いかん表情が読み取られた。なんとかして誤魔化さねば。
「いやっ、あの化け物と戦う方法を考えていたんだ!そして思いついた!」
「へぇ〜!やるじゃない。それじゃ〜ちゃんと指示してよね」
「あっ!はい……頑張ります」
………なんか腑に落ちなかったが、誤魔化せた。
実のところキョウカに話す前に大体作戦は決めていたので、キョウカがすんなりと言うことを聞いてくれるのはむしろ好都合な話だった。
大丈夫、自分に自信を持て、検証はほぼ出来ているんだから、俺はキョウカに作戦を伝える。